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第十三章

前夜

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 王妃様による、王太子妃様と一緒のマナー講座に、偉い人に囲まれながらの式の練習にリハーサル。
 私のトップシークレットをノアに打ち明け、受け入れて貰えて。

 遂に明日から怒涛のイベント三昧となる、そんな日の夜。

 ……正式な婚姻はまだ、明日の夜会を終えた後、儀式の終盤でと言う事になるのだけど、明日の夜はこんな風に物思いにふける余裕なんてないだろうから。

 レーネは屋敷のバルコニーのテーブルセットに、お茶セットを広げ、温かい飲み物とお菓子をつまみながら、星空を見上げた。

 ……星座なんて。一応小学校だか中学校だかの理科で最低限は習ったけど、本当に有名どころの星座しか覚えてなかったし、都会暮らしではまともに見たことのある星座なんて、オリオン座と北斗七星くらい。

 だから、王都であっても日本の繁華街に比べ暗いこの世界の夜空に浮かぶ星は、“満天の”と言って良い程沢山の星がちかちかとまたたいていて。

 ……いや、領地の島はもっと凄かったんだけど。

 夜空にオリオン座しか星の浮かばないあちらと異なり、この中から星座を構成する星を見つけるのは一苦労だ。

 だから、日本から見上げる星空と、ここの星空の違いなんかさっぱり分からない。

 未だ、前世の私がどんな人間だったのかあまり良く思い出せないんだけど。
 けど、少なくとも結婚していたらしい雰囲気はない。

 何故なら、家庭料理のレシピは一通り覚えていても、店で食べて美味しいと思った料理自体は覚えていても、そのレシピは覚えていない、と言うかおそらくそもそも知らなかったんだろう、と。
 そう思えるような記憶は他にも色々あって。

 そして今の私に、保健体育や理科で習ったんだろう生殖云々の知識はある。けど、実際の行為についての知識はむしろこっちに転生してから教わった“淑女の嗜み”とやらの項目の一つで詰め込んだ文字情報しかない。


 つまり、結婚どころかそういう事をする相手が居なかったんだろう……と。

 だから、式を終えたその夜。つまり明後日の夜が、本当に初めての夜になる。

 ノアを相手に、嫌とは言わないけど。

 いや、むしろあんなリアル王子様ルックスの彼が本当に……? と、今でもたまに思ってしまう相手に、時折唐突に身悶えしたくなる。

 だから。当日せめて無様な振る舞いはしたくないと、こうして必死に頭と心と体を冷やしているのだ。

 ただ、夜風に当たるだけでは体の芯まで冷えて風邪を引くかもしれない、と。大事な儀式に風邪なんか引いたら大変と、温かいココアをお供にましゅまろを食べる。

 独身最後の静かでまったりした夜は、こうして更けていったのだった。
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