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第十四章

襲爵の儀

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 その場所は、居並ぶ者達の顔ぶれは大差ないのに、昨夜の賑やかな空気と正反対の、厳かな静寂に満たされていた。

 そして、外の光が入るはずもない夜会ではあり得ない、日の光がキラキラと降り注ぐ壇上は、まるで神聖な祭壇であるかの様。

 その壇上で待つのは王と、侍従長、そしてこうした儀式を仕切る儀礼省の長官のみ。

 そして今日は、私をエスコートしてくれるノアは居ない。
 貴族達と共にあちらから私を見てはいるだろうが、壇上に上がるのは私一人だ。

 まず、練習の通りに段の前で一度立ち止まり、深く頭を下げ、壇上に上がる許可を願う。

 「レーネ嬢へ、爵位を授けよう。だが、これまでと同じ名では風聞が悪い。あの者らの様になられても困る。よって、以前の爵位を廃し、新たな爵位を創設した。レーネ嬢、そなたにリチュア公爵位を授ける。精霊姫として、この国への恩恵を絶やさぬ様努力して貰いたい」

 「――はっ、我が力は国のため、王のため、そして民のためにあるもの。心して承らせていただきます」

 ……内心、「公爵ってどう言うコトじゃぁぁぁ! 聞いてねぇよぉぉぉぉ!」と、王様の襟首掴んで揺さぶりたい衝動が荒ぶっているけど、ここで心のままに振る舞えば、不敬罪待ったなしですから。

 必死に堪えましたとも。

 「すぐにノアが婿入りするのだ。アゼルが新たに公爵家を興す可能性もあったのだから、ノアの婿入りする先が公爵家になるのもそう変わるまい」
 ……後で王様に「聞いてないよ」とチクリと嫌味を言ったらそう返された。

 そして、その晩には二度目の夜会。
 ぞろぞろ並んでの挨拶は、普段は欠かせぬとはいえ昨日もしたし、ここ連日夜会の予定なので、本日はさらっと簡易的に流す程度で許されて。

 「まぁまぁ、貴女さまがあの方々の娘さん?」
 「あら、あの方々の娘さんてもっと幼くなかったかしら?」

 「それにしても、一足飛びに公爵様とは……ねぇ? 辺境伯はともすれば侯爵家より重宝されるとは勿論存じておりますけど……ねぇ。他の辺境伯様方と比べると……ねぇ?」

 「あら、でもチーズにタピオカに……、流行を気にするなら無視して良いお方ではありませんでしょうに?」

 ノアのエスコートの下、社交のど真ん中に放り込まれて取り囲まれ、必死に実地訓練を積まされております、トホホ……。

 ああ、さっき給仕から貰ったばかりのワインがもう無くなりそうよ……、喉が渇いて仕方ないわ。

 新たな飲み物が欲しくて給仕を探そうと辺りを見回して――

 「きゃっ! ご、ごめんなさい!」
 ドレスに赤ワインを引っ掛けられました。

 お約束イベント、回収ですね。
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