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吸血鬼と一緒に。

お茶会のお誘い

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    日がな一日寝室でレイフレッドとお茶を楽しみながら読書やお喋りに時間を使い。
    実家の屋敷に居た時より豪勢で栄養価の高い食事を三食+二度のおやつと腹に詰め。
    そんな優雅な生活を一週間。
    ……本格的に不調だった初日と……まあその翌日まで位はありがたいと思っていたけど、リカバリーの早い子供の体で、これまでいつも忙しくも楽しい日常を過ごしていた私達はその生活に三日目で早くも飽きた。
    城の珍しい書物を読ませて貰えてなければ、私など早々に爆発してたと思う。
    ……シリカさんはそれを見越して手配してくれていたんだろうけど、ね。
    私達の様子を診た城の医師が「良し」と言うのに一週間かかり、それを見計らったタイミングで、王妃様からお茶会のお誘いがかかった。
    「……それ、私なんかが参加して良いものなんですか?」
    「まあ、普通なら王妃がもてなす茶会に出るのは高位貴族の奥方や、王子・王女の友人や婚約者候補、側近候補――つまりは貴族の子女子息なんだがな」
    その茶会の招待状を王妃から預かってきたシリカさんはごく当たり前の事として言う。
    「だが、今回のこれはごく私的な会だ。私も同席するし――おそらく王も喚ばれているだろうな」
    茶会とは本来貴族の女性の社交の場だ。そこに男性が混じるのは相応の目的あっての事。
    それを私的な会で行う。
    「……まあ、正式な謝罪の場を設ける前の前フリだろうね。何しろお前は我が国としては何としてでも取り込みたい人材なのに、自分達の失態でマイナスイメージを与えてしまったんだから。いきなり公式の場でまた的外れな事をしてこれ以上嫌われるのを避けたいんだろう」
   つまりはそういう事だと。
   「そこで通行手形が欲しいと言えば、公の場でお互いに気まずい思いをせずに済む、と」
    「まあ、そうだが。それよりもこれ以上に良い機会はあるまい。お前ら、その場でパートナー契約を済ませてしまえ」
    「え……?」
    「本来なら、男児の声変わりや女児の初潮みたいな、自然な成長過程の一種なんだよ、吸血鬼にとってのその契約は。……ただ、その成果の結果は他のそれより顕著に命や将来に関係してくるから、通過儀礼として様々な後付けの手順やなんかが存在しているんだよ」
    契約するだけならいつでも、レイフレッドのスキル一つで終わる事。
    ただ、一般的にはそれを見届け契約完了を証明する立会人が必要だったり、その際のお作法があったりするらしい。
    お作法なんかにこだわるのは貴族が大半だからまだしも、立会人は家族親戚総出で務め、無事に済んだらそのまま祝いの宴が催されるというのは身分問わず、財力次第で宴の規模は変わっても、根本は違う事なく行われるんだそうで。
   「それを疎かにするとな、まあパートナーを横から掠め取られたり、何かと見下される風潮があるのさ」
    けど、レイフレッドは孤児だ。
    「無論、我が国にもそういった子供も居るが、その場合も立会人は子供を世話した大人が行い、宴もささやかながら国から補助金を出している」
    けど、レイフレッドにはそんな人も居ない。
    今から探すにも、赤の他人の立会人になろうという物好きはそう居ないだろうし、居たとしても――
    「その者の社会的地位や信頼性がそのままお前らの契約の信憑性に響いてくる」  
    だから。
    「王と王妃が立会人なら誰もケチなどつけられまい」
    ……そう言う事ならシリカさんの提案に否はない。
    「分かりました。――お願いします」
    私はシリカさんに頭を下げ、改めて覚悟を決めた。
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