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プロローグ

私の幼馴染み

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    「いただきます!」

    炊きたての白米ご飯に、昨日獲れたブリっぽい魚を一晩調味液に漬けたお刺身をたっぷり乗せて、ゴマと生姜のすりおろし、青じそを薬味にいただく漬け丼。
    魚は脂たっぷりで甘く、その脂を良い感じに引き締めてくれる薬味と米粒の相性は言うまでもなく。

    「うまー!」
    お刺身にした魚のあら汁と一緒にかき込む。
    目の前ではアクアも一生懸命食べている。
    「ごちそうさま!」

    そうして食べ終わる頃には船は漁場に到着する。
    海に浮かぶ無人の小島と小島の間に仕掛けられた網や、魚の養殖場を回って海の幸を得る。
    これを一度島に戻って加工品にする。
    それをまた別の、輸送用の船で他の交易品と共に大陸の本国に運ぶのだ。

    「わぁ、今日も大漁ね!」

    流石に体力腕力の要るしごとに、まだ幼い子供の私達は参加させて貰えない。
    大将の息子のアクアも、筋肉自慢のおじさん達の後ろでその働きぶりの見学をして、彼らの仕事を覚えるのだ。

    「いやぁ、お嬢のおかげだよ!    お嬢が来てから釣果が倍近く増えたんだぜ!」
    「ああ、おかげで女房子供にも腹一杯食わせてやれる。お嬢様々だぜ!」
    「私……というよりは精霊様のおかげだけどね」
    「おう、勿論精霊様への感謝は忘れた事はねぇし、お参りだって行ってるけどよ、精霊様が直接的にお願い事を聞いてくれるのはお嬢だけだろ?    ならやっぱりお嬢様々だな」

    船員達に持ち上げられつつ、船はゆっくり港へ戻っていく。徐々に近づく島影の中、我が伯爵家のお屋敷の存在感は大きい。
    ……けど、こうして私が沖の船の中に居る今、あそこに居るのは使用人ばかりだ。

    港に船が着くと、私は魚より先に降ろされる。
   「お嬢、また明日な!」
    けど、船長の息子のアクアはまだ船の上。嬉しそうに手を降っている。
    私の午後はお勉強の時間と決まっている。お勉強も必要な事だと分かってはいるけど……。

    「アクア、貴方も一緒に勉強しない?    ……きっとためになるわよぅ?」
    グレーの瞳をキラリと輝かせながらにっこり笑って誘う。
    「あー、うん。また今度な!」
     が、アクアもニカッっと邪気のない子供らしい笑顔で遠回しに「イヤだ」と主張する。

   「おら、アクア!    検品手伝いやがれ!」
   「――じゃあな!」

   朝、駆け降りた坂道をとぼとぼ歩き、屋敷へ一人で戻る。まぁ、途中町の人の行き来があって、挨拶しながらの道のりだから、一人ぼっちって事はないけど。
    屋敷へ戻ると、昼食が用意されている。
    メニューは……白身魚とポテトの揚げ物。言うなればフィッシュ&チップス的な料理だった。……美味しいけど、ブリの漬け丼と比べるとインパクトは薄い。

     何より、給仕の使用人は居るけど食卓に座るのは私一人だけ。
     寂しいランチの後は、家庭教師とお勉強。
     お勉強の後は、精霊さん達と遊んで日が暮れたらまた一人ぼっちのディナー。

    これが、いつも変わらない私と島の人達の日常。
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