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第十四章

女帝との交渉

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 食後、今度はカフェにご案内し、お茶とケーキを振る舞う。

 いざ交渉開始である。

 船の設えにイタリアンなご馳走と、“おもてなし”の体を装ったファーストパンチは中々いい仕事をしてくれた様で。

 「改めて。貴女の“お願い”である難民保護についてはお断りさせていただきます」

 そして本題を、すっぱり切り出す。

 「なっ!」

 いきり立つ臣下達。

 「だって、私はあなたの臣下でも、まして領民でもありませんから。
 ああ、保証書類については例の仕事の仕事道具、備品だと思ってますから。無効にしたいならいつでもどうぞ」

 先日助けた小国に頼めば書類くらいは用意してくれるだろう。

 「ぶ、無礼な!」

 「ふふふ、その言葉、そっくりそのまま返すよ。
 私がこの世界に来たのは確かにあなたのせいではないけど、私はこの世界を憎んでいると言ってもいい。
 それでもあなたの頼んできた仕事を受けたのは、そうしなけりゃ、世界ごと私も消えてしまうから。
 そんなとばっちりうけて巻き込まれるのはゴメンだから、自分のために動いているの。
 けど、難民保護は違う。
 見捨てれば私の良心は多少痛むけど、それだけ。
 見も知らぬ、なんの保証もされない人達を受け入れた結果何か私達が不利を被ったら?
 そんなリスクを冒してまで、何で憎らしい世界の住人を助けなきゃいけないの?
 アンタ自身の責任じゃ無いとはいえ、私はこの世界に来た事で全てを失ってるの。
 この世界に来て得たこの船と精霊の力だけが、今の私の命綱。
 アルトも信頼しているけど、最後のところであなたの紐付きだしね。
 だから、今回の話はお断り。本当ならアルトに伝えさせれば終わりのはずなんだけど、そういう理由で報告しづらそうだったからこうして直接断りに来た」

 ケーキと紅茶を全て胃に納め。

 「私の用事はそれだけ。私としてはもう帰ってもらって結構なんだけどね?」

 「……交渉の余地は」

 「さあ、どうだろうね。私が意見を翻しても良いと思えるだけの何か、今すぐ提示できる?」

 「ここは我が国の港。今すぐ軍に司令を出すこともできるのだぞ?」

 「それならそれでこっちも徹底抗戦するよ」

 「……恐れながら陛下。
 この船の装備、我が国の船では到底太刀打ち不可能です。
 話を聞く限り、彼女の世界はこの世界より百……いえ数百年文化文明が進んでいるようで……。
 その世界の技術を元にこの世界の神が用意したこの船は、つまり彼女を武力で脅す事が出来ない、神に阻まれていると考えるべきです」

 「そう言う事。だから今後も、私が協力するのは召喚術云々の仕事だけ。それ以外の仕事は一切受け付けないから、覚えておいて」
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