小料理屋「和膳」へようこそ！

続・その店の名は。

カフェ「和膳」

    ……どうして、こうなったんだろうな。
    俺はもう何度目かも分からない自問自答をする。
    「いらっしゃいませ！」
    賑やかな商店街でもよく響いていた声が新たな来客を知らせる。
    「和君～、ハンバーグランチ２つよろしく～」
    「ハンバーグランチ2了解です！」
    和華の取ったオーダーに反応し、慣れた様子でてきぱきとプレートにサラダとスープを乗せ、成形済みのハンバーグを鉄板に乗せてこちらに寄越す元居酒屋バイト。
    ……新たなメンバーと知り合った頃からは信じられないほど忙しくなった店にこの二人は欠かせない戦力となっている。
    ――それは、いい。
    儲かるに越したことはないからな。
    だが……
    「オーダー入ります、コーヒー1、アイスティー1、アップルパイ2、3番テーブルです！」
    「和君、クッキーサンド3つ～」
     ――何ッでカフェなんだよ！
     魚介類が食べたかったんじゃなかったのかよ！
     そう、目の前の海に向かって思い切り叫びたい。
    ……俺はどこをどう間違ったんだろう。
   ――和華は楽しそうだし、拓海も茉莉さんもまあ満足しているようだけど。
    近くに有名な水族館と、温泉付きのホテルや旅館、魚介類を売りにした道の駅や飯屋の多い分、観光客も多い。
    店はログハウスの様なお洒落な建物で、以前の小料理屋の面影はどこにもない。
    ……今回もここにいつまで居られるか分からない。
    まあたまには仕方ないと思うようにはしてるけどな。
    最近テレビや雑誌の取材申し込みが頻繁にある。当然都合が悪いので全部断っているのだが、これがなかなかにしつこい。
    ……あんまり儲かってはいなかったけど、静かだった小料理屋が恋しい。
    俺は密かに二度とカフェなんざやらねぇと決めて、ハンバーグをプレートに乗せた。
    「ハンバーグランチ２つあがり！」