上 下
107 / 159
第十一章

冬の予定は

しおりを挟む
 「……これらのアイテムは、店舗が稼働し始めるまでは活躍の無いアイテムですよね? ドリンクバーに至っては、装置のみが完成しても、肝心の飲み物が美味しくなければ話にならない」

 「……そうね、そうよ」
 「確かに、この装置は島では島の技術者とアイデアを詰めて来期の課題に充てて春休みの完成を目指し、冬休みはチーズとドリンクの試作と改善案を出して、春までに完成。そこから本格的に、商品化のための話し合いに持っていって、また夏休みに各種イベントを企画、来年の秋以降に店舗展開位のスケジュールが望ましいですね」

 グレストの意見に、私もノアも異論は無く。

 まずは時間の必要なチーズ作りから。
 その為の材料を仕入れる。

 まずは牛乳。
 生乳を65℃で殺菌。32℃まで冷やす。

 そしてここでチーズ作りの肝、“レンネット”を加えるのだが……。
 これ、子牛の第四胃ギアラから採れる消化液なのだ。

 ……最近の日本では似た様な化学物質を利用していた様だけど、私にそんな物は用意出来ない。幸い畜産も酪農も盛んなので、子牛の一頭位ならすぐに手に入る。
 長くミルクを搾れる乳牛の雌の子牛は流石に高いし、肉牛は雄雌関係なく肥育される。

 狙い目は乳牛の雄。これも一部種牛として生き延びられる幸運に預かれなければ肉牛扱いになるが、肉牛として品種改良された牛に比べると値段が落ちる。

 「勿論、第四胃ギアラだけ取ってお終いじゃ勿体なさすぎるから、今回は盛大に焼き肉パーティーとすき焼きパーティーにモツ鍋パーティー合わせてやるけど、実際に商品として流通させるなら、子牛の肉の利用方法も合わせて考えないとね」

 これまで高く売れなかった乳牛の雄の子牛に高い付加価値がつく。チーズで生乳も売れるし、乳牛農家には朗報になるだろう。

 「乳牛農家で雄牛が生まれたら、屠殺とさつまでの間面倒を見る専業の農家を募る必要が出そうですね」
 確かに、ある程度の値段で売れるとはいえ、酪農家で雄牛を育てさせるのもスペース的に難しい農家もあるだろう。

 「まぁ、その辺の話し合いは後でじっくりと、ね。今はチーズ作りに専念してちょうだい」
 「そうですね。すみません、それで次に何をするので?」

 「まずはレンネットを加えて混ぜて。豆腐くらいの固さに固まったら型に移して圧力を加えて……ホエーを絞るわ。この絞りカスを豚に餌として与えると、肉が美味しくなるの。養豚農家に試してもらって、上手く行ったらブランド化しましょう」

 「チーズ一つ作るだけで、活性化しそうな業種がそんなに……。お嬢様、やはり貴女の才能はその発想力です。足りない知識や技術は、得意な奴を積極的にこの学校に放り込めば勝手に身に着けて帰ってきます。お嬢様はその人材を使えば良いのです」

 あとは塩水に浸けて、その後2ヶ月以上熟成させれば、ゴーダチーズの出来上がり。
 だけど、グレストの称賛が……うぅ、全身痒いよー!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

錬金術師カレンはもう妥協しません

山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」 前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。 病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。 自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。 それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。 依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。 王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。 前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。 ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。 仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。 錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。 ※小説家になろうにも投稿中。

【完結】婚約者と幼馴染があまりにも仲良しなので喜んで身を引きます。

天歌
恋愛
「あーーん!ダンテェ!ちょっと聞いてよっ!」 甘えた声でそう言いながら来たかと思えば、私の婚約者ダンテに寄り添うこの女性は、ダンテの幼馴染アリエラ様。 「ちょ、ちょっとアリエラ…。シャティアが見ているぞ」 ダンテはアリエラ様を軽く手で制止しつつも、私の方をチラチラと見ながら満更でも無いようだ。 「あ、シャティア様もいたんですね〜。そんな事よりもダンテッ…あのね…」 この距離で私が見えなければ医者を全力でお勧めしたい。 そして完全に2人の世界に入っていく婚約者とその幼馴染…。 いつもこうなのだ。 いつも私がダンテと過ごしていると必ずと言って良いほどアリエラ様が現れ2人の世界へ旅立たれる。 私も想い合う2人を引き離すような悪女ではありませんよ? 喜んで、身を引かせていただきます! 短編予定です。 設定緩いかもしれません。お許しください。 感想欄、返す自信が無く閉じています

悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました

結城芙由奈 
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】 20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ―― ※他サイトでも投稿中

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

伯爵令嬢の受難~当馬も悪役令嬢の友人も辞めて好きに生きることにします!

ユウ
恋愛
生前気苦労が絶えず息をつく暇もなかった。 侯爵令嬢を親友に持ち、婚約者は別の女性を見ていた。 所詮は政略結婚だと割り切っていたが、とある少女の介入で更に生活が乱された。 聡明で貞節な王太子殿下が… 「君のとの婚約を破棄する」 とんでもない宣言をした。 何でも平民の少女と恋に落ちたとか。 親友は悪役令嬢と呼ばれるようになり逆に王家を糾弾し婚約者は親友と駆け落ちし国は振り回され。 その火の粉を被ったのは中位貴族達。 私は過労で倒れ18歳でこの世を去ったと思いきや。 前々前世の記憶まで思い出してしまうのだった。 気づくと運命の日の前に逆戻っていた。 「よし、逃げよう」 決意を固めた私は友人と婚約者から離れる事を決意し婚約を解消した後に国を出ようと決意。 軽い人間不信になった私はペット一緒にこっそり逃亡計画を立てていた。 …はずがとある少年に声をかけられる。

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

処理中です...