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弐ノ巻

かぐやのお宝鑑定 ― 其の壱 ―

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 「……おやおや、これは――天竺まで行って戻ってくるには早すぎやしませんかね?」
 「いやいや、そちらこそ。常世とは理想郷とも言われる国と聞く。どんな様子であったか、是非にも土産話を聞きたいものよ」

 自分こそが一番手。
 そう信じていたからこそ、まさかの鉢合わせに二人は引きつりそうな表情を取り繕い雅に微笑みながら、チクチクと相手の粗を突き合う。
 その様は非常に醜いもので。

 かぐやを呼びに行った婆様が置いていったお茶を勧める翁は、ようやくかぐやの言った懸念を現実のものとして受け止めた。
 (……確かに金があれば生活には困らんじゃろうが、かぐやを見下す様なお相手では、到底幸せに暮らせるとは思えんのう)

 そして、公達の得た宝物を見極めるべく、婆様に呼ばれたかぐやが姿を表す。

 「これは……、暫く見ぬ内に更に美しくなったのではないか?」
 裳着を済ませたとはいえ、まだ身体の成長は止まっておらず、顔立ちからも子供らしい可愛さが薄れ、娘としての美しさが際立つようになった。
 そして、彼女から滲み出る光が彼女の神秘性を高めていた。

 これを、どうしても我が者にしたいと。
 両者は強く願った。

 「――では、どちらが先に?」
 尋ねたかぐやに、そこは公達同士、身分の弁えから先に王が差し出したのは、古く煤けた鉢であった。

 確かに元は良い品だったのだろう装飾があるのだが、いかんせん保存状態も悪く、商人には買い叩かれそうな、宝物とは思えぬ品だ。

 「……それが本当に仏の御石の鉢なので御座いますか?」
 中納言ですら疑いの眼差しを向ける。

 「姫よ、あの様な明らかな偽物に騙されてはなりませぬ。しかし私はこの通り、本物の蓬莱の玉の枝をお持ちしましたぞ」

 ――それは。金の枝に真珠のついた、それはそれは眩く美しい宝物であった。

 「これは大樹の枝のほんの一本故、銀の根は付いておりませぬが、この見事な金の枝と美しい真珠の実は確かに蓬莱の玉の枝にございます。さあ、お確かめを」

 「では、拝見させていただきます」
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