上 下
153 / 159
第十四章

結婚式

しおりを挟む
 いよいよ、だ。

 とうとうこの日がやって来た。

 今私は城の使用人に取り囲まれ、わちゃわちゃと身支度をあれこれと世話されている最中である。

 このイベント週間の始まりから毎日ドレスで着飾り、その度風呂だマッサージだエステだとえらい騒ぎであったのだけど、今日のそれはやはり、格別だった。

 日本の乙女ゲームの世界とあって、ウェディングドレスは勿論、白だ。

 流石に王太子妃様の時のドレスの豪華さを越えるのは失礼と、それに比べれば控えめなのだと周りの皆は言うけどさ、そこは王子様との結婚式とあって、十分過ぎる程に豪華で贅沢なドレスだった。

 ――幸いなのは『精霊姫』なんて呼称につられて、幼稚園のお遊戯会の延長のようなイタいドレスではなかった事か。

 いや、実はデザイン決めの時に、そんなドレスを提案していたデザイナーも居たんだよ。全力でその提案を蹴っ飛ばしたけどもね。

 なのに周囲には一定数そのドレスの肩を持つ者がいたからね……。
 ウェディングドレスでなくとも夜会で着れば? とも言われたけど、そういうドレスは私が好みじゃないんだ。

 そうしてようやく、……本当によーやく終わった身支度。

 早速会場への控室へと移動する。

 ノアも、今頃別室で待ち、私より先に一人で会場入りする手筈になっている。

 そして、そのノアの待つバージンロードの途中までエスコートしてくれる父親役は――

 「何で貴方なのかしらね、ローでリヒ」
 そう、影教師のローでリヒであった。

 「影が参加可能ならアンタよりウチの執事のが適役でしょうに」

 「いやー、いくら第三王子と言っても王子は王子だからねぇ。その結婚式に、上級とはいえ、使用人が参加はできないでしょ? その点教師という尊敬される職に就い――「あーはいはい、そこら辺は理解はしてても納得したくないのよ、もっと他の人選は無かったのかってね!」

 扉の前で言葉の小競り合いを繰り広げるも、勝ち負けの判定が下る前に、時間が来てしまった。

 中から漏れ聞こえてくる音楽の曲調が変わり、扉がゆっくりと開かれる。

 大勢の観衆と、そしてバージンロードの先で待つ、リアル王子様。

 こういう場で着飾った相手を“まるで王子”と称すが、かれは本物王子様。
 だけど、リアル王子だからってイケメンとは限らないのに、ノアはお伽噺の王子より綺麗で格好いい。

 バージンロードの途中で、エスコート役はノアに引き継がれる。

 そして壇上で誓いの言葉を述べ、指輪を交換する。

 島の精霊の祝福を受けた指輪だ。

 「ふふ、やっと君を僕のものに出来た」
 嬉しそうにノアは皆の前で私にキスをする。

 わっと、会場が一斉に祝福の拍手で満たされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

口悪王子にお仕置きを。

モンスターKKK
BL
「あの時、君と出逢えたのは人生中最悪で最高の出来事だよ。クソ野郎。」 口の悪い王子×圧倒的忠誠心の執事 「坊ちゃん…何時も口を正して下さいと言っているでしょう?」 「これが俺だァー!変わる気はねぇぞー!」 こんな2人だけど…成長につれてとある事実が!? それを知らずに事を重ねる2人… この恋、どうなるの!?

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

易しい文章で書いているよのお気軽ブックレビュー

浅野新
エッセイ・ノンフィクション
誰でも読みやすいブックレビューを書いています。対象は中学生くらいから。対象本はアマゾンリンクを貼っているので参考にどうぞ。基本的に、あまりに自分に合わないと思った本は取り上げないのでお気軽に読んで行ってくださいね。

データ・ロスト 〜未来宇宙戦争転生記

鷹来しぎ
SF
宇宙船に轢かれて死んだ少年、轢いた少女とともに宇宙帝国と戦う。 遙か未来の並行世界の少年・ユウキとして目を覚ました南勇季。勇季は職場で失敗し失意に暮れていたところ、通りかかった建築現場の事故で死んだはずだった。 目覚めたときにそばにいた少女スズランは、ユウキは彼女が起こした宇宙船事故によって重傷を負っていたのだと教えてくれる。 「一度、死なせちゃってごめんね。なんでもするから許して!」 死の淵をさまよい、目覚めたユウキには超知覚“レクトリヴ”が備わっていた。世界を書き換える力をもつ超常の能力を手に入れたユウキは、この力があれば他人から羨まれるような自分になれるのではないかと思い始める。 一方、全宇宙の支配をもくろむ帝国・ギデスがレクトリヴ能力者の独占を企んでおり、ユウキは連邦宇宙政府とギデスとの戦争に巻き込まれていくことになる。 レクトリヴ能力者として規格外であることが判明するユウキ。自身が望んだように、見返したかった知り合いや、少女スズランからの尊敬を集めていく。 黒猫のペシェは言う。 「では、キミ、幸福になりたまえよ。優れた者のみ幸福になれるのだとしたら、キミはこの宇宙で最も幸福たりえる存在だ」 キャラ紹介など: https://sepia-citron-b77.notion.site/NIL-AQ-b6666b9e57ba48c7a6faa53934dd2bab?pvs=4

美しい嘘

四十九院紙縞
ファンタジー
暗闇の森に封じられた魔女ネリネは、ある日、森に捨てられたアルビノの少年と出会う。美しいものが好きなネリネは、少年を拾い育てることにする。理由はひとつ、「美しく殺してくれ」。

ニート株式会社

長谷川 ゆう
キャラ文芸
東京の下町の小さなビルに、静かな変わった会社がある。 名前は「ニート株式会社」 その会社に勤める人々は、ニート、引きこもり、うつ病、社会不適合者、さまざまなな人間。月給15万。 会社を仕切る社長、女社長の マリネさんは 約4000人近い社員を雇っている。 マリネの秘書として 入社したばかりの東山は戸惑うばかりだ。 社会から取り残された人々が働く「ニート株式会社」とは...

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

ラノベの作品から現れた大嫌いなヒロインは、モブ以下の"背景"と化した俺の運命を変えてゆく。

寿々川 男女
恋愛
 俺の名前は、小原周。  ひょんな事から、大っ嫌いなライトノベルのツンデレヒロインと同居せざるを得なくなった。  クラスでは、ほぼボッチだった高校生活。  だが、それは突如、作品の中から現れた彼女との“運命的な出会い”をキッカケに、少しずつ状況は変わって行く。  そんなラブコメ展開の行く末に……。 *この作品は、第一章のラブコメ編が終わると、異世界編に突入します。

処理中です...