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雌伏の時

もふもふ天国

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    ああ。
    初めてレイフレッドに会ったときも、魔族の国を訪れた時も、かなりうかれた自覚はあるけれど。
    それでも、この破壊力は格別だと思うんだ。
    「ケモミミ……もふもふ……」
    いやね、ルクスドで既に獣人さんは見かけているから初見じゃないんだけど、あそこは色んな種族が居て、それでも人間の国だから大半が人間という町だったから。
    前は勿論、右を向いても左を見ても後ろを振り返ってもケモミミもふもふ天国なファンシーな町は、不自然に笑み崩れる変な人にならぬよう気を引き締めるのが大変だった。
    特に郊外の村を通りかかったときに見かけた子供達。
    猫獣人の子供達がわちゃわちゃじゃれあってる光景は……その辺転がり回って床とかバンバン叩いてやりたくなるくらい、たまらなく可愛かった……。
    いつかの無念から執念で開発したカメラできっちりステキシーンをゲットしましたよ。
    ポラロイドタイプのカメラだしスマホじゃないからSNSに投稿……なんてのはないけどね。
    まだ売り出してない理由は、撮影機能以外のあれこれがまだ開発途中だから。
    少なくとも盗撮防止策は必須だと思う。
    ……まあ、そんなこの世の楽園のような道程を数日かけて辿り、本日目的地へと到着した訳ですが。
    また……。魔族の皇帝様の城とは対照的な城がそびえ立つ都だ。
    繊細で美しかった城――あちらは転移で行ったから内部しか見てないけど――と真逆の武骨ながら頑丈そうな城である。
    冒険者ギルドに声をかけると、すぐにギルマス室に通された。
    「へぇ、君らが噂の……ねぇ」
    にっこり笑うのは熊――純血の熊獣人。リアル森の熊さんなムキムキマッチョな体をほぼ黒に近い茶色の毛皮に隠し、その上からシャツと短パンを着ている。……可愛くは無いけど、マスコットの着ぐるみみたい。
    「まあ、ええ。陛下には既に連絡してある。明日中には返答があるだろ。ギルドで宿押さえてあるから悪いがそこで謁見の日まで待っててや」
    ――と紹介されたのは、温泉自慢の高級旅館でした……。
    うん、城こそゴツいけど、その城下町はアジアンテイストだったんだよね。
    和も中華も東南アジアもごった混ぜのなんちゃって感てんこ盛りだけど。
    ――ここだけの話。お風呂上がりのサービスのマッサージ。それそのものより猫獣人のおねーさんのぷにぷに肉球でもみもみされる感触が……もう……至福の一時でしたも!
    ――が。男性風呂の方のスタッフは哀れゴツイゴリラおじさんだった様で。
    「じ、地獄を見ました……」
    と、入浴前より疲れきった様子で涙目になっていたレイフレッド相手に自慢は出来ず。
    その二日後、登城命令を受けたときには残念な様なありがたいような複雑な気分になったよ……。
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