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第八章

初のボス戦

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 今日も今日とて。経験値を貯めるべく、ダンジョンに潜り、魔物討伐を行い。

 五層へ降りました、が。

 目の前に巨大な扉が立ちはだかっています。

 階段のすぐ目の前。
 僅か数歩で歩き切れてしまうような極短い廊下。

 そしてアーチ型の両開きらしい古めかしいデザインの扉。

 「えーと、これは……」

 これまでに無いパターン。……この扉に罠が仕掛けられている雰囲気はないけど。
 まあ、ここがダンジョンって事を考えれば心当たりは当然ある。

 「ボス部屋、って事で良いのかな?」

 「ああ。お前にとっては初のボス戦だな。……中ボス的なのは居たが……。まぁ、上層のボスだ、油断せずいけば問題なく倒せるだろう。ただし、油断だけはするなよ? 仮にもボスだ、油断すれば死ぬからな」

 と、釘を刺し、アルトは手を伸ばした。

 扉についたノブは、古めかしい鉄の輪。

 ぎぎぃ……と蝶番がきしみ、壁と擦れる音を立てながら、扉はアルトによって開け放たれた。

 中は暗闇……

 あ、いや、一つ炎が見える。松明程の、灯り用の火が――と、目に留めた次の瞬間、ぼっ、ぼっ、ぼっ、と一定のリズムで次々と明かりの炎が隣へ隣へと増えていく。

 ゲームだったらボス戦専用BGMが流れてそう。

 扉の敷居を跨げば、扉は自動的に閉まった。
 ガコン、と重たい音を立てながら。

 ドーム上の部屋の向こうの半分が明るくなったところで、向かいにある揃いの扉が開いた。

 ……あー、なるほど。これは確かにこの大きさの扉が必要だわ。

 扉の向こうから突進してくる勢いでかけてくる――も、足音は重いが、スピード感が全くない。

 しかしこの洞窟の様なダンジョンに於いてはビジュアル的に良く似合うモンスター。

 ロックゴーレム。

 岩の塊を人の形にくっつけた魔法人形。

 「……あれ、ウオーターボール効くの?」

 試してみる。

 ……十、二十、三十秒。うん、この位は平気で耐えるよね。
 一、ニ、三分……そろそろ苦しくなってくる頃なんだけどな?
 ……五分経った。十分。
 苦しがる素振りは……ないね。

 邪魔くさい水の檻を何とかしようと暴れてはいるけど、苦しそうな感じは見受けられない。

 あー、とうとうここで来たか。
 ウオーターボールでトドメを刺せないモンスターが。

 仕方ないな。水が駄目なら風!
 幸いアレならスプラッターな光景にはなるまい!

 「ウィンドカッター!」

 鋭い風の刃でヤツの関節を狙う――が。

 「やった!」

 ……私、うっかりフラグ立てちゃった。

 「馬鹿! ゴーレムは……!」

 私の戦闘を後ろで見ていたアルトが、叱咤の檄を飛ばしてきた。

 「へ?」

 直後。ふわりと岩が浮き上がった。
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