上 下
80 / 370
雌伏の時

掃討戦と言う名の蹂躙戦

しおりを挟む
    「あれか……」
    「……あれですね。話には聞いてましたが、実際目にすると……背筋が寒くなるようです」

    厄介な奴ではあるが、見た目はそんなキモくも怖くもない魔物なんだけど……あそこまで群れてると確かに……キモいとか怖いとか通り越して最早不気味の域に達している。

    だって岩山一つ丸々、所狭しとばかりに走竜がすし詰め状態なんだよ?
    あれがカワイイウサギや猫やヒヨコとかなら天国だけど、爬虫類顔の群れじゃ……よっぽどの爬虫類好きじゃなきゃ恐怖の光景だ。
    しかもあれは人を襲って喰う。
    ――戦う力のない一般的なら十分悪夢の光景。

    「んじゃ、とっとと蹴散らすわよ」

    ここは、その岩場の隣の岩山の頂。その岩の一つの影に隠れながら弓を構える――が。
    矢はつがえない。
    代わりに大幅に略した詠唱を唱える。
    「ポイズンレイン!」
    紫色に光る矢が弓に番われ、それを引いて狙いを定め、射る。
    狙うは件の岩山、その上空。
    放たれた矢は奴らの頭上で弾け、毒の雨を降らす。

    「続けて行くよ!    サンダーストーム!」
    毒を浴び、動きが鈍くなった上、しっとり濡れた身体に雷。うん、効果抜群!

    「そしてとどめのロックレイン!」
    頭上から岩の塊を無数に降らせてやれば。
     「んじゃ、最後に後片付けね。氷結!」
    山の表層のみカッチンコッチンに凍らせて。
    「ぜろ、アローボム!」
    無数に降らせた矢を、奴らの凍った身体ごと吹き飛ばす。
    「浄化の聖光!」
    散った邪気を浄化して。

     「ハイ、終了ー!」
    キレイさっぱり片付いた、ただの岩山となった隣の山。

    「お嬢様、私は……何をしにここへ来たんでしょう?」
    「そりゃ私の護衛よ。奴らとの戦闘中に邪魔が入らないよう見張りと、万が一敵が来たら排除する為の近接戦闘要員」
    「……戦闘、ですか。私にはあまりに一方的な蹂躙の図にしか見えませんでしたし、私はただの役立たずでしたよね?」
    「まさか。いざという時の備えは重要よ。確かに終わってみれば今回は何も来なかったけど、もしもがあって私一人なら、あっちの戦闘を中断して相手をしなきゃならなくなるわ。そしたら奴らの脚力だもの、あの大群であっという間に迫られたら一たまりもない。間違いなくレイフレッドが必要な作戦だったのよ」

    「それにしても、本当に一瞬で片付きましたね。移動の方が遥かに時間を喰うとか……」
    「帰りは空間伝いで一瞬だけどね。空間移動での瞬間移動はあくまで私が目視で認識できる範囲に限られてしまうから……」
     「お嬢様、それで既に十分規格外です」
    「……。とにかく、報告に帰るわよ!」

    こうして派手に魔法をぶっぱなして無双して、日頃のうっぷんを晴らして気分良く報告に向かった冒険者ギルドで。
    「あの……アンリさん、ギルマスがお呼びです」

    ……ん?
    冒険者ギルドでもギルマスのお呼びがかかる?
    ……何かしたっけかな?
    「はあ、また厄介事の予感がします」
    何か悟りでも開いたような笑顔のレイフレッド。
    「お嬢様と居ると退屈なんて言葉を言う暇がありませんね」
    ……うん、まだ何だか分かんないけど。ごめん、一応先に謝っとこう。      
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

南洋王国冒険綺譚・ジャスミンの島の物語

猫村まぬる
ファンタジー
海外出張からの帰りに事故に遭い、気づいた時にはどことも知れない南の島で幽閉されていた南洋海(ミナミ ヒロミ)は、年上の少年たち相手にも決してひるまない、誇り高き少女剣士と出会う。現代文明の及ばないこの島は、いったい何なのか。たった一人の肉親である妹・茉莉のいる日本へ帰るため、道筋の見えない冒険の旅が始まる。 (全32章です)

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...