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第十四章

始まりの夜会

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 派手なファンファーレが聞こえる。

 どうやら会場に人が入り始めた様だ。
 入場の順は、爵位の低い者から先に入るのがこの国のマナーだ。

 私は本来時期辺境伯で、今この瞬間は無役、
 なので、ノアの身分に従い、王族扱いで、その一番最初に出る手はずになっていた。

 その為、王族専用の扉近くに設けられた小部屋でその時を待っている。

 さっきのロイヤルなお菓子はあまり喉を通らなかったけど、緊張のせいかお腹は空かない。

 けど、喉だけは乾く――が、こんな夜会用のドレスなんか着てちゃトイレも一苦労だし、今日は主催側として、招待客の挨拶を延々と聞いた後、ノアとファーストダンスを踊るという任務まである。……勿論途中でトイレ休憩なんてあるはずもない。
 今、水分を摂り過ぎるのは致命的。

 分かってはいても欲しくなる。

 なのにノアは何故だが余裕の表情で。
 にこにこ笑うノアの頬をつねってやりたい気分になるけど、今日の主役の美形王子が頬に赤い跡なんか付けてたらマズい。

 そこはグッと堪え……

 「殿下、陛下、そろそろよろしくお願い申し上げます」

 とうとう、私達の出番がやってくる。
 侍従が両開きの扉を恭しく開け放つ。

 とたん、綺羅綺羅しく眩しい光が目に刺さる。と、同時にこの場に集う貴族達の視線が揃ってこちらに向いた。

 思わず身をすくめたくなる。

 「大丈夫、僕が守るから。まずは一歩から始めよう、他人の綴った物語ではなく、僕たちが自分の手足で掴み取る新しい物語を、さ」

 「……うん」

 そう、例えここが乙女ゲームの世界でも。既にゲームが終了している今、これからの物語は私達の手で紡いでいかなければならない。

 私は会場の敷居をまたぎ、一歩会場へと入る。ノアと共に。

 エスコートの為に差し出された彼の腕に自らの腕を絡めながらも。その頼りになる腕に縋りつくだけの女ではいたくないから。

 前を見据え、堂々とそのまま歩みを進め、他より一段高い設えのその椅子を目指して歩く。

 続いてちみっこ王女、王女、第二王子、王太子夫妻、王陛下夫妻が席に着き。

 楽団が改めてファンファーレを鳴らす。

 それを合図に私達の前に貴族達の長い、長い列ができた。
 挨拶の列。まずは公爵家から。

 うん。誰が誰だか。
 いや、散々お勉強させられたんで、お家のお名前をお伺いすれば、あーあのお家ね、と分かるものを。その知識と各々の顔がなかなか紐付かない。

 そんな中、やがて侯爵家に移り、途中ルーベンス孃との再開がこんなに嬉しいとは……!

 「ふふふ、後ほどまたお取引のお話など致しましょうね、楽しみにしていますわ」

 ……少し、いやかなり怖いんだけどさ!
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