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雌伏の時

掃討依頼

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    ふふふふふ。
    私は今、とっても機嫌が良い。
    こんなに楽しいのは久しぶりだ。
    「はあ、旅って……」
    レイフレッドは遠い目をしているけど。
    「レイフレッド、寝てて良いのよ、私と違って昼も働いていたんだから、疲れているでしょう?」
    「――私はお嬢様の護衛ですから」
    「護衛なら、フロスがする。小物ならリルフィが蹴飛ばせば済む」
    随分とお喋りが上手くなったフレスが屋根の上から顔を出す。
    「はははー。昼間働いて、屋敷で飯食って風呂入って、夜は馬車で異国の地を移動……。お屋敷に帰らずとも空間内にお屋敷があって、ベッドもトイレも風呂も台所も困らない。研究室や店にもいつでも移動可能。――お嬢様はいつお屋敷を出ても衣食住の心配はありませんね」
    「うふふ、いつか二人で旅する時もあなたに不便な思いはさせないわよ」
    「……不便どころか。空間内のお嬢様のお屋敷は魔道具だらけで、既にカーライルの屋敷の数倍住み心地が良いんですよ!    あの屋敷の魔道具を売り出すときは一言私にご相談下さいよ!?    また大騒動になること間違いなしですからね!」
    「まあ、お金はもう十分に貯まったからねぇ。でも……、王様クラスに売り込めるなら……。今回の反応次第では考えるかもしれない」
    「……はあ。仕方ありませんね、覚悟しておきますよ」
    そんな雑談を交わしながら進むのは、ルクスドから数日馬車を走らせた森の中。この森を抜けた先の岩場に湧いた走竜の大群の掃討だ。
    走竜とは亜竜でも下級の竜で、体躯はダチョウ程。
    ラノベとかで人を乗せてそうなフォルムをしてるけど、こいつらはダメだ。
    とにかく脚が強くて、岩場をものともせず駆け上がる。跳躍力にも優れ、すばしっこい。しかも肉食。人間は勿論、オークみたいな大物も喰う。
    一頭だけでもやっかいなのに、こいつらは群れる習性を持つ。
    テイムできれば便利だろうけど、まずテイムするのが無理だ。
    ――そんな魔物が大発生、大群になっている。
    厄介この上ない討伐依頼だけど。
    遠くから狙い定めて一発魔法ぶちかまして全滅させちゃえば良いよね?
    ってことで。
    私は時折弓で小物を倒しつつ、こうして現場近くまで馬車を進めているところだ。
    「――お嬢様、今日はそろそろこの辺でおしまいにしておかないと、朝が辛いですよ?」
    うん。この冒険は三食しっかり食堂でいただき、きっちり時間通りの就寝を約束する事で勝ち得たものだ。寝坊するわけにはいかない。
    「それじゃあまた明日、頑張りましょうね、レイフレッド」
    私は馬車に結界を施し、リルフィを車から外す。
    「リルフィ、フロス、馬車をよろしくね?」
    番を従魔に任せ、私はそっと空間経由で屋敷の寝室に戻り、ベッドに潜り込んだのだった。
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