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幕間①

巫女(仮)の旅立ち

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 「ええっ、儀式失敗しちゃったんですかぁ!?」

 素っ頓狂な声を、この静寂に包まれた神聖な場所に響かせた一人の少女は。

 「あいたッ!」
 「声が大きいですよ、まい。これから神王様に謁見すると言うのに、少しは落ち着きなさい」

 「ぶー、だからって頭を叩かなくっても良いじゃないですかぁ……!」
 「はぁ、どうして神はこんな小娘をお召しになったのかしら……」

 そうこうする内に、どうやら目的地についてしまったらしい。彼女を引率する先輩巫女は頭痛を堪えるようにため息を吐いた。

 「良いですか、ここから一歩でも中に入ったら答えを求められた場合以外口を開いてはいけません。禁を破れば当分貴女はお茶の時間のお茶菓子禁止です」

 そのキッパリした口調に、若い巫女はこの世の終わりのような絶望の表情を見せた。

 「良いですか、口を閉じていなさい。そうすれば貴女のおやつは守られるでしょう」
 「……分かりました、黙ってます、喋りません」

 そう誓いを立て、二人はその先へと歩を進め。

 「――その娘かえ、道具との相性が合ったのは」

 「……はい。何かの間違いであってくれと、何度も試しましたが……残念ながら間違いございませんでした」

 「ならば。あなたに託しましょう。これを受け取りなさい」

 侍従を介して手渡されたそれは……

 「杖、ですか?」

 飾り気も何もない、白木の杖。木肌は綺麗に磨かれ、木目も美しいが……

 「それを使い、人探しをして欲しいのだよ」
 「えーと、それは……どなたを?」

 「それを、その杖が示してくれる。その杖をつき、そのまま手を話してご覧」
 そうは言うけど、そんなことをすれば……

 カラン、

 と、音を立てて杖は当たり前に倒れた。

 「ふむ、南南西かの」
 「……え?」

 「その杖はな、探し人の居られる方角に倒れる、いわば神器とも呼ばれる神聖な道具。それを使い、その杖が指し示す人物を見付け、この国へと連れ帰れ」

 「え、えええええ!」
 「はぁ、何故この任務に貴女の様な人物が選ばれたのか。うう、胃まで痛くなってきました……」

 頭と胃を抑えながら、騒ぐ娘を「禁を破ったのでお茶菓子抜きです」と脅しつけながら下がらせる先輩巫女。

 「……やはり、詳細を明かさずして正解でしたな」
 「ああ。まさか神儀に失敗したなど軽々しく口には出来んからな。……だがまぁ、路銀は十分に弾んでやれ」
 「かしこまりました、すぐに手配致します」

 こうして。
 この国では何ら珍しくもない下っ端巫女が旅立――

 「わー、お金が一杯! これだけあれば甘味食べ放題だね! この任務、ラッキーだったわ。先輩の目も届かないなら甘味禁止令なんて無効よね!」

 ……大量の菓子を抱え、口をもごもごさせながら、乗合馬車に乗り込んだ。

 彼女の名は。(下っ端)巫女、立花たちばなまい
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