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第四章

初上陸

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    港とは、基本的に賑やかなものだ。
    流石に軍港は賑やかさのベクトルが違うが、人が多く行き交い、更に多くの荷物が流通する場所。
    漁港では新鮮な魚介を売買する漁師と商人が値段交渉と言う名のバトルを繰り広げ、朝市では商人と客が熱い戦いを繰り返す。

    ――だけど、品物は豊富でも基本田舎のウチと王都の港じゃその規模が違いすぎた。
    ウチが近所の公園のフリーマーケット、こちらは年の瀬のアメ横もかくやと言う賑わい。

   「これが、王都……」
    勿論話には聞いていたけど、これが見ると聞くでは大違いという事か。グレストも珍しく呆けた顔で船の手すりから身を乗り出すようにして、その賑やかな様子に見入っていた。

    大人たちに続いて船を降り、乗り合い馬車を捕まえる。
    ……一応伯爵家なのだから、これがお父様なら迎えの馬車が待機しているのが当たり前なんだけど、私にそんな配慮は為されない。

    荷物が無きゃ別に歩いても良いんだけど、流石に伯爵令嬢が王都の街を歩くとかあり得ないと怒られた。
    その点、グレストは良い。
    最初だし荷物があるから行きの馬車に同乗しているけど、彼は仕事が手空きの時なら普通に出歩いても怒られる事はない。

    馬車から見える街の様子は、東京の人混みを思わせ少し懐かしくもある。……田舎だからね、こんなに人は居ないのよ、ウチ。
    ただ、街並みは立派だけど、景観としてはウチだって負けてない。空気だって島のが綺麗だし。

    これなら、きっとスパも成功するよね?

    そうこうする内に、どうやら目的地に到着した模様。
    そこは島の伯爵邸よりは狭く、しかし近隣の一般住宅と比べれば遥かに広いお屋敷だった。

    爵位のあるお金持ちの貴族の邸宅なんて、それこそ郊外のイ○ン並の広さがあって当たり前の所を、ファミレスのロードサイド店程度の敷地面積しかない。

    そこに建つのは二階建てのお屋敷と申し訳程度の庭。……分かってはいたが、まぁショボい。
    私的には気楽で良いんだけど。

    馬車からさっさと荷物を下ろし屋敷に運び込む。
    人が少ないから、荷物を部屋に運んで貰ったら後は自分で片付ける。
    これは島では「お嬢様がとんでもないっ!」ってやらせて貰えないんだけど、ここでは人手が足りずにやむを得ず目こぼしして貰っている。

    ――いよいよ新生活が始まる。
    三日後に試験、一週間後に合格発表、半月後に入学式がある。
    試験、とは言ってもグレストの行く学校と違い、せいぜいクラス分けの参考値と最低限の足切りが目的の物だから、私なんかは零点でも取らない限りは確実に合格だ。

    あー、面倒臭い。
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