5 / 15
砂漠に水を
しおりを挟む
「さて、一応『住』は確保出来たし、次は『食』……の前に水の確保ね」
飲み水は勿論、畑をするにも水は必要不可欠。
「……地下水掘って、ブースターの魔道具で増幅しつつ汲み上げれば良いとしても、この砂地じゃすぐに水を吸って……地下水使い過ぎて地盤沈下起こすよね、割とすぐ」
だから、まずは水盤を作らないと。
また土木工事……
だけど。
『ここは魔法担当の私の出番よね! 《アースピック!》』
まずは地下水を掘り当てる為、魔法担当が穴掘りの呪文を唱える。
自分一人、腕を広げても余裕が少しある程度の広さの、深い深い穴を徐々に掘り下げていきつつ、砂が雪崩れて来ないよう、石材で壁を作りつつ、どんどん深くへ掘り進める。
流石に砂漠、自分がすっぽり埋まる程度の深さじゃまだまだ砂地。水の気配はない。
ようやく水が溢れて来たのは既に火の光も届かない程深く掘り進んでから。
多分かつての東京都心で見た超高層ビルも真っ青な位の長さがあるんじゃないかな、この穴。
とは言え。
湧き出てすぐの水は土混じりでにごっていて。
とてもじゃないけど口をつけたくない。
ひとまず砂利を敷き詰めろ過出来る様にして。
……魔道具の設置は水盤完成させてからだね。
地上へもどると既に辺りも薄闇に染まりつつある。
「……水盤の工事は明日からだね、これは」
小屋から空間の屋敷へと戻る。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
この空間に於いて唯一、私の並列存在ではない、執事のセスが出迎えてくれる。
何かに集中すると、ついつい寝食を忘れがちになる私達にとって、彼は欠かせない存在である。
……彼が存在しなければ私達の誰かは確実に過労死してただろう。
誰もが私を見捨てた中、唯一私についてきてくれた彼。
「ただいま、セス」
「はい、……お風呂の支度が整っています。まずはその砂埃を何とかして下さいね」
「……はい」
あー、お馬鹿じゃないイケメンの笑顔って癒やされるわー。
入浴と食事を終え。
「今日はどっちで寝るかな……」
風呂と食事はまだ空間内でないと出来ないが。
寝室だけは小屋にも設置した……のだけど。
「お嬢様」
にっこりと微笑む執事が私を屋敷の彼の寝室にごく自然に招き入れた。
「あー……、今日でそう言えば十日目だっけ」
「はい、お願いします」
彼の言葉にその事を思い出した私はシュルリと襟元をくつろげる。
こればかりはいくら実体化していても並列存在では叶えられない、本体の私でないと出来ない事だから。
「――では、いただきます。お嬢様……」
飲み水は勿論、畑をするにも水は必要不可欠。
「……地下水掘って、ブースターの魔道具で増幅しつつ汲み上げれば良いとしても、この砂地じゃすぐに水を吸って……地下水使い過ぎて地盤沈下起こすよね、割とすぐ」
だから、まずは水盤を作らないと。
また土木工事……
だけど。
『ここは魔法担当の私の出番よね! 《アースピック!》』
まずは地下水を掘り当てる為、魔法担当が穴掘りの呪文を唱える。
自分一人、腕を広げても余裕が少しある程度の広さの、深い深い穴を徐々に掘り下げていきつつ、砂が雪崩れて来ないよう、石材で壁を作りつつ、どんどん深くへ掘り進める。
流石に砂漠、自分がすっぽり埋まる程度の深さじゃまだまだ砂地。水の気配はない。
ようやく水が溢れて来たのは既に火の光も届かない程深く掘り進んでから。
多分かつての東京都心で見た超高層ビルも真っ青な位の長さがあるんじゃないかな、この穴。
とは言え。
湧き出てすぐの水は土混じりでにごっていて。
とてもじゃないけど口をつけたくない。
ひとまず砂利を敷き詰めろ過出来る様にして。
……魔道具の設置は水盤完成させてからだね。
地上へもどると既に辺りも薄闇に染まりつつある。
「……水盤の工事は明日からだね、これは」
小屋から空間の屋敷へと戻る。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
この空間に於いて唯一、私の並列存在ではない、執事のセスが出迎えてくれる。
何かに集中すると、ついつい寝食を忘れがちになる私達にとって、彼は欠かせない存在である。
……彼が存在しなければ私達の誰かは確実に過労死してただろう。
誰もが私を見捨てた中、唯一私についてきてくれた彼。
「ただいま、セス」
「はい、……お風呂の支度が整っています。まずはその砂埃を何とかして下さいね」
「……はい」
あー、お馬鹿じゃないイケメンの笑顔って癒やされるわー。
入浴と食事を終え。
「今日はどっちで寝るかな……」
風呂と食事はまだ空間内でないと出来ないが。
寝室だけは小屋にも設置した……のだけど。
「お嬢様」
にっこりと微笑む執事が私を屋敷の彼の寝室にごく自然に招き入れた。
「あー……、今日でそう言えば十日目だっけ」
「はい、お願いします」
彼の言葉にその事を思い出した私はシュルリと襟元をくつろげる。
こればかりはいくら実体化していても並列存在では叶えられない、本体の私でないと出来ない事だから。
「――では、いただきます。お嬢様……」
0
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する
山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。
やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。
人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。
当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。
脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!
宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。
前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。
そんな彼女の願いは叶うのか?
毎日朝方更新予定です。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる