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第七章

王子の暴発

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 漁業と農業、両方の体験を終えて、最終日の午前中は港の市場で買食い等を少々楽しんで、今回の研修は終了。
 帰りの船に乗り込んだ。

 「じゃ、今度は夏休みにグレストも連れて戻るから。ちゃんと勉強もさぼらずやりなさいよ!」
 「……気が向いたらな」

 帰りの船も、行きの時と同様のスイートルームでの旅だ。

 戻ったら早速グレストと相談して新しいタピオカのお食事メニューの開発に取り組むんだ……。

 「あの、昨日の観光農園の他にも温泉の話を聞いたのですけれど、もっと詳しくお話が聞きたいですわ」
 「あら、ありがとうございます。ええ、勿論構いませんよ。お茶を飲みながらデッキでお話しましょう」
 さすが才媛、お話していて楽しい。
 メインはウチのスパリゾートの宣伝だったけど、ちらほら取り入れたらウチの施設の人気に繋がりそうなネタをちらつかせてくる。
 そして言うんだ。
 「ウチと取り引きなさいませんこと?」
 ……うん、その話とても魅力的なんだけど、対価は何かな?

 そんな楽しい午後の一時。
 イーリスは王子と共に過ごしていたはずが、何故か王子が明らかにご機嫌ななめなご様子で一人お茶の席に乱入して来たのだった。

 「――おい、貴様。今回の度重なる失態について、覚悟は出来ているんだろうな」
 と、随分と偉そうに上から目線で私に吐き捨てるアゼル。
 「……私の失態とは何の事でしょう?」
 「仮にも婚約者のくせに俺に散々恥をかかせやがって!」
 「――私が故意にあなたが恥をかく様な事をさせた事実は無かったと存じますが?」
 「何を、ここはお前の領地だろう! 婚約者に花を持たせるくらいどうとでもなるだろう! それをせずに俺に恥をかかせて、帰りまでこの様な船! 王族を蔑ろにした罪で婚約破棄と国外追放を言い渡す! 死刑でないだけありがたく思え!」

 「……それ、王様や宰相様はご存知で? と言うかローデリヒが止めませんでした?」
 「ローデリヒ等、一教師に何が出来る、俺は王子だぞ!」
 「……少なくとも王子だという身分を振りかざすしか出来ない王子よりは有能なはずですがね。そのような決定は王太子でもないあなた一人の命令では力を持ちません。この婚約は王命なのですから」
 「うるさい、うるさい、うるさい! おい、誰か!この生意気な女を物置にでも閉じ込めておけ!」

 ――この船は、何度も言うが伯爵家の船だ。
 当然乗組員の大半は伯爵領の者。そんな命令に従う者はなく。

 「ええい、おら来い!」
 最終的に自分で動くしか無かったアゼルが力任せに私の腕を無理矢理掴んで引っ張った。

 「きゃっ!」
 その、直後。船が大きく傾いた。
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