39 / 370
職人街で弟子入りします。
錬金術に挑戦します。
しおりを挟む
各ギルドに登録して三ヶ月が経った。
先月は染め物工房、今月からは革製品の加工・製作工房。
そして。
「ふふ、ふふふふふ」
「……お嬢様」
「ふふふふふ、良いじゃない。やぁっと手に入れたんだから!」
決して広いとは言えないダイニングにドンと鎮座しているのは鍋。ティーポットの様なずんぐりした形の巨大鍋。
ギルド併設の書庫でひたすら本を読み続けて三ヶ月。
錬金術の概念からレシピまで、ただ文字情報を覚えるだけの日々も今日で終わり。
勿論知識はまだまだ足りないから書庫通いは止めないけど、ようやく手に入れたそれをレイフレッドに見せびらかす。
鍋のデザインはまるでねずみの王国の黄色い熊が持つはちみつ壺の様で可愛い。
「後で空間に錬金スペースを用意するけど……」
「お嬢様、その中には僕は入れないんですか?」
うーん、どうなんだろう?
その辺の説明は書いてなかったからなぁ……。
ステータスノートを開き、改めて確認してみると……あ、空間作成スキルがいつの間にか2つも上がってる。
「私が許可した人なら入れるみたい。ただ、出入口は私にしか開けないから出入り自由とは言えないみたい」
説明に従いスキルを発動させると、私の神眼石から光の玉が飛び出し、レイフレッドの神眼石に触れて消えた。
「……これで入れるはず」
錬金釜をアイテムボックスにしまい、空間の入り口を開く。
レイフレッドはそっと空間の歪みに腕を伸ばし差し入れる。
何度か出し入れし、何ともないと分かると意を決して一歩を踏み出した。
後に続いて私はいつも通りに見慣れた空間に入り、さっさと錬金スペースを確保する。
前世では錬金術は半ばお伽噺の中の技術として語られながらも時に料理に例えられて説明されていた。
そして、この世界の錬金術はまさに料理そのもの、特にカレーのレシピにぴったり嵌まる。
まず材料となる野菜や肉を炒め煮込むように、元となる素材――例えば金属素材を錬金釜に入れる。
続いてメインのスパイスで味付けするように特殊素材――魔物素材や薬草などを入れ特性や効果を付け。
牛乳やはちみつ、ワインなどの隠し味でコクやまろやかさをプラスするように、魔法で効果をプラスする。
そんな技術。
だから、技術の粋を集めた機械人形のゴーレムは造れても、人工生命体たるホムンクルスは創れないし、瀕死の状態を完治させるフルポーションは調合出来ても完全な死者を甦らせるエリクシールや不老不死の妙薬なんて作れない。
でも、鍛冶スキル等と合わせて使えば効率よく良質の武具や防具が作れる。
「と、いうわけでー、早速初心者錬金術師の登竜門、初級ポーションを作りたいと思いまーす」
鍋の横に設置した作業台(自作)の上に材料を並べていく。
「まずはー、レイフレッド君提供の青の蔓草と黒苺の実を黄金蜂のはちみつを入れて混ぜまーす」
青の蔓草は疲労回復効果のある薬草だけど単体で使うと青臭い強烈苦味がある割には気休め程度の効果しかない。
黒苺は体力回復効果があるけどクエン酸越えの酸味がある割には以下略。
黄金蜂のはちみつは気分が悪くなるほど甘ったるいが薬草の効果を高める。
混ぜて混ぜて、やがて素材の形が溶けてスムージー状になった所へ蒸留(自作)と少量の蒸留酒(自作)を加え、片栗粉を溶かした様なトロリとした液状になるまでまた混ぜて。最後に紅茶の茶葉(量産品)とオレンジ(市場で購入)の皮のすり下ろしを入れ、水と変わらないさらさらした液体状に変わったら、ポーション瓶コルク栓セット(ギルド提供品)をぽいぽい放り込めばあら不思議。
ポーション瓶に詰まった赤紫色のポーションが完成です。
試しに鑑定してみれば。
●初級ポーション
・HP及びMPを少量回復する
・追加効果:継続回復効果(小)
・オレンジティー味
この結果を紙に書いてレイフレッドに見せたら「売ってくれ」と頼まれた。
「初級ポーションとしては最上級品かと……」
レイフレッドによればHPとMPの数値は冒険者や兵士等の戦闘職種を持つ者のみステータスノートに表示される数値で、HPが無くなれば死、MPが無くなれば魔法が使えなくなる。とまあその辺はゲームの設定通り。
「冒険者にとってポーションは必需品ですが、安いものは効果が足りず、効果の高い高価な物も味は良くないのです」
つまりそれは量産すれば売れる、と。
試作品は材料調達の報酬と相殺し、タダであげたけどね。
先月は染め物工房、今月からは革製品の加工・製作工房。
そして。
「ふふ、ふふふふふ」
「……お嬢様」
「ふふふふふ、良いじゃない。やぁっと手に入れたんだから!」
決して広いとは言えないダイニングにドンと鎮座しているのは鍋。ティーポットの様なずんぐりした形の巨大鍋。
ギルド併設の書庫でひたすら本を読み続けて三ヶ月。
錬金術の概念からレシピまで、ただ文字情報を覚えるだけの日々も今日で終わり。
勿論知識はまだまだ足りないから書庫通いは止めないけど、ようやく手に入れたそれをレイフレッドに見せびらかす。
鍋のデザインはまるでねずみの王国の黄色い熊が持つはちみつ壺の様で可愛い。
「後で空間に錬金スペースを用意するけど……」
「お嬢様、その中には僕は入れないんですか?」
うーん、どうなんだろう?
その辺の説明は書いてなかったからなぁ……。
ステータスノートを開き、改めて確認してみると……あ、空間作成スキルがいつの間にか2つも上がってる。
「私が許可した人なら入れるみたい。ただ、出入口は私にしか開けないから出入り自由とは言えないみたい」
説明に従いスキルを発動させると、私の神眼石から光の玉が飛び出し、レイフレッドの神眼石に触れて消えた。
「……これで入れるはず」
錬金釜をアイテムボックスにしまい、空間の入り口を開く。
レイフレッドはそっと空間の歪みに腕を伸ばし差し入れる。
何度か出し入れし、何ともないと分かると意を決して一歩を踏み出した。
後に続いて私はいつも通りに見慣れた空間に入り、さっさと錬金スペースを確保する。
前世では錬金術は半ばお伽噺の中の技術として語られながらも時に料理に例えられて説明されていた。
そして、この世界の錬金術はまさに料理そのもの、特にカレーのレシピにぴったり嵌まる。
まず材料となる野菜や肉を炒め煮込むように、元となる素材――例えば金属素材を錬金釜に入れる。
続いてメインのスパイスで味付けするように特殊素材――魔物素材や薬草などを入れ特性や効果を付け。
牛乳やはちみつ、ワインなどの隠し味でコクやまろやかさをプラスするように、魔法で効果をプラスする。
そんな技術。
だから、技術の粋を集めた機械人形のゴーレムは造れても、人工生命体たるホムンクルスは創れないし、瀕死の状態を完治させるフルポーションは調合出来ても完全な死者を甦らせるエリクシールや不老不死の妙薬なんて作れない。
でも、鍛冶スキル等と合わせて使えば効率よく良質の武具や防具が作れる。
「と、いうわけでー、早速初心者錬金術師の登竜門、初級ポーションを作りたいと思いまーす」
鍋の横に設置した作業台(自作)の上に材料を並べていく。
「まずはー、レイフレッド君提供の青の蔓草と黒苺の実を黄金蜂のはちみつを入れて混ぜまーす」
青の蔓草は疲労回復効果のある薬草だけど単体で使うと青臭い強烈苦味がある割には気休め程度の効果しかない。
黒苺は体力回復効果があるけどクエン酸越えの酸味がある割には以下略。
黄金蜂のはちみつは気分が悪くなるほど甘ったるいが薬草の効果を高める。
混ぜて混ぜて、やがて素材の形が溶けてスムージー状になった所へ蒸留(自作)と少量の蒸留酒(自作)を加え、片栗粉を溶かした様なトロリとした液状になるまでまた混ぜて。最後に紅茶の茶葉(量産品)とオレンジ(市場で購入)の皮のすり下ろしを入れ、水と変わらないさらさらした液体状に変わったら、ポーション瓶コルク栓セット(ギルド提供品)をぽいぽい放り込めばあら不思議。
ポーション瓶に詰まった赤紫色のポーションが完成です。
試しに鑑定してみれば。
●初級ポーション
・HP及びMPを少量回復する
・追加効果:継続回復効果(小)
・オレンジティー味
この結果を紙に書いてレイフレッドに見せたら「売ってくれ」と頼まれた。
「初級ポーションとしては最上級品かと……」
レイフレッドによればHPとMPの数値は冒険者や兵士等の戦闘職種を持つ者のみステータスノートに表示される数値で、HPが無くなれば死、MPが無くなれば魔法が使えなくなる。とまあその辺はゲームの設定通り。
「冒険者にとってポーションは必需品ですが、安いものは効果が足りず、効果の高い高価な物も味は良くないのです」
つまりそれは量産すれば売れる、と。
試作品は材料調達の報酬と相殺し、タダであげたけどね。
0
お気に入りに追加
1,080
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる