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第十章

タピオカレシピ開発

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 「ねぇ、これはどうかしら」
 「へぇ、トーストか」
 「……美味しいですが、スイーツの延長線の様です。今回のコンセプトには合わない気がします」

 さて、本日は先日問題が浮上したタピオカレシピてこ入れの為の研究会だ。

 「これは美味いぞ。サラダのトッピングはアリだな。……味付け間違えると地獄になりそうだから、要研究だけど」
 「パスタにも合います。……こちらは手順さえ間違えなければ問題なさそうですね」

 試作した料理を味見し合って、真剣に感想を述べていく。
 今はお世辞は要らない。厳しくも正しい意見だけが必要な場だ。
 ……料理したのはプロではないから、その辺はご愛嬌。
 だけど料理の腕による失敗ではなくレシピがダメなら、容赦なく指摘する。
 変なものを出して、これまで積み上げた信頼を台無しには出来ないから、私達も自然とレシピの評価は厳しくなる。

 特に今回のコンセプトが、そもそも美味しくないタピオカ料理に対抗する為の料理なのだから、新しいレシピが不味ければ、今後のタピオカの売れ方に響いてくる。
 となれば、打撃を受けるのはウチの領民だ。

 万人受けは難しくても、最低限過半数の人間が美味しいと判断する物でないと――

 となると、あまり奇をてらった料理は向かない。
 元からある料理のアレンジが基本となる。それも一般受けするスタンダードな料理が。

 ……割とどんな食材でも美味しく食べられ、辛さの加減を間違えなければあまり“嫌い”と言う意見を聞かないカレーはどうだろう?

 「……カレー“ライス”にはあんまり合わねぇな。味より食感の方がコレ邪魔だわ。甘いドリンクに入れればこの食感が癖になるんだが、白飯との相性はイマイチだな」
 ああ、そう言えばいくらモドキの失敗談も聞いたな……。
 ご飯とは合わせるのは一旦諦めたほうがいいかも?

 「味付けを間違えなければ、スープの具材に合いますね。……味噌汁にはあまり合わないようですが。和風な料理に合わせるのは難しい傾向がありそうです」
 「……汁粉のアクセントには良いんだけどな」

 和スイーツには合うんだけとね。

 けど、いくつかは合うものが見つかった。
 ここからはプロも交えて本格的に商品開発が始まる。

 料理人は勿論、場合によっちゃ調味液の加工も必要かもしれないので、そちらの職人さんにもご協力願う。

 私は領主の娘で既に実績もあるから、声をかけて都合を聞けば、大抵は都合を合わせて協力して貰える。
 けど、全部丸投げは無責任なので、こうして先にグレストやアクアと候補を絞り、方向性を決めてからプロに託すのだ。

 タピオカプロジェクトは、次の段階へと進む。
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