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第十一章

フードコート計画

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 フードコート。
 商業施設や街の一角などに設けられ、セミセルフ形式の飲食店が並び、各店舗共通の食事場所で料理をいただく。
 自分の食べたい物を好きに食べられるのが最大のメリットだろう。

 ……大型ショッピングモールにありがちなフードコートだと、躾の悪いお子様の放牧天国だったり、自習の学生を見かけたり等する事もあったけど。
 雰囲気のある、ちょっとお高めの専門店ばかりを集めたオトナのフードコートってのも存在した。

 「フードフェスで似たような形式で料理を提供したけど、あれは一時のイベントの為だけの仮設店舗だったしね。これは常設するから、入れる店舗の選定と、いかに過ごしやすく、そして店のシステムの分かりやすい場にするか。考える事は幾らでもあるわよ」

 「このフードコートという形態の店舗のシステムは面白いですね。コンセプトを変えれば幾らでも応用が効く。確かに最初は大変そうですが、ある程度そこでマニュアルに落とし込めれば……ああ、凄く面白そうです」

 「へぇ、例えばピザの専門店で頼んだピザと、デザート専門店で買ったケーキに、ドリンク専門店でドリンクを頼んで、それを自分一人で楽しむことも出来て、人と食事に出掛けてご飯かパンかで入る店について喧嘩する必要が無いってことだね?」

 「そう。ただしこれまで見なかったシステムの店だから。万人に分かりやすいシステム作りが、料理の味と同じか下手をすればそれ以上のキモとなる」

 それに、庶民用のフードコートならそれも良いが、流石に貴族に自ら食事を運べと言ったら大変な事になる。
 「貴族向けの店舗は注文聞きと給仕に専任のスタッフを雇うべきよね」

 だから。
 「この冬は、仕込みに時間のかかるチーズの試作の仕込みと、フードコートのシステムについての企画会議がメインの仕事になるかしらね?」
 「チーズの仕込みは島に帰省した際にやるとして。今できる事は、店舗の展開について話を詰める事ですか」

 「ええ、まだ試作品すら無い以上、店舗の選定は無理だけど、チーズ以外の既存の店舗でフードコートを作るとしたら。そう想定して企画書を練るわよ」

 少なくとも。機械に準ずる道具の開発は必須であろう。

 「呼び出しベル、ですか?」
 「ええ。あくまで給仕スタッフを入れない庶民向けのフードコートの話だけどね。各店舗で注文した後、一部例外を除けば調理時間が要るわよね?」
 「……ですね。ある程度ストック可能な――焼き菓子等ならすぐにお渡しできるでしょうが、熱々の出来立て料理を期待して来た客に、例えばフライドチキン等でそれをやれば、普通に惣菜を買えば良いと思われても仕方ありません」

 「ええ。だけど料理が出来るまで店の前で待機させても後の客の注文を聞くのに邪魔だし、回転も落ちるわ」

 が。その解消アイテムが既にあって。世のフードコートではそれがあって当たり前にまでなっていた。

 「だから、まずはアイテムを作るわ」
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