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砂漠に水を

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 「さて、一応『住』は確保出来たし、次は『食』……の前に水の確保ね」

 飲み水は勿論、畑をするにも水は必要不可欠。

 「……地下水掘って、ブースターの魔道具で増幅しつつ汲み上げれば良いとしても、この砂地じゃすぐに水を吸って……地下水使い過ぎて地盤沈下起こすよね、割とすぐ」

 だから、まずは水盤を作らないと。
 また土木工事……
 だけど。

 『ここは魔法担当の私の出番よね! 《アースピック!》』

 まずは地下水を掘り当てる為、魔法担当が穴掘りの呪文を唱える。
 自分一人、腕を広げても余裕が少しある程度の広さの、深い深い穴を徐々に掘り下げていきつつ、砂が雪崩れて来ないよう、石材で壁を作りつつ、どんどん深くへ掘り進める。

 流石に砂漠、自分がすっぽり埋まる程度の深さじゃまだまだ砂地。水の気配はない。
 ようやく水が溢れて来たのは既に火の光も届かない程深く掘り進んでから。
 多分かつての東京都心で見た超高層ビルも真っ青な位の長さがあるんじゃないかな、この穴。

 とは言え。
 湧き出てすぐの水は土混じりでにごっていて。
 とてもじゃないけど口をつけたくない。

 ひとまず砂利を敷き詰めろ過出来る様にして。
 ……魔道具の設置は水盤完成させてからだね。

 地上へもどると既に辺りも薄闇に染まりつつある。

 「……水盤の工事は明日からだね、これは」

 小屋から空間の屋敷へと戻る。
 「お帰りなさいませ、お嬢様」

 この空間に於いて唯一、私の並列存在私達ではない、執事のセスが出迎えてくれる。

 何かに集中すると、ついつい寝食を忘れがちになる私達にとって、彼は欠かせない存在である。
 ……彼が存在しなければ私達の誰かは確実に過労死してただろう。

 誰もが私を見捨てた中、唯一私についてきてくれた彼。

 「ただいま、セス」
 「はい、……お風呂の支度が整っています。まずはその砂埃を何とかして下さいね」
 「……はい」

 あー、お馬鹿じゃないイケメンの笑顔って癒やされるわー。

 入浴と食事を終え。
 「今日はどっちで寝るかな……」

 風呂と食事はまだ空間内でないと出来ないが。
 寝室だけは小屋にも設置した……のだけど。

 「お嬢様」
 にっこりと微笑む執事が私を屋敷の彼の寝室にごく自然に招き入れた。

 「あー……、今日でそう言えば十日目だっけ」
 「はい、お願いします」

 彼の言葉にその事を思い出した私はシュルリと襟元をくつろげる。

 こればかりはいくら実体化していても並列存在では叶えられない、本体の私でないと出来ない事だから。

 「――では、いただきます。お嬢様……」
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