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まずは原料から
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さて、これで一先ず『食』と『住』は揃いました。
となると次は……
「『衣』、ですか……」
しかし、だ。
ここは砂漠の真ん中で、当たり前だけど糸や布を売る店があるはずもなく。
故に、まずは糸の材料の確保から始めねばならない。
「取りあえず、外に綿花と麻の畑は用意したけど……」
後は桑の木を栽培して蚕を飼う?
「いや、こんな砂漠の真ん中でオシャレ着なんか着てどうするし。シルクは当分要らないよね?」
この暑さのキツイ砂漠の中、涼しい麻は絶対必要だし。
綿は基本だと思うし。
「あとは……、夜の寒さを凌ぐ毛皮……。羊毛、か……」
これも今すぐは難しい。
「家畜買うなら羊より先に鶏飼うよ、卵とチキン欲しいし」
取りあえず植えた麻と綿花が育ち切るまでは、それらの世話以外出来る事はない。
……ん? 例の栄養剤はどうしたって?
あー、うん。さっき使ったみたいな街路樹に使うなら良いんだけどさ。
食べ物にしろ糸の材料にしろ、成長に余分な力を一気に使うせいか、作物の質が下がるんだよ、アレ使うと。
イチゴとか、食べられないことはないけど、全然甘くない酸っぱくて小さく萎びた実が出来る。
だから、もっと効果を下げた緩やかな栄養剤を与えての栽培をしているから、時間はかかるのよね。
流石に高級フルーツ店並みの出来は無理でも、やっぱり甘くてみずみずしいイチゴが食べたいもんね。
「……暇だし、一応獣よけの防壁くらいは作っておくべきか……」
せっかく作ったハウスを、作物ごとやられたら……ブチ切れる。遠慮なくブチ切れる。
それまでの努力と余計な体力魔力を無駄にする前に、もっと建設的に力を使おう。
そんなわけで、洞窟とハウスを囲い、砂を固めた岩の壁を魔法で築き上げていく。
一応空堀と水堀つきで。
入り口には吊橋と扉をつけて……
よし、これで小さきとはいえ私の城の完成だ。
あとは……いずれ家畜を飼うとなった時のために洞窟を増設するか……?
そんな事を思案していると。
「……先に壁を作っておいてやはり正解でしたね、お嬢様」
「ん、セイ? それどゆこと?」
「お客様がお越しのようですよ。……招かれざる、ね」
言われて壁の内に一つ建てた物見櫓に登ると。
「まじかー」
遠くに砂埃を立てて突っ走る、黒い集団。
「デザート・バイソンの群れかー……」
砂漠なのに水牛とはこれ如何に、とツッコミを入れたくなるネーミングだが、相手は魔物。その程度の矛盾はその得意の突進力で打ち砕く、猛牛の群れだ。
その乳はフレッシュチーズに向き、肉も臭みを下処理で消せば美味しい、優良物件なのだが……如何せんあの群れでの突進力は侮れず、簡単に狩れる獲物ではない。
「さて、どうするかね……」
となると次は……
「『衣』、ですか……」
しかし、だ。
ここは砂漠の真ん中で、当たり前だけど糸や布を売る店があるはずもなく。
故に、まずは糸の材料の確保から始めねばならない。
「取りあえず、外に綿花と麻の畑は用意したけど……」
後は桑の木を栽培して蚕を飼う?
「いや、こんな砂漠の真ん中でオシャレ着なんか着てどうするし。シルクは当分要らないよね?」
この暑さのキツイ砂漠の中、涼しい麻は絶対必要だし。
綿は基本だと思うし。
「あとは……、夜の寒さを凌ぐ毛皮……。羊毛、か……」
これも今すぐは難しい。
「家畜買うなら羊より先に鶏飼うよ、卵とチキン欲しいし」
取りあえず植えた麻と綿花が育ち切るまでは、それらの世話以外出来る事はない。
……ん? 例の栄養剤はどうしたって?
あー、うん。さっき使ったみたいな街路樹に使うなら良いんだけどさ。
食べ物にしろ糸の材料にしろ、成長に余分な力を一気に使うせいか、作物の質が下がるんだよ、アレ使うと。
イチゴとか、食べられないことはないけど、全然甘くない酸っぱくて小さく萎びた実が出来る。
だから、もっと効果を下げた緩やかな栄養剤を与えての栽培をしているから、時間はかかるのよね。
流石に高級フルーツ店並みの出来は無理でも、やっぱり甘くてみずみずしいイチゴが食べたいもんね。
「……暇だし、一応獣よけの防壁くらいは作っておくべきか……」
せっかく作ったハウスを、作物ごとやられたら……ブチ切れる。遠慮なくブチ切れる。
それまでの努力と余計な体力魔力を無駄にする前に、もっと建設的に力を使おう。
そんなわけで、洞窟とハウスを囲い、砂を固めた岩の壁を魔法で築き上げていく。
一応空堀と水堀つきで。
入り口には吊橋と扉をつけて……
よし、これで小さきとはいえ私の城の完成だ。
あとは……いずれ家畜を飼うとなった時のために洞窟を増設するか……?
そんな事を思案していると。
「……先に壁を作っておいてやはり正解でしたね、お嬢様」
「ん、セイ? それどゆこと?」
「お客様がお越しのようですよ。……招かれざる、ね」
言われて壁の内に一つ建てた物見櫓に登ると。
「まじかー」
遠くに砂埃を立てて突っ走る、黒い集団。
「デザート・バイソンの群れかー……」
砂漠なのに水牛とはこれ如何に、とツッコミを入れたくなるネーミングだが、相手は魔物。その程度の矛盾はその得意の突進力で打ち砕く、猛牛の群れだ。
その乳はフレッシュチーズに向き、肉も臭みを下処理で消せば美味しい、優良物件なのだが……如何せんあの群れでの突進力は侮れず、簡単に狩れる獲物ではない。
「さて、どうするかね……」
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