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第七章

タピオカ、当たり外れの談。

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    彼らは、幼なじみの二人やアクアの家族程毎日顔を合わせる訳じゃない。……と言うより、荷運びが仕事の彼らは大半を船の上で過ごすため、たまの休みに挨拶するくらい。

    だけど、グレストと開発した商品を運んでくれる彼らだ、仕事の話やなにかでお世話になったりもしていた。

    そして船に乗る毎日を過ごす彼らは、職は違えどアクア達の一家とも昔から付き合いがあるらしい。
    いやまあ、狭い島の中では殆どが親戚付き合いの様な関係なんだけど、ね。
    だから私にもこうして気軽に声をかけてくれるんだ。

    「いやぁ、相変わらずタピオカは良く売れてるよ。最近じゃデザート以外のメニューも増えてるらしいぜ。当たり外れの差はでかいらしいがな。ヤンの奴はよせば良いのにタピオカ丼てな、いくらの醤油漬けの調味液に浸けて赤く色をつけたの食って悶絶してたぜ、馬鹿な野郎だよな」
    「ああ。けど麻婆タピオカってよ、麻婆にタピオカ入れたの、あれは美味かったぜ」

    そして雑談の中にこうして貴重な情報が混じっていたりするから、私も真剣に話に加わる。
   「……不味い方のレシピばかり知られてしまうのは困りますね。今度改めて本格的にメニュー開発して、こちらから正式におかずメニューを発表しましょうか。タピオカは美味しいですよ、不味けりゃ店の料理が不味いんだって」

    ーーが。
    「おい、お前は何を訳の分からん事をくっちゃべっている。だいたいその者らは貴族ではなかろう。話す価値も無い輩と楽しそうに会話をするとは、節操の無い女だ。お前の様な女が婚約者だなどと、悪夢としか思えんな」
    我が儘坊っちゃんの口害はここでも健在だった。
    不幸中の幸いはその被害者が私で、他の同行者に迷惑はかけていない事くらい……ああ、ダメだ。おじさん達が超お怒りモードだ。
    王子に文句を言うならまだしも、他に苦情が行けばカウンターが……!

    「……王子のご案内中でしたのに、お仕事のお話になってしまいました。……申し訳ございません」
    うん。確かに王族の用事の最中に些事に気を取られる等、場合によっては不敬罪ものの失礼だ。
    但し今回は学校行事として来ていて、私と王子はあくまで班のメンバーに過ぎない。アゼルも王子としてここに居るのではなく、貴族学校の生徒の一員として。
    何より私の婿になったら彼らを治めていく義務があるのに、仕事の話を理解もせず文句を言って領民を怒らせている。

    後ろで影執事は嘆かわしいとばかりに目を伏せ、ローデリヒは「あちゃー」と目元を手で覆い隠し天を仰いでいた。

   「ごめんなさい、また後でね。今、王子に船の案内をしているの。エコノミークラスとツーリストクラスの部屋をご覧いただくのよ」
    私は取り敢えずにこりと微笑んだ。
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