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第二章

ノアの秘密

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    瞳の色が赤い。
    「え……?」

    乙女ゲームの世界とあって、髪や瞳の色は結構皆色とりどりではあるけど、流石にこんな鮮烈な赤い瞳というのは見た事がなかった。
    ……まぁ、私の場合は島の人間しか知らないから大陸には居るのかもしれないけど。でも私の知ってるノアの瞳の色は確かに碧眼だったはず。

    どういう事が尋ねたいけど、今はその相手の具合があまりに悪すぎる。聞きたい事を一旦飲み込み、もう一度具合を尋ねた。

    「気分が悪いの?    吐く?」
    だけど、ノアは
    「大丈夫、だからとにかく僕から離れて……!    でないと、僕は……!」
    苦しそうに口呼吸を繰り返すその形の良い綺麗な色の唇から覗いた、やけに目立つ犬歯が――
    「ああ、もう……だめだ。我慢……出来そうにない。……ごめんね」

    それまで散々離れろと言っていたくせに、ノアが私をその腕の中に閉じ込める様にぎゅうと抱きついてきた。
    「え、えっ!?」
    お子様とはいえ十分お伽噺の王子様ルックスを持つノアの、これまでに無い突然のスキンシップに慌てる私は安定の喪女クオリティ。
    泣ける……。

    いや、まずノアのこの意味不明な行動について説明を求めよう、と少し考えが落ち着いたと思ったその次の瞬間。

    チクリと肩と言うか首と言うか……何か太い針で刺された様な痛みを感じて思わず顔をしかめた。
    次いで生暖かい湿った感触がその痛みの根元の周囲から、ピチャピチャ水音と荒い吐息共に私の頭を再び混乱の渦に突き落とす。

    何が起きているのか、理解できなくて。

    いや、感覚で自分が何をされているのか頭の冷静な部分では分かっていても、「何で?」「どうして?」と疑問が飛び交うばかりで納得できず理解に至らない。

    ただ、驚きすぎたせいで結界が解けてしまった。
    観客はステージに釘付けだし、私と彼らの間にウチの使用人が自らの身体で目隠しの壁を作り、大急ぎで私とノアを裏へと連れ込み、そのままあれよあれよと言う間に屋敷へ担ぎ込まれていた。

   「私のお肉!」
   「後で届けてもらいますから、お嬢様はとにかく手当てを受けて下さいませ!」

     ぽいぽいと祭りの衣装を剥がされ風呂に放り込まれ、傷をガーゼで隠され首元の隠れる服を着せられた。……自分の事は自分でが常のはずなのに、嵐のようにメイド達に世話をされた私は、何が何だかさっぱり分からないまま。

    「お嬢様、こちらへ」
     案内されたのは伯爵家の家令……この島の統治をお祖父様から申し付けられている、この家の使用人で一番偉い男の執務室だった。
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