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第七章

島の産業を知ろう!

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 翌朝。まだ水平線の際が少しばかり明るくなっただけの早朝に、私達は港に居た。

 島を出るまでは日課だった私には慣れたもの。
 朝練で慣れているらしいイーリスもわりと平気そうだけど、ルーベンス嬢はとろんと眠たそうな目をしている。
 王子は不機嫌を隠そうともしない。

 「まぁ、取り敢えずお嬢以外は見学な。船から落ちない様にだけ気をつけてくれ!」

 いつもの様に出港時に精霊に祈る。

 「おお、これが精霊魔法なのか……。凄え。属性魔法と別扱いな理由が良く分かるぜ。教科書でいくら教えられてもピンと来なかったが、実際に見れば確かに大違いだ」
 「ええ。とても神聖なものなのですね、精霊魔法というのは……」

 「ああ。お嬢のコレがあるのとないのじゃ漁の成果も全然違うんだ。まぁ、お嬢が居ないんじゃ暮らしていけないじゃ困るから俺達も頑張ってるけど。俺は気付けばお嬢が居るのが当たり前だったからあんまり実感は無かったんだけどな。実際お嬢が学校行っちまってようやく、嫌でも実感したぜ」

 「けど、アクアもようやく漁に参加させて貰えるようになったんだね。がんばってるじゃん」
 「当然だろ! グレストにばかりいい格好させられるかよ! だから一生懸命身体を鍛えたら、やり過ぎたら泳げなくなるから程々で止めて勉強しろとか言われるんだぜ……」

 「おお、君もか。俺は特に泳ぐ必要は無いのに、身体を鍛えるばかりでなく少しは勉強もしろとよく言われるのだ」
 「おお、同士よ!」
 ……イーリスとさらに仲が深まってしまったらしいアクアは置いておいて。

 「ルーベンス嬢、ウチのアクアがすみません」
 「構いませんよ、愉快な幼馴染ですのね。私にはああも気軽にやりとりの出来るお友達は同性・異性問わず居りませんでしたから、羨ましく思いますけれど。イーリスもおそらくそうでしょう。貴族同士の面倒臭い色々を気にしなくて良い相手との交流が楽しいのですわ」

 ああ、うん。そういうのとは見るからに無縁と分かるもんね、アクアは。

 「イーリス様は体格も良いし、試しに網を引っ張ってみるか?」
 「おお、良いのか? やらせてくれ!」
 「よし、じゃ俺と一緒にやるぞ!」

 アゼルは静かだなーと思ったら……
 あら、また船酔いですか。この船も大きいけど、流石に荷を運ぶ商船に比べれば小さく、その分よりよく揺れる。

 一仕事終えた後の漬け丼も見たくもないと一人部屋に籠もってしまった。
 「おかわり、あるか?」
 「おう、一人一杯まではおかわりできるぜ。それ以上食いたいなら自分で獲った獲物で、だな」
 「むぅ、取り敢えずもう一杯おかわりを頼む」
 「お前、さっき俺と一緒に引いた網にアジがかかってたろ、刺し身ならすぐ作って貰えるぞ?」
 「そうなのか? では頼んでこよう! アクア、共に食おうぜ!」
 「いいのか? お前良いヤツだな!」
 「何、アクアが居てこその獲物だからな、当然の事さ!」
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