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第十一章
訓練開始
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「それじゃ、ここでしばらく大人しくしてろよ」
港の適当な宿屋にニ部屋借りてそこに勇者と女――アルトが聞いたところによるとこの女は神国の巫女(多分下っ端)で立花舞と言うらしい。
日本人か! と思ったけど違うらしい。
かの国の人の名前は皆こんなだそうだ。
……過去に日本人召喚して何か影響が残ってるとかそう言う話じゃあるまいな?
そう思いたくなるけど、今は。
「行くぞ」
はい、これからアルトのスパルタ講習が始まるのです。
「まずは初級編から。市場で噂話の収集だ」
……まぁ、その位なら。日本でもオバちゃんらが昔ながらの商店街で繰り広げていた光景だ。……小学校位までの頃は。
高校に入る頃には近所にショッピングモールができて商店街もだいぶシャッター街になってたからなぁ……。
「おじさん、この果物初めて見るんだけど、どう食べるの? 甘い?」
まずは手近な果物屋の店主に声をかける。
見た目洋梨ぽい、緑色のひょうたん型、手のひらサイズの果実を指して尋ねた。
「ああ、それかい。一応果物として売っちゃいるが、そのままで食べるやつは居ないね、酸っぱすぎて。けど油や香辛料と一緒にそいつのすりおろしを混ぜて生野菜にかけて食うと美味いんだ、安いしな。だから結構人気はあるんだよ」
つまり、ドレッシングの材料として有用な果実らしい。……レモンみたいな?
「へぇ、初めて見た。この島の特産なの?」
「んー、特産って言う程じゃないが、この島では当たり前にあるモンではあるなぁ。生の果実は外国人さんにはあんまり売れんが……あっちの惣菜屋あるだろ? あそこで売ってる野菜にかけて食べるタレはよく売れるんだ」
「……げふん、げふん」
……おっとしまった、これじゃ普通に買い出しに来ただけの人だ!
「じゃあ、生のままで人気なのは何かあるかしら。あ、これも試しにいくつか欲しいけど。参考にあなたの言うタレも買ってみるわ」
「それならこれだな。皮を剝かなくても食える。……まあ剥いたほうが食感は良いんだが、まぁ分かりやすく甘い果物だ。お陰でよその国に良く売れるんだ。ほれ、試食してみぃ?」
ダイスに切られた一欠けを口に入れる。
食感は和梨――とくに幸水に似て。なのに味はメロンのような。
確かに、甘い。
「えっ、ホントに甘いし瑞々しい……。けどこんなの高そうだけど?」
「それがそうでもない……はずだったんだがなぁ……」
「ん?」
「最近、外人さんには高く売れって訳の分からねぇお触れが出てなぁ……」
困った顔で、店主は頭をかいた。
「けどまぁ、普段使いの果物が給料日直後のプチ贅沢になったくらいの値だ、買ってかないか?」
なんと! 安く買えるはずのこの美味な果物を無駄に値上げしただと?
ふふふ、許すまじ! 日本人の食に対する執着を甘く見るでない!
港の適当な宿屋にニ部屋借りてそこに勇者と女――アルトが聞いたところによるとこの女は神国の巫女(多分下っ端)で立花舞と言うらしい。
日本人か! と思ったけど違うらしい。
かの国の人の名前は皆こんなだそうだ。
……過去に日本人召喚して何か影響が残ってるとかそう言う話じゃあるまいな?
そう思いたくなるけど、今は。
「行くぞ」
はい、これからアルトのスパルタ講習が始まるのです。
「まずは初級編から。市場で噂話の収集だ」
……まぁ、その位なら。日本でもオバちゃんらが昔ながらの商店街で繰り広げていた光景だ。……小学校位までの頃は。
高校に入る頃には近所にショッピングモールができて商店街もだいぶシャッター街になってたからなぁ……。
「おじさん、この果物初めて見るんだけど、どう食べるの? 甘い?」
まずは手近な果物屋の店主に声をかける。
見た目洋梨ぽい、緑色のひょうたん型、手のひらサイズの果実を指して尋ねた。
「ああ、それかい。一応果物として売っちゃいるが、そのままで食べるやつは居ないね、酸っぱすぎて。けど油や香辛料と一緒にそいつのすりおろしを混ぜて生野菜にかけて食うと美味いんだ、安いしな。だから結構人気はあるんだよ」
つまり、ドレッシングの材料として有用な果実らしい。……レモンみたいな?
「へぇ、初めて見た。この島の特産なの?」
「んー、特産って言う程じゃないが、この島では当たり前にあるモンではあるなぁ。生の果実は外国人さんにはあんまり売れんが……あっちの惣菜屋あるだろ? あそこで売ってる野菜にかけて食べるタレはよく売れるんだ」
「……げふん、げふん」
……おっとしまった、これじゃ普通に買い出しに来ただけの人だ!
「じゃあ、生のままで人気なのは何かあるかしら。あ、これも試しにいくつか欲しいけど。参考にあなたの言うタレも買ってみるわ」
「それならこれだな。皮を剝かなくても食える。……まあ剥いたほうが食感は良いんだが、まぁ分かりやすく甘い果物だ。お陰でよその国に良く売れるんだ。ほれ、試食してみぃ?」
ダイスに切られた一欠けを口に入れる。
食感は和梨――とくに幸水に似て。なのに味はメロンのような。
確かに、甘い。
「えっ、ホントに甘いし瑞々しい……。けどこんなの高そうだけど?」
「それがそうでもない……はずだったんだがなぁ……」
「ん?」
「最近、外人さんには高く売れって訳の分からねぇお触れが出てなぁ……」
困った顔で、店主は頭をかいた。
「けどまぁ、普段使いの果物が給料日直後のプチ贅沢になったくらいの値だ、買ってかないか?」
なんと! 安く買えるはずのこの美味な果物を無駄に値上げしただと?
ふふふ、許すまじ! 日本人の食に対する執着を甘く見るでない!
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