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第一章
ステータスの謎
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明らかに不自然にある木の小舟。
しかし、ここで途方に暮れていても遠くなく餓死……
「いや、その前に熱中症で死ぬかな?」
そう。日本の夏のあの酷暑に比べれば幾分かマシではあるが、細っこいヤシの木が作り出す程度の木陰では、強い日差しを防げない。
……日焼けはもう仕方の無いものと割り切るにしたって、暑いから汗もかくし、汗をかけば喉も乾く。
しかし周りには大量の海水はあっても飲み水になる真水は無い。
他に出来る事もないし、こういう時の定番イカダ造りにしたってヤシの木一本じゃあ……ねぇ。そもそも道具だって持ってない。
素人の作ったイカダよりは、まだマシかもしれない手漕ぎボートに、取り敢えず乗り込んでみる。
勿論うっかり沖に流されちゃったりしない様、少しばかり島の砂浜に引き上げてから、ね。
サイズは二人乗り。だけど私は一人だし、なら私が漕ぐしかないなら舳先に背を向けて座らなきゃ。
舳先に近い方に座り、オールの柄を手にした――その時。
ピコン! と電子音の様なアラートが鳴り、続いて「“所有者登録をして下さい”」と、これまた機械の声の様に聞こえるアナウンスが耳に響いた。
「え?」
辺りを見回すと、さっき見たときは確かに無かったはずの、まるでカーナビの液晶画面のような画面が舳先に設置されていた。
まるでここに触れろ、と言わんばかりに画面には右の掌の絵が、背景の画面の色をパッパと入れ替え表示されていた。
……恐る恐る、画面に触れてみる。
「“登録完了しました。ホーム画面へ移動します”」
再び機械の声――音の高さから男性のものっぽいそれが耳に響く。……スピーカーから出る音、ではなくやはり耳に直接響いているらしい。
そして、現れたのはこの手漕ぎボートの3D画像と、文字列。
文字列の方は、このボートの仕様書……と言うか、平たく言うとステータス、と呼ぶべき物の様だった。
◆手漕ぎボート
・木製
・耐久 95/100
・攻撃 1/1
・特殊 無
・所有者 潮谷 晴海
……攻撃、って何だろうね?
手漕ぎボートに攻撃性なんて……、あ、いやこのオールでぶん殴れば素手で殴るよりは攻撃力は増すか。
そして、気になるのは耐久。……これ、既に5程減ってるのは……? そしてコレが0になったらどうなるの!?
だけど。ここで何もせず悩むばかりでは結局死が待つだけだ。
私は一度ボートから降りて、砂浜に上げたボートを再び海に戻し、もう一度ボートに乗り込みオールを手に取る。
さて、手漕ぎボートなんてまともに乗るのは久しぶりだ。
「……ボート部に入ってれば良かったのかな」
そんな事を思いながら、私はオールで水を掻いた。
しかし、ここで途方に暮れていても遠くなく餓死……
「いや、その前に熱中症で死ぬかな?」
そう。日本の夏のあの酷暑に比べれば幾分かマシではあるが、細っこいヤシの木が作り出す程度の木陰では、強い日差しを防げない。
……日焼けはもう仕方の無いものと割り切るにしたって、暑いから汗もかくし、汗をかけば喉も乾く。
しかし周りには大量の海水はあっても飲み水になる真水は無い。
他に出来る事もないし、こういう時の定番イカダ造りにしたってヤシの木一本じゃあ……ねぇ。そもそも道具だって持ってない。
素人の作ったイカダよりは、まだマシかもしれない手漕ぎボートに、取り敢えず乗り込んでみる。
勿論うっかり沖に流されちゃったりしない様、少しばかり島の砂浜に引き上げてから、ね。
サイズは二人乗り。だけど私は一人だし、なら私が漕ぐしかないなら舳先に背を向けて座らなきゃ。
舳先に近い方に座り、オールの柄を手にした――その時。
ピコン! と電子音の様なアラートが鳴り、続いて「“所有者登録をして下さい”」と、これまた機械の声の様に聞こえるアナウンスが耳に響いた。
「え?」
辺りを見回すと、さっき見たときは確かに無かったはずの、まるでカーナビの液晶画面のような画面が舳先に設置されていた。
まるでここに触れろ、と言わんばかりに画面には右の掌の絵が、背景の画面の色をパッパと入れ替え表示されていた。
……恐る恐る、画面に触れてみる。
「“登録完了しました。ホーム画面へ移動します”」
再び機械の声――音の高さから男性のものっぽいそれが耳に響く。……スピーカーから出る音、ではなくやはり耳に直接響いているらしい。
そして、現れたのはこの手漕ぎボートの3D画像と、文字列。
文字列の方は、このボートの仕様書……と言うか、平たく言うとステータス、と呼ぶべき物の様だった。
◆手漕ぎボート
・木製
・耐久 95/100
・攻撃 1/1
・特殊 無
・所有者 潮谷 晴海
……攻撃、って何だろうね?
手漕ぎボートに攻撃性なんて……、あ、いやこのオールでぶん殴れば素手で殴るよりは攻撃力は増すか。
そして、気になるのは耐久。……これ、既に5程減ってるのは……? そしてコレが0になったらどうなるの!?
だけど。ここで何もせず悩むばかりでは結局死が待つだけだ。
私は一度ボートから降りて、砂浜に上げたボートを再び海に戻し、もう一度ボートに乗り込みオールを手に取る。
さて、手漕ぎボートなんてまともに乗るのは久しぶりだ。
「……ボート部に入ってれば良かったのかな」
そんな事を思いながら、私はオールで水を掻いた。
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