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第十二章
王宮へ
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兵が持ち込んだ担架に乗せられ、アークが体育館から運び出される。
私も彼らについて会場を後にした。
裏門には、確かに王家の紋章付の馬車が待機していて。
中は普通の対面式四人乗りの――勿論余裕のある広々とした造りではあるが――対面式の馬車だったが、奥の席の椅子と椅子の間を埋めて簡易の寝台になる様整えられていた。
残る二席に乗るのは勿論私。と……
「貴方はアゼルでも見張って後ろの馬車に乗れば良いのに」
元影教師。
後ろの馬車は罪人の護送用の檻付き馬車だ。
アゼルはきっちり拘束され、檻の中に転がされている……ハズ。
「いやいや、俺のことは気にせず。事情は知ってるから」
とニヤニヤしながら言われてもねぇ……。
大変不快だけども、ノアの現状はそんな程度の事で躊躇してはいられない。
すでに身を起こすのも辛そうなノアに、自ら私の首筋に噛み付くだけの余裕は無さそうだった。
手首を差し出すのがお互い楽かとも思うけど。
(首筋からのが、こういう場合一番効率良いんだよね?)
「…………」
ジト目で邪魔者を一瞥して。
ため息と一緒に彼の存在ごと意識の外へポイする。
「ちょっと失礼」
靴を脱ぎ捨て、ノアの横たわる寝台に膝立ちに乗る。
彼の傷に障らないよう注意しつつ。服に血が付く程度は気にせずに。
「え、え、ちょ、近……!」
「今更だよ。ただ、いつもと逆なだけ。ノアは今動けないんだから。ほら、さっさと飲んで少しでも治しなさいよ」
普段は私のほうがあたふたさせられる事が多い中で、こんな風に慌てるノアはとても珍しい。
少しだけ、本当に少~しだけ、楽しくなってくる。
ああ、後ろでニヤニヤしてるオッサンが居なきゃ……。
いやいや、だからそれどころじゃ無いんだって。瞳の色が完全に変わったノアに、もう余裕はないはずだから。
彼の体に体重をかけてしまわないよう寝台に付いた手に体重を預け、自分の首筋を彼の顔の前へと近づける。
「……っ、」
それだけで、彼は言葉もなく私に噛み付いた。
自分で噛む場所を調整できなかったせいか、いつかの様に噛まれた瞬間は結構な痛みがあった。
けど、こくりと彼が血を嚥下する音が聞こえる頃には、逆に普段以上の甘い快楽が血管を伝って全身を回り始めた。
後ろのオッサンを気にして必死に声を抑えるけど……この体勢、ちょっとヤバいかも……。
でも、お陰で彼の顔色は良くなった。
吸血を終えた彼の上から退けば、新たな出血もだいぶ少なくなっていて。
「ふーん。この様子なら大丈夫かな」
オッサンがやけに意味深な笑みを浮かべているのが気になるけど。
王宮に到着直後、ノアは侍従達によって医務室へと担架のまま運ばれていってしまった。
そして私は――
私も彼らについて会場を後にした。
裏門には、確かに王家の紋章付の馬車が待機していて。
中は普通の対面式四人乗りの――勿論余裕のある広々とした造りではあるが――対面式の馬車だったが、奥の席の椅子と椅子の間を埋めて簡易の寝台になる様整えられていた。
残る二席に乗るのは勿論私。と……
「貴方はアゼルでも見張って後ろの馬車に乗れば良いのに」
元影教師。
後ろの馬車は罪人の護送用の檻付き馬車だ。
アゼルはきっちり拘束され、檻の中に転がされている……ハズ。
「いやいや、俺のことは気にせず。事情は知ってるから」
とニヤニヤしながら言われてもねぇ……。
大変不快だけども、ノアの現状はそんな程度の事で躊躇してはいられない。
すでに身を起こすのも辛そうなノアに、自ら私の首筋に噛み付くだけの余裕は無さそうだった。
手首を差し出すのがお互い楽かとも思うけど。
(首筋からのが、こういう場合一番効率良いんだよね?)
「…………」
ジト目で邪魔者を一瞥して。
ため息と一緒に彼の存在ごと意識の外へポイする。
「ちょっと失礼」
靴を脱ぎ捨て、ノアの横たわる寝台に膝立ちに乗る。
彼の傷に障らないよう注意しつつ。服に血が付く程度は気にせずに。
「え、え、ちょ、近……!」
「今更だよ。ただ、いつもと逆なだけ。ノアは今動けないんだから。ほら、さっさと飲んで少しでも治しなさいよ」
普段は私のほうがあたふたさせられる事が多い中で、こんな風に慌てるノアはとても珍しい。
少しだけ、本当に少~しだけ、楽しくなってくる。
ああ、後ろでニヤニヤしてるオッサンが居なきゃ……。
いやいや、だからそれどころじゃ無いんだって。瞳の色が完全に変わったノアに、もう余裕はないはずだから。
彼の体に体重をかけてしまわないよう寝台に付いた手に体重を預け、自分の首筋を彼の顔の前へと近づける。
「……っ、」
それだけで、彼は言葉もなく私に噛み付いた。
自分で噛む場所を調整できなかったせいか、いつかの様に噛まれた瞬間は結構な痛みがあった。
けど、こくりと彼が血を嚥下する音が聞こえる頃には、逆に普段以上の甘い快楽が血管を伝って全身を回り始めた。
後ろのオッサンを気にして必死に声を抑えるけど……この体勢、ちょっとヤバいかも……。
でも、お陰で彼の顔色は良くなった。
吸血を終えた彼の上から退けば、新たな出血もだいぶ少なくなっていて。
「ふーん。この様子なら大丈夫かな」
オッサンがやけに意味深な笑みを浮かべているのが気になるけど。
王宮に到着直後、ノアは侍従達によって医務室へと担架のまま運ばれていってしまった。
そして私は――
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