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第八章
哀れな兄弟 - ノア視点 -
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「ではまず事実の確認から始めるとするかの」
ようやく、だ。
あの数の文書があって、ようやく王が動いた。
裏で多少僕が動いた事は確かだけど、あの全てに僕は関わりがない。
特にルーベンスの家のご令嬢なんて、僕とは接点が無いからね。完全に今回の研修旅行でアゼルが彼女を怒らせ敵に回したんだ。――自業自得というヤツだね。
僕がしたのはグレストと組んで、アゼルの振る舞いをレポートに詳細にまとめただけ。今ここに持ってきているから最後のダメ押しに使う予定。
この男は、彼女の婚約者という立場の意味を本当に理解していないんだから。
その付加価値含め、僕は僕の存在をありのままに受け止めてくれた彼女が大事なんだ。
「――その件については僕もライバルの一人です。手加減はしませんよ」
と、グレストに言われたし、島にはアクアも居る。
「ですが、ライバルにすら値しないあの男を蹴落とす協力は惜しみません。お嬢様の手をこれ以上煩わせたくありませんから」
ああ、全くだ。
彼女の才能はこんなダメ男のお守りに費やして良い代物じゃない。
「あの娘は王子たるこの私に頭を下げるどころか説教をしてくる様なとんでもない女なのです!」
「……説教の内容は逐一最もであり、過ぎた小言は無かったと報告にあるが、この日当番をサボったのは事実か?」
「サボったなど! この様な事を王子にさせるのがおかしく――」
「わしも、そなたの兄も当たり前に担った役目であるぞ。王子だからと逃れて良いものでは無いのだが? つまり、少なくともこの件についての説教は彼女に正当性がある」
「なっ……!」
「流石に全てとはいかんが、大半の裏付けは取れておる。その分の全てに彼女の側の正当性が認められており、当然不敬罪の適用は無しと判断されておる」
おっと、ここで出さないと!
「追加でこちらの資料もご覧ください」
「……アゼル、王子の名のもとに随分横柄な振る舞いばかりしているようだが? その尻拭いの全てを彼女に押し付け、その割にその労力に報いるどころか無碍に扱うばかり。……これでは彼女を罪に問うどころかお前自身に罰を与えねばならん状況なのだが?」
「へっ……?」
「この報告によれば、何度かお前自身に直接注意もしているとある。研修中にも教師に注意されたはずの事を平気でやらかしルーベンス嬢を怒らせた、これは事実か?」
「そ、それは……」
「あの教師は王家の影だ。基本は王族の護衛が主の任務であるが、王族に相応しくない振る舞いをする暗愚に早急に対処する為に居る人材でもある。『いつでも、ご命令があれば“事故”を起こす』と書いてあるのだがな」
どうやら既に首は絞まる寸前のようだね。
ご愁傷さま。
ようやく、だ。
あの数の文書があって、ようやく王が動いた。
裏で多少僕が動いた事は確かだけど、あの全てに僕は関わりがない。
特にルーベンスの家のご令嬢なんて、僕とは接点が無いからね。完全に今回の研修旅行でアゼルが彼女を怒らせ敵に回したんだ。――自業自得というヤツだね。
僕がしたのはグレストと組んで、アゼルの振る舞いをレポートに詳細にまとめただけ。今ここに持ってきているから最後のダメ押しに使う予定。
この男は、彼女の婚約者という立場の意味を本当に理解していないんだから。
その付加価値含め、僕は僕の存在をありのままに受け止めてくれた彼女が大事なんだ。
「――その件については僕もライバルの一人です。手加減はしませんよ」
と、グレストに言われたし、島にはアクアも居る。
「ですが、ライバルにすら値しないあの男を蹴落とす協力は惜しみません。お嬢様の手をこれ以上煩わせたくありませんから」
ああ、全くだ。
彼女の才能はこんなダメ男のお守りに費やして良い代物じゃない。
「あの娘は王子たるこの私に頭を下げるどころか説教をしてくる様なとんでもない女なのです!」
「……説教の内容は逐一最もであり、過ぎた小言は無かったと報告にあるが、この日当番をサボったのは事実か?」
「サボったなど! この様な事を王子にさせるのがおかしく――」
「わしも、そなたの兄も当たり前に担った役目であるぞ。王子だからと逃れて良いものでは無いのだが? つまり、少なくともこの件についての説教は彼女に正当性がある」
「なっ……!」
「流石に全てとはいかんが、大半の裏付けは取れておる。その分の全てに彼女の側の正当性が認められており、当然不敬罪の適用は無しと判断されておる」
おっと、ここで出さないと!
「追加でこちらの資料もご覧ください」
「……アゼル、王子の名のもとに随分横柄な振る舞いばかりしているようだが? その尻拭いの全てを彼女に押し付け、その割にその労力に報いるどころか無碍に扱うばかり。……これでは彼女を罪に問うどころかお前自身に罰を与えねばならん状況なのだが?」
「へっ……?」
「この報告によれば、何度かお前自身に直接注意もしているとある。研修中にも教師に注意されたはずの事を平気でやらかしルーベンス嬢を怒らせた、これは事実か?」
「そ、それは……」
「あの教師は王家の影だ。基本は王族の護衛が主の任務であるが、王族に相応しくない振る舞いをする暗愚に早急に対処する為に居る人材でもある。『いつでも、ご命令があれば“事故”を起こす』と書いてあるのだがな」
どうやら既に首は絞まる寸前のようだね。
ご愁傷さま。
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