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第十二章
ドリンクバーの活用法
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「……なぁ、このマシン、船にも一つ欲しいんだけど」
島の職人にアドバイスを貰い、学校の課題として時間をかけて改良を重ねたドリンクバー用の魔道具。
それを、春休みに改めて島の関係者に披露したところ。
「冬は寒いし夏は暑い。船の上での移動中、いつでもホットドリンクや冷たい飲み物を飲めて、それが荷物にならないって有り難すぎる」
「あー、これを載せた専用荷車を引かせて畑を歩き回れば良い商売になりそうですね、そう言えば」
そのアクアの意見にグレストも頷く。
「……流石に貴族の役人は自分の使用人に自分好みの飲み物を用意させるけど、その使用人達の休憩スペースにこれを置けば良い福利厚生の例に出来そうだね」
……前世では若者やファミリー向けの安価なメニューから始まったドリンクバーだけど、こちらでは活用場所が増えそうだ。
「……なら、マシンは基本レンタルって事で専門の業者を作って、飲み物を継続販売する方向にする?」
それは、前世でコーヒーの会社がやっていた販売方法。
「ふむ、悪くないですね。まぁ、それでもまずドリンクバーとは何かを知っていただくのにフードコートでの設置が先ですけど」
「チーズもほぼほぼ出揃ったから、あとは料理人に任せて、夏休みが本番ね」
「ええ。牛飼い農家の面々も張り切ってますよ。新しくレンネット採取用の牛専門の牛飼いを、家を継げない次男・三男が集って始めたそうで。新たな仕事を作ったお嬢様は彼らに崇められてます」
……え、と思わず思ってしまったけれど。
日本で言えば、就職氷河期に就活に困り果てた所に救いの手を差し伸べた恩人扱いされている様なもの、らしい。よく分からないけど。
「その夏休みが終われば、僕らも来年の最終学年に向けて、本格的に将来の進路を決めねばなりません。既に伯爵家を継ぐ事が確定しているお嬢様はともかく……」
ついでにノアも私の婿と既に将来は決まっている様なものだが、グレストはそこには言及せず。
「これまで敢えて色々と手を出して出来る事を増やすのに腐心してきましたが、流石に卒業に向けてどれか一つ専門を絞らねばなりません」
勿論自主的に色々手を出すのは止められはしないが、よそ見ばかりして肝心の専門の単位を落とせば卒業出来ない。
あんまり欲張り過ぎるのは良くない。
「そういう意味では私もどれを専門に選ぶかは迷うのよね」
これまでは必要無いと思っていたけど。今度一度、進路指導室に行って相談員にアドバイスを貰うのも悪くはないかもしれないと、考え直すのだった。
島の職人にアドバイスを貰い、学校の課題として時間をかけて改良を重ねたドリンクバー用の魔道具。
それを、春休みに改めて島の関係者に披露したところ。
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「あー、これを載せた専用荷車を引かせて畑を歩き回れば良い商売になりそうですね、そう言えば」
そのアクアの意見にグレストも頷く。
「……流石に貴族の役人は自分の使用人に自分好みの飲み物を用意させるけど、その使用人達の休憩スペースにこれを置けば良い福利厚生の例に出来そうだね」
……前世では若者やファミリー向けの安価なメニューから始まったドリンクバーだけど、こちらでは活用場所が増えそうだ。
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それは、前世でコーヒーの会社がやっていた販売方法。
「ふむ、悪くないですね。まぁ、それでもまずドリンクバーとは何かを知っていただくのにフードコートでの設置が先ですけど」
「チーズもほぼほぼ出揃ったから、あとは料理人に任せて、夏休みが本番ね」
「ええ。牛飼い農家の面々も張り切ってますよ。新しくレンネット採取用の牛専門の牛飼いを、家を継げない次男・三男が集って始めたそうで。新たな仕事を作ったお嬢様は彼らに崇められてます」
……え、と思わず思ってしまったけれど。
日本で言えば、就職氷河期に就活に困り果てた所に救いの手を差し伸べた恩人扱いされている様なもの、らしい。よく分からないけど。
「その夏休みが終われば、僕らも来年の最終学年に向けて、本格的に将来の進路を決めねばなりません。既に伯爵家を継ぐ事が確定しているお嬢様はともかく……」
ついでにノアも私の婿と既に将来は決まっている様なものだが、グレストはそこには言及せず。
「これまで敢えて色々と手を出して出来る事を増やすのに腐心してきましたが、流石に卒業に向けてどれか一つ専門を絞らねばなりません」
勿論自主的に色々手を出すのは止められはしないが、よそ見ばかりして肝心の専門の単位を落とせば卒業出来ない。
あんまり欲張り過ぎるのは良くない。
「そういう意味では私もどれを専門に選ぶかは迷うのよね」
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