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第一章 流行らないダンジョン

孤立状態のダンジョン

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 ヴォルティスが言うには、だ。

 「その時は……まぁ、何と言うか……寝ぼけてたんだよ」
 この世界の吸血鬼は基本亜人扱いで、魔物モンスターとは明確に別物扱いされているらしい。

 故に、不老不死ではない。
 不老不死ではない――が。

 「吸血鬼の寿命はおおよそ700~900歳、長寿のヤツは1100歳近いのが居たか」
 ……地球の人間の寿命のおよそ十倍の寿命があるらしい、上に、だ。

 赤ん坊が肉体的に成人するにはおよそ15、6年、精神的にも大人になるには24、5年程かかると言う。……その辺は人と変わらないらしい。
 しかも一度成人した後は一旦体の老化が停止する。
 そして、寿命の約十年前から一気に老化が進む――らしい。

 で、人間以上の膂力に魔力、驚異の回復力がある。

 不老不死ではないが、人間からみたら不老不死に限りなく近い。そんな種族であるらしく。

 「だから、暇を持て余す同胞はそれなりに居るんだよ」
 で。その暇潰しとして最もお手軽な方法が。
 「“昼寝”だな」

 昼寝と言っても、太陽の出ている時間にちょっと惰眠を貪る、と言うスタンダードな意味じゃない。
 あ、この世界の吸血鬼は基本夜行性だけど、太陽の下に出たからって死ぬわけでも、力が弱るなんて事もないらしい。

 ――が。
 彼の言う“昼寝”は、短くて数カ月、長ければ数年に及ぶ、私の感覚じゃ“冬眠”に近いもので。
 その間飲まず食わずなものだから。

 「昼寝から目覚めて……取り敢えず飯にする為街を目指そうとして、たまたま通り掛かった魔素溜まり、それがここだった」

 長い眠りから覚めたばかりで、動きは緩慢だった。しかも空腹で頭もあまり回っていなかった。
 それでも、吸血鬼は強い種族なので、そこらの魔物如きに遅れを取るなど有り得ない。

 ……で、油断したまま魔素溜まり付近を通り掛かったところ。

 「器を求めていた魔素に取り込まれ、俺はダンジョンマスターになり、ダンジョンコアが生まれて――洞窟ダンジョンが発生した。それがこのガルディアダンジョンだ」

 ただでさえお昼寝直後で空腹だったところを、ダンジョンに魔力を粗方食われ、更なる空腹に見舞われたまま囚われた。

 「当然追加の階層を作る魔力なんかある訳がない」

 ダンジョンとは、宝物で冒険者を呼び、蛮勇を誇る冒険者の失敗を誘発し、それを喰らって力とし、成長するものだ、が。

 「このダンジョン周辺に出る魔物は初心者に倒せるレベルの魔物じゃない」
 当然初心者は近寄らないエリアだ。

 そして、そのエリアを歩けるレベルの冒険者は初心者ダンジョンなど当然見向きもしない。

 故にダンジョンは成長しないまま、ダンジョンマスターは空腹を抱えたまま。

 「あれ、じゃあこの魔物タウビットは……?」
 「きゅう?」
 不思議そうに首を傾げた可愛いもふもふの魔物。
 この子の強さは……分からないけど。
 スライムとゴブリンのダンジョンには……似つかわしくないような……?

 「久方振りの食事のおかげか多少魔力が戻った……ら、ダンジョンコアがそいつを生み出した。――つまり、お前の血があればこのダンジョンは成長可能だって事だな」

 ……うん?
 何かヴォルティスがやけにイイ笑顔なんですが。

 どうにも嫌な予感がするのは……気のせいと言う事にしておきたい。
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