上 下
75 / 162
第七章

道作り

しおりを挟む
 ザッシュザッシュと剣で草を刈り、ポキポキと邪魔な枝葉を折り、足で道を踏み固めて歩く。

 その幅は、本当に人一人が通れる広さしかない。

 それでも、次に通る時にはかなり楽に歩けるだろう。
 その為に、今は歩みの速度を通常の半分以下にしてでも道を切り拓きながら先へ進む。

 アルトは、迷う事無く。

 けれど私は所見ではすぐに何処を歩いているのか分からなくなりそうな森の中、そもそも知らない場所で、ダンジョンがどこら辺にあるのかも分からないまま進んで。

 「……今日はここまでだな。普通に進めばとっくに着いてただろうが、流石にこのペースではキツかったな」

 まだ日は高いが、天辺からはだいぶ遠ざかり、既に水平線との中間地点まで降りてきている。

 「早めに船に戻る方が良いだろう」

 慣れない場所で、それも暗い中での戦闘はなるべく避けたいところだ。

 私も今日の今日でいきなりダンジョンに辿り着いて早速攻略! ……なんて騒ぐ程ガッついてないし。

 むしろ他にライバルも居ないんだし、安全マージンはたっぷり取った上で、まったり攻略で十分だと思っていたから、

 「うん。……実のなる木も殆ど無いし。……時折見かけるキノコは気になるけど、良く分からないキノコを食べる様な蛮勇はしたくないし」

 そう、ぱっと見は舞茸似のキノコやエリンギっぽいキノコ等もあったけど、明らかに毒キノコっぽいカラフルなキノコも沢山あって。

 こんな医者も薬も無い中でそんな物を口にするリスクは犯せない。

 「……それなら。それとそれは問題なく食べられるキノコだな。そっちは食えば腹を下すが、それ以外に害はないから、量を調整して下剤として用いられる事もあるキノコだ」

 そう思ったのに、アルトはすらすらと知識を口にした。

 「俺は暗殺者だ。毒の知識は豊富にあるからな。
 キノコ以外にも……ほら、そこの草は香に混ぜると甘く良い香りがするが、翌朝には覚めない眠りに就ける毒草だ。
 が、煎じて飲む分には不眠に効く眠り薬になる」

 なるほど、確かにこの分野に於いては結構な知識を持っているらしい。

 「なら、帰り道に食べて問題のないキノコや野草を教えてくれるか。夕飯の材料にしたい」

 アルトは頷くが。
 彼のさじ加減一つで私は毒を口にする事になる。

 まぁ、彼の腕ならそれよりさっさと首でも切り落とすほうが楽な気もするけど。

 夕飯に、野草ときのこと燻製肉のバター炒めを出したら、神妙な顔で食べていたけど。

 何か悩ましげに見えるのは……気のせいか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...