上 下
120 / 159
第十二章

選択科目の相談

しおりを挟む
 改めて言うまでもない。とは思うが一応。

 この学校は、様々な技術を学べる職業訓練学校なので、レーネの将来に直接役立ちそうな、領主の執務に関する授業など一つもない。

 むしろそんな授業があるのは先に通っていた貴族学校の方で。
 それとて全ての貴族が領地持ちと言う訳でもなく、また地方によって事情も異なるため、その授業は基本形式の決まった書類の書き方だとか、領主の心得だとかを教えるだけで、後は家で教わるものなのだ。

 実際、仕事をしない家族に代わりレーネに仕事を叩き込んだのは影執事だったし。

 ――つまり。

 「候補と言えば、土木系の専門知識か、それとも魔道具作成……それか、商売か。どれを選ぶか迷っています」

 「成る程ねぇ……。でも私、お貴族様相手に――それも領地持ちのしかも辺境伯様の進路相談なんてしたこと無いのよ。あって、せいぜい平民落ち寸前の没落男爵家の三男坊とかね。彼には商才があったから、それを専門に学ばせて、懇意の商家に引き取って貰ったのだけど……」

 私の場合、商売をいくら学ぼうと、それを将来現場で使うことは――余程の大失態でもして爵位と領地没収なんて事にならない限りはあり得ない。
 それは、他の専門科目も同じ事。

 「けど、一般庶民の身としては、領主様には一時的に商売で儲けて領地が潤うよりは、もっと長期的に見て、人命や長いスパンでの安定収入の為の灌漑かんがい工事を優先して欲しいのよ。その為の予算が要るなら、御用商人でも雇って監督だけしっかりして後は任せちゃえば良いんだから」

 ……まぁね。今でも私は基本アイディア係だからね。

 「分かりました。その方向で選びたいと思います」

 個々の工事の発注後は職人さんプロに任せれば良いから、工法の実技の能力は要らない。
 だけど、例えば川一つ治水工事をするなら、計画段階で地質調査やら何やら知識があった方がスムーズに進む。
 つまり、そういう事だ。

 だから、一応商売や魔道具なんかの授業も選ぶけど、割合的には土木知識6∶その他の知識合わせて4程度に抑える。

 「では、僕はその分実技にも力を入れましょうか。特に野菜や畜産の品種改良など研究開発が、やはり僕には一番合っている気がするので」
 うん。グレストは元々そっち方面志望だったものね。

 「今、チーズで牛乳の需要が高まって、必要とされる牛乳の質も様々あるわ。それぞれに適した牛を繁殖させるとか、そういう研究はとてもありがたいわ」
 「――お任せください、お嬢様」
 「じゃあ僕は王都での伝もあるし、もう少し商売について学ぼうかな。他国の外交官との取引にも応用出来そうだし」

 こうして、自分に必要な知識を選び、身につけていく。

 そんな折――私の元に、王宮から便りが届いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は婚約破棄を回避するため王家直属「マルサ」を作って王国財政を握ることにしました

中七七三
ファンタジー
王立貴族学校卒業の年の夏―― 私は自分が転生者であることに気づいた、というか思い出した。 王子と婚約している公爵令嬢であり、ご他聞に漏れず「悪役令嬢」というやつだった このまま行くと卒業パーティで婚約破棄され破滅する。 私はそれを回避するため、王国の財政を握ることにした。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢は所詮悪役令嬢

白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」 魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。 リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。 愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。 悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)

浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。 運命のまま彼女は命を落とす。 だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました! 裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。 ※2019年10月23日 完結

処理中です...