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第三章

レシピ集と店舗計画

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    「キャッサバの量産は目処がついたわね」

    グレストにタピオカを披露して一年。
    数件の農家にお願いして、少しずつ栽培方法を変えてキャッサバを育ててもらった。

    その成果と、世話のしやすさ等情報収集し、一番効率が良さそうな方法を纏めて各農家に広めた。
    結果、キャッサバを育ててみたい農家が手を挙げ集まり、来年の量産はほぼ確実となった。

    「なら、次は商品化したあとのPRを考えなくちゃ」
    キャッサバの生産は農家に任せるしかない。
    私の仕事は畑仕事じゃなく、売り込み方を考える事だ。

    「少なくとも、ある程度食べ方や味を知って貰う機会が必要でしょうね。……初見ではカエルの卵にしか見えなくて、グロテスクなそれを食べろと言われるのは罰ゲームか何かかと思いましたし。……一度食べれば、ハマる人はハマる食材だとも思いますけど」

    ……それは確かにあるな。
   “美味しい”とか“今流行り”と分かっているから手を出すのであって、何も知らなきゃちょっと躊躇われる外見だし。
    「なら、実際食べられる場所と食べ方の情報を得られる場所を作る必要があるわね」

    タピオカに限らず、ウチの他の特産品のPRにも使えるし。

    「……レシピを考えましょう」
    一般家庭に撒く簡易版と、お店で出す最低でも一工夫加えたプロの味と二種類。
    「そして、まずはウチの島で実験して上手く言ったら大陸に支店を出すわ。上手くいけばどんどんチェーン店を増やすのよ」

    ――この計画にはアクアも巻き込むつもりだ。
    勿論、試食係として。

    「おー、うめー!」
    ……が。
    まさかこんなにも使えない試食係だとは思わなかったよ、私。
    「アクア、美味しいと言ってくれるのは嬉しいけど、美味しいか不味いかしか言わないんじゃ試食係の意味がないんだけど?」

    甘い、しょっぱい、辛い、苦い、酸っぱい。
    その加減をしっかり評価してもらわなければ。
    自宅で家族に作るママの手料理じゃないんだ。お金を貰って提供する食事なんだから、不味い物は当然として美味しくなければお客は来ない。

    「……これは美味しいですが、甘いものが苦手な男性には敬遠されるかもしれませんね。逆にこちらは甘さ控えめで美味しいです」
    グレストの食レポは流石だ。そう、これを私は求めているんだ。

    ……ただ。

    「すみません、今日はもうお腹いっぱいです」
    アクアのような脳筋じゃないグレストはアクア程量を食べられない。
    男の子だから私よりは食用旺盛なのだけど、だからこそ食欲の権化みたいなアクアを試食係に抜擢したというのに。

    「お嬢様、アクアはまず教育から始めなければいけないようです。――お任せください、一人前の試食係にしてみせますから」

    その後しばらく、島に度々アクアの悲鳴が響き渡ったとか……。
    グレスト、一体ナニをした!?
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