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誰も欲しがらない土地

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 空が、青い。
 白い雲一つない、青の他にあるのはカンカン照りのお日様が空の一番高いところに一つあるきりで。

 それ以外は前も後ろも、右も左も砂丘、砂丘、砂丘……。
 足元には細かい砂粒がさらさらと流れる。

 「まるでサハラ砂漠よね……」

 そんな場所に、少女が一人。
 年の頃は……大人になりかけの17~20歳程に見える、金髪美少女。……ドリルは装備していない。
 まるで貴族のような手入れの行き届いた髪と、白い肌。
 ――にもかかわらず、彼女がまとっているのはドレスではなく平民でも貧しい者が着るような、つぎはぎの当て布だらけの服。

 「……もう、そろそろ行ったかしらね」

 勿論、彼女が自分の足でこんな場所まで一人で歩いてきた――なんて事はない。
 この近くまで護送馬車でご丁寧にここまで送り届けてくれたのは、つい先日まで彼女の婚約者だった、彼女の故国、ハイルランド王国の第二王子、コルン付きの近衛騎士団だ。

 彼らは彼女を置いてさっさと去って行ったが、何せ砂丘の他は何もない砂漠だ。
 彼女自身でも馬車の進む方とは逆にしばし歩いて、距離を取った。

 「……これ、見られる訳にはいかないしね」

 もう一度後ろを振り返り、地平線まで砂丘しか見当たらない事をよくよく確認し……

 「〈解錠アンロック〉」

 一言、呟けば。
 彼女の前に、ドアが一枚出現する。
 特になんの変哲もない、飾り気の一つもない木の扉。
 そのレバー型のドアノブに手をかけ軽く押し下げ、押し開ける。

 その、ドアの先にあるのは……

 『やぁやぁ、見てたよー! 遂にこの日が来たねぇ』
 『取り敢えず何から始めるかい?』
 『勿論、この砂漠だ、まずは衣食住のうち一番切羽詰まるのはやっぱり食だ。すなわち私の領ぶ――』
 『いやいやいやいや、何を仰る。自分で言ってるじゃないか、ここは砂漠だと。ならば砂漠をすら豊穣の大地に変える薬を作る私の出ば――』
 『それよりッ! その衣服から何とかしないと! 当然私……』

 「はいはい、お嬢様方は取り敢えず落ち着きましょうねー。で、カレンお嬢様、取り敢えずお風呂とお食事の方、準備が整っておりますよ。まずはお休みいただき、今後のプランを伺わせていただきます」

 わちゃわちゃ出てきたをパンパンと手を叩いて黙らせる、執事服姿の青年が一人。

 「こんな砂漠で侵入者などまず居りませんでしょうが、念の為私が番を致しますので」

 にっこりと微笑む茶髪に茶色の瞳の私より少し年上の男の子が、“私達”の襟首を掴んで引き戻す。

 「分かったわ、セス」
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