86 / 370
雌伏の時
とんでもないモノ貰いました。
しおりを挟む
うん。魔王だの皇帝様とか言われちゃうとね、私の中では黒髪長髪に雄山羊の角という某堕天使風のビジュアルを勝手にイメージしてたんですけどね……?
「面を上げよ」
バリトンなイケボ……しかもしっとり色っぽい声に命じられて顔を上げれば。
……は?
おいおいちょっと待て、何で息子のはずの領主皇子より若く見えるんだよ!
ってな美青年がそこに居た。
中性的なタイプじゃない。がっつり男の色気垂れ流しのエロいのが。
前世によく居たキモいエロ親父みたいなやらしさは何処にも見当たらない硬質な雰囲気を持ちながら、エロさを併せ持つ。
自分でも何言ってんのか分かんなくなりつつあるけど、確実に乙女の目の毒だ、あれは。
その気が全く無いのに勝手に身体がゾクゾクする。
――ダメだ、気を強く持たないとヤられる。
「陛下。私のパートナーをこのような公の場にて堕とすおつもりで我らを召喚したと仰るなら、私は契約に則り貴方に決闘を申し込まねばならなくなるのですが?」
「フッ、済まんな。ちと試してみたくなっての。……その年でこの術に呼応した上で耐えて見せるとは愉快な娘よ」
「――私を試した、と?」
「うむ。何とも興味深い話を奴から聞いたのでな。……この術は男女の欲情に目覚めたものにしか効かず、尚且つ双方一定以上の絆を持たぬものにはレジストされる、我ら一族の固有スキルの中でも初歩の誘惑術だが……。仮にも一族の王たる余の魅了に耐えきるとは畏れ入ったぞ?」
「……それは――どうも、と返すべきですかね?」
「ふふ、無論無礼を働いた詫びは用意してある。――加えて余の期待に応えた褒美もな」
その言葉は予め用意されていた台詞の様で、それを聞いた側仕え達が素早く動き、何かを王に差し出した。
「まずは正当な報酬を」
その言葉と共に、侍従がワゴンに乗せられた大量の皮袋を持って現れる。
「次いで、褒美を。アンリ=カーライルには、我が支配下にある全ての国土に於ける永住権を。レイフレッドには我が帝国の男爵位を、そなたの成人を待って授ける事と致す!」
「なっ――!」
「そして詫びだがの、これは獣帝との連名でな。……詳細は後程あちらの皇帝から聞いてくれ」
な、何かとんでもないモノ勝手にくれちゃってませんか、魔王様!
「して、この者の両親とやらはそちらで間違いないか?」
「……は、はい……」
「そうか。そちらが難しい立場にある事は承知しておる。故に、そちらを我が国で保護する案も出ておる。――どうか?」
「……! ――っ、し、失礼ながら、偉大なる皇帝陛下に比べれば矮小ながら、我らにも守るべき者がございます。故に、大変勿体なくも、そのご提案をお受けするわけには参りません……」
「その、そなたらが心配する者達もまとめて面倒を見よう」
「……た、大変恐れながら、それを是とせぬ者も居ります故」
「ふむ。助かる道を棄てても貫く信条とあらば、好きに殉じさせ、助かる者を確実に助けるのも守るべき責を負う者の義務ではないのか? それとも。そなたらこそがその信条に殉じる者なのか?」
「……」
「まあ、良い。だが、覚えておくと良いぞ。そなたの一の姫は余の気に入りじゃ。このまま独り占めしたいが、先日物言いがついての。獣帝もその娘が欲しいそうだ。……それだけの価値ある娘と心得た上で、扱いに気を付けるが良いぞ」
何かまだ企んでいるような悪い笑みを浮かべながら、「下がれ」と命じ、退出を促す皇帝陛下。
……。
「これは、例の報告も一波乱はありそうですね」
「面を上げよ」
バリトンなイケボ……しかもしっとり色っぽい声に命じられて顔を上げれば。
……は?
おいおいちょっと待て、何で息子のはずの領主皇子より若く見えるんだよ!
ってな美青年がそこに居た。
中性的なタイプじゃない。がっつり男の色気垂れ流しのエロいのが。
前世によく居たキモいエロ親父みたいなやらしさは何処にも見当たらない硬質な雰囲気を持ちながら、エロさを併せ持つ。
自分でも何言ってんのか分かんなくなりつつあるけど、確実に乙女の目の毒だ、あれは。
その気が全く無いのに勝手に身体がゾクゾクする。
――ダメだ、気を強く持たないとヤられる。
「陛下。私のパートナーをこのような公の場にて堕とすおつもりで我らを召喚したと仰るなら、私は契約に則り貴方に決闘を申し込まねばならなくなるのですが?」
「フッ、済まんな。ちと試してみたくなっての。……その年でこの術に呼応した上で耐えて見せるとは愉快な娘よ」
「――私を試した、と?」
「うむ。何とも興味深い話を奴から聞いたのでな。……この術は男女の欲情に目覚めたものにしか効かず、尚且つ双方一定以上の絆を持たぬものにはレジストされる、我ら一族の固有スキルの中でも初歩の誘惑術だが……。仮にも一族の王たる余の魅了に耐えきるとは畏れ入ったぞ?」
「……それは――どうも、と返すべきですかね?」
「ふふ、無論無礼を働いた詫びは用意してある。――加えて余の期待に応えた褒美もな」
その言葉は予め用意されていた台詞の様で、それを聞いた側仕え達が素早く動き、何かを王に差し出した。
「まずは正当な報酬を」
その言葉と共に、侍従がワゴンに乗せられた大量の皮袋を持って現れる。
「次いで、褒美を。アンリ=カーライルには、我が支配下にある全ての国土に於ける永住権を。レイフレッドには我が帝国の男爵位を、そなたの成人を待って授ける事と致す!」
「なっ――!」
「そして詫びだがの、これは獣帝との連名でな。……詳細は後程あちらの皇帝から聞いてくれ」
な、何かとんでもないモノ勝手にくれちゃってませんか、魔王様!
「して、この者の両親とやらはそちらで間違いないか?」
「……は、はい……」
「そうか。そちらが難しい立場にある事は承知しておる。故に、そちらを我が国で保護する案も出ておる。――どうか?」
「……! ――っ、し、失礼ながら、偉大なる皇帝陛下に比べれば矮小ながら、我らにも守るべき者がございます。故に、大変勿体なくも、そのご提案をお受けするわけには参りません……」
「その、そなたらが心配する者達もまとめて面倒を見よう」
「……た、大変恐れながら、それを是とせぬ者も居ります故」
「ふむ。助かる道を棄てても貫く信条とあらば、好きに殉じさせ、助かる者を確実に助けるのも守るべき責を負う者の義務ではないのか? それとも。そなたらこそがその信条に殉じる者なのか?」
「……」
「まあ、良い。だが、覚えておくと良いぞ。そなたの一の姫は余の気に入りじゃ。このまま独り占めしたいが、先日物言いがついての。獣帝もその娘が欲しいそうだ。……それだけの価値ある娘と心得た上で、扱いに気を付けるが良いぞ」
何かまだ企んでいるような悪い笑みを浮かべながら、「下がれ」と命じ、退出を促す皇帝陛下。
……。
「これは、例の報告も一波乱はありそうですね」
0
お気に入りに追加
1,080
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる