68 / 370
帰還
拠点購入
しおりを挟む
吸血鬼がメインのこの国では、町のタイムスケジュールもまた夜型で動いている。
故に、他の町にはないイルミネーション的な装飾が特長的な町なのだと、この間この街に到着した時にはまだ日が出ていて見れていなかった町の装いに目を奪われつつ、私は王城で用意された馬車に乗り、案内人兼御者に商業ギルドへ向かうように告げ、レイフレッドと窓の外の眺めを楽しんでいた。
「この国の拠点もできたし、次はルクスドにも拠点が欲しいな」
けど、その為には先立つ物が必要不可欠な訳で。
これまで露店での稼ぎをちまちまこつこつ貯めてきたから、今回家――もとい小屋一つ買う頭金位はある。
……ついでに資金の足しになればと持ってきたこれの特許権が認められればローンを抱え込まずに済む。
でも、流石にルクスドに二つ目の拠点を買えるほどの収入見込みはなかったから。
「……あの馬車を売れば一般庶民の普遍的な家程度は余裕で買えるし、例の魔道具研究の為の場所だと言えば王家の持ち出しで下級貴族の別邸程度の屋敷は建つぞ?」
……流石にあの馬車そのものは売れないから、車体だけ同じ様に作って、内装と仕上げの塗装はご自由に、と投げたら、結構な報酬と一緒に追加注文が幾つも舞い込んだ。
……とても個人では裁ききれないから、先日の一件で仕事をクビになったあの使用人の彼――サムをこの拠点の代理人として雇う事にした。
各種ギルドが並ぶ庶民街の一等地に店舗兼事務所兼住宅の、四階建てビルを購入し、一階を店舗に、二階を事務所に、三階を従業員用住居に、四階を私達の拠点とし、空間と繋げた扉を設置した。
おかげでここで拠点を買うつもりだった分の資金が丸々残っている。
「帰る途中、ルクスドにも寄って帰ろうね」
今度こそランクの低い棟しか買えないだろうけど。
研究やらもの作りをしたいなら、やっぱりあそこ以上に適した町は無いからね。
「……そうですね。お嬢様ならいつか旦那様を越えて、世界に通じる大商会を作れそうです」
レイフレッドが笑う。
「それでお嬢様、それは一体何なんですか?」
今回特許登録の為に持ってきた物を指してレイフレッドが問う。
「ああ、これは……」
ごく簡単な魔道具で、既に技術的な特許は魔術ギルドで取得している。
「私達のあの馬車に取り付けた冷蔵庫。あれを手軽に再現できるポータブル冷蔵庫用の魔道具よ」
この魔道具を、適当な戸棚なりボックスに取り付ければあら簡単、簡易冷蔵庫が出来上がる。
「簡単よ、取り付けた場所の広さに沿った結界を張って、その内部だけを冷やす。それだけの魔道具だもの」
まあそれなりに便利な物だから売れると踏んでるけど、単価が安いから儲けは期待していない。
「……そうですかね? 少なくともルクスドに着くまでにはルクスド中階層の棟一つ買える程度の金額が入ってそうですけど」
レイフレッドが呆れたように言うけど……。
「だって、家庭用の置き型の冷蔵庫は既にあるんだよ?」
もしそれがなければ馬車なんか目じゃ無いほど儲けられると思うけど。
だから、私はレイフレッドの呆れを逆に笑い飛ばした。
特許の申請は問題なく済み、数日後には出発する予定で準備を進め。
私達はシリカさんと一時の別れを惜しみながら、吸血鬼の国を後にした。
故に、他の町にはないイルミネーション的な装飾が特長的な町なのだと、この間この街に到着した時にはまだ日が出ていて見れていなかった町の装いに目を奪われつつ、私は王城で用意された馬車に乗り、案内人兼御者に商業ギルドへ向かうように告げ、レイフレッドと窓の外の眺めを楽しんでいた。
「この国の拠点もできたし、次はルクスドにも拠点が欲しいな」
けど、その為には先立つ物が必要不可欠な訳で。
これまで露店での稼ぎをちまちまこつこつ貯めてきたから、今回家――もとい小屋一つ買う頭金位はある。
……ついでに資金の足しになればと持ってきたこれの特許権が認められればローンを抱え込まずに済む。
でも、流石にルクスドに二つ目の拠点を買えるほどの収入見込みはなかったから。
「……あの馬車を売れば一般庶民の普遍的な家程度は余裕で買えるし、例の魔道具研究の為の場所だと言えば王家の持ち出しで下級貴族の別邸程度の屋敷は建つぞ?」
……流石にあの馬車そのものは売れないから、車体だけ同じ様に作って、内装と仕上げの塗装はご自由に、と投げたら、結構な報酬と一緒に追加注文が幾つも舞い込んだ。
……とても個人では裁ききれないから、先日の一件で仕事をクビになったあの使用人の彼――サムをこの拠点の代理人として雇う事にした。
各種ギルドが並ぶ庶民街の一等地に店舗兼事務所兼住宅の、四階建てビルを購入し、一階を店舗に、二階を事務所に、三階を従業員用住居に、四階を私達の拠点とし、空間と繋げた扉を設置した。
おかげでここで拠点を買うつもりだった分の資金が丸々残っている。
「帰る途中、ルクスドにも寄って帰ろうね」
今度こそランクの低い棟しか買えないだろうけど。
研究やらもの作りをしたいなら、やっぱりあそこ以上に適した町は無いからね。
「……そうですね。お嬢様ならいつか旦那様を越えて、世界に通じる大商会を作れそうです」
レイフレッドが笑う。
「それでお嬢様、それは一体何なんですか?」
今回特許登録の為に持ってきた物を指してレイフレッドが問う。
「ああ、これは……」
ごく簡単な魔道具で、既に技術的な特許は魔術ギルドで取得している。
「私達のあの馬車に取り付けた冷蔵庫。あれを手軽に再現できるポータブル冷蔵庫用の魔道具よ」
この魔道具を、適当な戸棚なりボックスに取り付ければあら簡単、簡易冷蔵庫が出来上がる。
「簡単よ、取り付けた場所の広さに沿った結界を張って、その内部だけを冷やす。それだけの魔道具だもの」
まあそれなりに便利な物だから売れると踏んでるけど、単価が安いから儲けは期待していない。
「……そうですかね? 少なくともルクスドに着くまでにはルクスド中階層の棟一つ買える程度の金額が入ってそうですけど」
レイフレッドが呆れたように言うけど……。
「だって、家庭用の置き型の冷蔵庫は既にあるんだよ?」
もしそれがなければ馬車なんか目じゃ無いほど儲けられると思うけど。
だから、私はレイフレッドの呆れを逆に笑い飛ばした。
特許の申請は問題なく済み、数日後には出発する予定で準備を進め。
私達はシリカさんと一時の別れを惜しみながら、吸血鬼の国を後にした。
0
お気に入りに追加
1,084
あなたにおすすめの小説
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーのララクは、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
ララクは、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
お妃さま誕生物語
すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。
小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
南洋王国冒険綺譚・ジャスミンの島の物語
猫村まぬる
ファンタジー
海外出張からの帰りに事故に遭い、気づいた時にはどことも知れない南の島で幽閉されていた南洋海(ミナミ ヒロミ)は、年上の少年たち相手にも決してひるまない、誇り高き少女剣士と出会う。現代文明の及ばないこの島は、いったい何なのか。たった一人の肉親である妹・茉莉のいる日本へ帰るため、道筋の見えない冒険の旅が始まる。
(全32章です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる