上 下
126 / 162
第十二章

お祭り騒ぎと変態

しおりを挟む
 王が処刑された翌日。
 新たな王が擁立され、民は臨時に与えられた休日とあって、お祭り騒ぎになっていた。

 商魂たくましい商人達はこぞって屋台を立てて、食欲そそるジャンクな軽食を売り、街は賑わっていた。

 船のレストランの食事は美味しいけど、こういうジャンクなフードはそれとはまた別の美味さがあると思う。

 特に島国だけあって。

 「このイカっぽいの美味しー!」

 魚介は特に美味しかった。

 屋台の食べ歩きをして回っていた。
 ……私、今回特に何もしてないからね。少しでもお金落とすくらいはしないと。
 これだけ美味しければお金を落とす価値は十分あるし。

 「あ、貝も美味しい! 出汁とハーブが……絶妙……!」

 「まぁ……美味いが。よく食べるな、お前」

 「美味しいもの。流石にブクブク太りだしたら気をつけるけどさ、私別に太ってないし、美味しいものは美味しいうちに食べなきゃ勿体ないし」

 そしてその晩。

 先日忍び込んだお屋敷に、今日は正面から堂々と招かれたのだ。

 曰く。

 「君の話を聞いておきたい」と。

 まぁ、又再びこの国に馬鹿な考え起こす輩を生まないためと言われれば行かないわけにもいかなくて。

 ……まさか晩餐に招かれるとは思ってなかった私は気づかれないようにしながらも、頬が引きつって仕方なかった。

 いや、根性で食べきったよ、美味しかったしね?

 お話もちゃんとしてきた。

 この世界の人にもまともな人は居るんだって分かって良かったよ。

 ……その晩、そして翌朝から昼にかけてベッドから起き上がれないくらいお腹パンパンだったけど。

 それを堪えているようで隠しきれずに笑うアルト。

 地味にムカついた。

 そして、いよいよこの国を離れる、その日。

 「ピヨッ!」

 「み、見つけましたよ! とうとう見つけた!」

 ……ひよこを手にしたお兄さんが血走った目で私を指差し大声を上げました。

 「え?」

 この時、船に戻るんでたまたまルイスと舞も居たんだけど。

 「あれ? オッサンあんた確か……」

 「ああっ、変態さん!」

 何事かと注目を浴びていたところにこのセリフが二人の口から飛び出した。

 変態、と聞いて改めて男を見ると、もう変態としか見え様がなくなる鬼気迫るお顔。

 「え、知り合い?」

 「いや、旅の途中でチラッと行きあっただけだよ!」
 ルイス、お前またそれか?

 「私も……」

 その騒ぎに兵が駆けつけ。

 「何、変態? ……君、ちょっとこっちで話聞かせて貰おうか?」

 あっという間に連れ去られていった。

 ……何だったんだ、一体。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

処理中です...