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第十一章

小国の長

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 ぐるりと一周、島の輪郭をなぞる様に歩いて、およそ丸一日。

 人の足では無理でも、馬に乗ればそのくらいの時間で一周出来てしまう。その程度の大きさの島。

 それがこの男――醜く肥え太った禿頭のチビ――が治める国の全てであった。

 幸い土地は肥沃で機構も穏やか。故に農作物は良く育ち、海や川の恵みも豊富。

 近隣諸国を行き交う商船の航路も近く、水や食料の補給に立ち寄る船も多く、入港料や補給物資の購入でお金も落としていってくれる。

 過度な贅沢を望まなければ、普通で平凡な幸せが保障された国であったのだが。

 堅実な治世で慕われた先代が倒れ、現王に戴冠すると、外交で大国の優雅な王侯貴族を見た彼は、民に重い税を課し、良心ある優秀な貴族を遠ざけ、欲に塗れた耳障りの良い甘言しか吐かない貴族をそばに置き。

 聖女召喚を行い、大国の土地を手に入れる……そんな夢物語を思い描いた。

 そして戴冠後、実際に側近達に召喚の儀式の準備を命じたのだ。

 ……しかしそこは甘言を吐きながら、いかに仕事をサボるかばかり考えるような側近ばかり。
 なかなか支度は整わず、結局他国に先を越されてしまったのだ。

 あんなに悔しい思いをした事はない。

 そこで無能な部下を排し、新たな人員に再び準備を命じた。

 そして朗報が飛び込んでくる。

 「何っ、失敗!?」

 まだ表沙汰にはなっていない……むしろ召喚の事実さえ民には隠されているので非公式情報なのだが、どうやら失敗したらしいとの報告がなさ!たのだ。

 「ふ、ふははは! よし、今が最大のチャンスだ! さあ、準備を急ぐのだ!」

 それを防がんとする人員が送り込まれようとしている事にも気付かず、男は大いに笑った。

 勝利を、確信して――。
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