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第七章
癒されない旅路
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「パ○ラッシュ……ボクも疲れたんだ、とても寒いし……眠いんだ」
この乙女ゲームの世界に存在しない、私の前世で有名だった某アニメの台詞なんだけど。私、今とてもこの台詞を口にしたいです。
「やぁ、この度はお世話になります」
「いえいえこちらこそ、ウチのお嬢様がお世話になっております」
現在私達は島に向かう船に乗る為港に来ております。……島に王子以下高位の貴族を島に招くとあって、ウチの影執事も同行する運びとなり。勿論、引率役のローデリヒも私達と一緒に船に乗る。
そうして実現しちゃった、影同士の出会いの場。
双方初対面の挨拶をしてはいるが、実際はどうだか……。
しかし、だ。
既に季節は初夏。真夏の暑さではまだないけれど、半袖を着ていても日向に出ればうっすら汗をかく気温であると言うのに。
この二人、えもいわれぬ冷気を放射していらっしゃる。
……お馬鹿な王子は全く気付いていないけど、ルーベンス嬢は二人の雰囲気に違和感を覚えるのか僅かに怪訝な表情をし、脳筋なイーリスは最近家でこれまで以上に厳しく訓練されている効果か、ピリピリ肌を刺す殺気に顔色を悪くしていた。
この二人、外見年齢は確実にウチの影執事の方が上だと思うけど、実力や立場的にはどうなんだろう?
「ローデリヒ先生、ウチの執事が何か失礼を致しましたでしょうか? その様に殺気をだだ漏れさせる程とは余程の失礼があったのでしょう。事と次第によってはこの場で彼を解雇処分と致しますが、さて、我が執事は一体何をやらかしたのでしょう?」
いい加減寒くて堪らないので思い切り冷や水をひっかけてやった。
「……いえ、何も」
「ならば失礼は先生の方ですか。……私は存じ上げませんでしたが、受け入れ側としては学校に抗議して良い案件だと思うのですが、先生はどの様にお考えですか?」
ニコニコしながらトゲだらけの言葉をぶつける。
「いや、申し訳ない。つい手合わせしたい相手に出会ってしまってね。……お嬢様は彼の事をご存知で?」
「ええ、簡単には。武門の家ではない我が伯爵家本邸では選り抜きの実力者でしょうね。先日の決闘騒ぎの際、私に付け焼き刃でも戦う術を教えてくれたのも彼ですから……。専門ではないので、先生とどちらが上か等の判断はつきかねますが」
ローデリヒはささっと殺気をしまい、へぇ、と面白そうな表情をした。
「成る程、これは確かに相当頑張って貰わなきゃ挽回は難しいねぇ」
「……当家は王に忠誠を誓っておりますが、お嬢様は当家の大事な至宝に御座いますれば。国の宝を粗雑に扱う輩が居れば面白くなく思って当然で御座いましょう?」
「――判断するのはあくまでも王だ。道具に無いはずの意向が介在する余地などあるまいに。だがまぁ、短い間だが世話になる。よろしく頼むよ」
……そして、船は港を出港した。
この乙女ゲームの世界に存在しない、私の前世で有名だった某アニメの台詞なんだけど。私、今とてもこの台詞を口にしたいです。
「やぁ、この度はお世話になります」
「いえいえこちらこそ、ウチのお嬢様がお世話になっております」
現在私達は島に向かう船に乗る為港に来ております。……島に王子以下高位の貴族を島に招くとあって、ウチの影執事も同行する運びとなり。勿論、引率役のローデリヒも私達と一緒に船に乗る。
そうして実現しちゃった、影同士の出会いの場。
双方初対面の挨拶をしてはいるが、実際はどうだか……。
しかし、だ。
既に季節は初夏。真夏の暑さではまだないけれど、半袖を着ていても日向に出ればうっすら汗をかく気温であると言うのに。
この二人、えもいわれぬ冷気を放射していらっしゃる。
……お馬鹿な王子は全く気付いていないけど、ルーベンス嬢は二人の雰囲気に違和感を覚えるのか僅かに怪訝な表情をし、脳筋なイーリスは最近家でこれまで以上に厳しく訓練されている効果か、ピリピリ肌を刺す殺気に顔色を悪くしていた。
この二人、外見年齢は確実にウチの影執事の方が上だと思うけど、実力や立場的にはどうなんだろう?
「ローデリヒ先生、ウチの執事が何か失礼を致しましたでしょうか? その様に殺気をだだ漏れさせる程とは余程の失礼があったのでしょう。事と次第によってはこの場で彼を解雇処分と致しますが、さて、我が執事は一体何をやらかしたのでしょう?」
いい加減寒くて堪らないので思い切り冷や水をひっかけてやった。
「……いえ、何も」
「ならば失礼は先生の方ですか。……私は存じ上げませんでしたが、受け入れ側としては学校に抗議して良い案件だと思うのですが、先生はどの様にお考えですか?」
ニコニコしながらトゲだらけの言葉をぶつける。
「いや、申し訳ない。つい手合わせしたい相手に出会ってしまってね。……お嬢様は彼の事をご存知で?」
「ええ、簡単には。武門の家ではない我が伯爵家本邸では選り抜きの実力者でしょうね。先日の決闘騒ぎの際、私に付け焼き刃でも戦う術を教えてくれたのも彼ですから……。専門ではないので、先生とどちらが上か等の判断はつきかねますが」
ローデリヒはささっと殺気をしまい、へぇ、と面白そうな表情をした。
「成る程、これは確かに相当頑張って貰わなきゃ挽回は難しいねぇ」
「……当家は王に忠誠を誓っておりますが、お嬢様は当家の大事な至宝に御座いますれば。国の宝を粗雑に扱う輩が居れば面白くなく思って当然で御座いましょう?」
「――判断するのはあくまでも王だ。道具に無いはずの意向が介在する余地などあるまいに。だがまぁ、短い間だが世話になる。よろしく頼むよ」
……そして、船は港を出港した。
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