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第二章

初遭遇

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 2時間サスペンスドラマ御用達にするには少々迫力にかけるが、ゴツゴツした――少なくともこんなボロボロのスリッパであの上を歩けば足の裏はたちまち血塗れになりそうな岩場に、ザッパンザッパンと白い飛沫をあげて波が打ち寄せる。

 台風なんか来たらさぞかし迫力ある画が撮れそうだ。……キャスターやカメラマンの命の保証は出来そうにないが。

 「っちゃー、どうやら方角を間違えたみたいね」

 ここから見渡せる海岸線のラインから、ここが確かにひょうたんのくびれの部分なのは間違いないようだが、砂浜はこの反対側か……

 日も傾き始めている。

 「今日の探索はここまでにするか……」

 取り敢えず岩場の手前の森の入口のちょっとした広場で焚き火の準備を始めた。

 「それにしても生活魔法が使えて助かった……」

 林檎に似た果実を少しだけ火で炙って食べる。
 ……ちょっと酸っぱいが、食べられない事はない。炙ったことで甘みも増したらしく、火によく当たった所ほど甘い。

 バターが欲しくなるけど、まぁ無いものは仕方無い。

 ついでにパンと生クリームも欲しくなるけど、やっぱり無いものは無いからね。

 いつか、人の住む街に辿り着けた時のお楽しみだ。

 そうして食事を終えたら、次は寝床。

 水に浮かべる事は出来ないのだけど……、流石に剥き出しの土の上に、無防備に一人で眠るってのはいかがなものか。

 ならば、と。
 土の上なら例え耐久値を越えて船が消えてもそう困る事はない。

 そう考えて船を出したところ――

 「こらーっ、何でボクを呼び出さないんだー!」
 船と一緒にシャチのぬいぐるみが現れ私に突進攻撃を見舞って来た。

 「うぐっ、」

 攻撃は見事に腹に決まり、ちょっとうえってなった。

 「うるさい、大声出すな、獣に気づかれたらどうす――」

 叱ろうとオルカを捕まえぎゅうと力を入れようとする、その前に――

 「コロロロロ」
 拍子木を幾つも一度に鳴らしたような音。
 そして、茂みをかき分ける音。

 「……うげ」
 ――案の定、おでましなすった。

 スライムでもゴブリンでもなく。

 ここでの正式名称は不明だけど、ゲームやなんかの知識でそれっぽい名で呼ぶとしたら、トレント、あたりだろうか。

 歩く木。
 ホラーちっくなうろが目と口に見える、植物系モンスター。

 慌てて焚き火から火のついた薪を一本掴み、船の中へと避難する。

 え、オルカ?
 奴なら船の座席の下で震えて縮こまってますが何か?

 ……役立たずめ、と思わず睨みつけたくなるけど、今はそんな余裕はない。

 さぁ、戦闘開始だ。
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