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第七章

影達の共謀

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   アゼルのお馬鹿は日々問題を起こす。
   人様に本格的に迷惑をかける前に私が尻拭いして回っているから、ルーベンス嬢の堪忍袋のカウントダウンメーターの数値は何とか回らずに済んでいる状況だ。
    なのに、アゼル本人や悪役令嬢からは理不尽に文句を言われる。

    当初から嫌々だった日々に疲れ、そろそろ限界が見え始めていた。
    まだ一学期さえ終わらないのに早すぎないか、って?
    いやいや、自分の意思で行きたいと思った進路での話なら私も「そうだよね」って思う。

    だけどさ、私は別の学校に行きたかったんだよ?
    王子の婚約者だって望んでもいなかったんだよ?
    なのに、進路先を強制され婚約も強要された上で、日々やる事と言えば婚約者の尻拭い、それも感謝されるどころか貶される日々。

    「知るか、アホんだらぁ!」
    と全てうっちゃって大声で叫び出したくなっても無理ないと思うんだ。と言うか、その舞台を何処にするか、何時やってやるのが効果的かと考えるのが日課になってきた。

    相変わらず周囲には遠巻きにされ、友達らしい友達も居ない。
    これ、島程精霊の居ない本土の、自然の少ない王都だから良いけど、島での事ならとっくに精霊がボイコットを始めてる段階だと思う。

    ――それを察してか、動いた者が居た、らしい。

    何もない筈の一年一学期、一班毎に別の場所へ合宿に行く話が急遽持ち上がったのである。

    私の班にはアゼル、イーリス、その婚約者ルーベンス嬢。そして引率役のローデリヒ。

   ……いやあぁぁぁぁ!    こんな怖い班嫌だよぉぉ!
   周囲は地雷だらけじゃん、私にストレスで爆散しろと言いたいんですか!?

    だけど、そんな私にニコニコしながらプリントを手渡し「君達の合宿先はココだよ♪」と示された場所は。

   「……コレ、ウチの島じゃない」
    夏休みになるより先に里帰りが決定してしまった。
    勿論、グレストの夏休みはまだ先だから、彼を連れて帰る訳にもいかない。当然ノアも。

   「あ、宿泊先は伯爵邸じゃないよ。たまには庶民の暮らしを知るべき、って事で。島の漁師さんの家にお願いしたからね!」

    ……ああ。うん。これ、アクアの家だよね。確かに広いよ、彼の家は。
    だけど、脳筋の奴にグレストの様なフォローは望めないし、むしろイーリスの同類として妙なはっちゃけ方をしないかとか、アゼルと喧嘩しないかとか心配事が多過ぎて……胃が……本気でお腹がキリキリ痛む。

    ちょ、誰か胃薬プリーズ!

    ローデリヒは何を考えて……!    ああ、あのニヤニヤ顔をひっぱたけたらどんなに気分が良いか!

    他の子は普通に二、三泊の小旅行に行くだけの様だから、こんな苦行を課せられたのは私だけみたい。
    企画者め、覚えてなさいよ!    この恨みはらさでおくべきか……!
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