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光!走る!

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 緊張した麻那人の顔を見て、光も緊張が走る。

「まずいって……?」

「君の体育着を、着たって言ってたね。ファルゴン、彼女に電話をかけてくれ。散歩に行くのをやめるように言う」

 麻那人の言葉を聞いて、慌ててファルゴンは通話ボタンから発信しだす。

『発信します! 発信しております……出ません』

「出ないか。……媒体がなければ、人間相手に通信魔法は通じないしな……」

 麻那人は、ふぅと息を吐いて顎を撫でる。
 つまりはラーに、魔法を使って話しかけることはできないらしい。

「ねぇ! 私の体育着を着たら、何?」

 光には意味が、全然わからなくてもどかしい!

「体操着を着たことで、君のニオイが彼女に移った。彼女はいつもどこへ散歩へ行く? 家の中にいたり、夜の繁華街ならまだいい。大勢の人間の前で人を襲う能力はない」

「お、襲う!? ……まさか追いかけ鬼に、ラーが!?」

 光の顔が一気に青ざめた。

「そう、君のニオイが着いたら、危険度は50点が90点になる」

「きゅ、90!? ラーは……夜はジョギングするからってスマホは持っていかないかも……」

 前にスマホを落として割って怒られたと聞いた事がある。
 それ以来、家に置いて行くと……。

「ジョギングの場所は?」

「川岸のサイクリングロード。結構暗いんだけど、もちろん一人では絶対に行かないって! マシュマロとお兄ちゃんと一緒だからって……!」

「行くよ!」

 パジャマ姿のままだけど、状況を把握した光。
 麻那人と一緒に、おじいちゃんのステッキだけ持って家を飛び出した。
 
「光!? 麻那人君!?」

「いってきます! あとから話すから!」 

 こんな時間に出かけたら当然に怒られる!

 でも、今はそんなことは、かまっていられない!

 ラーが光の代わり、に追いかけ鬼に襲われる!

 そんな恐ろしいことは、絶対に阻止しなければ!

「ラー!」

 川岸のサイクリングロードは、ここからは遠い。

 そして着いたとしても、サイクリングロードの長さは何キロもあるのだ。
 ラーの家に近い場所を目指しても、一体どこを走っているのか?

 わからない。

 夜の街を、麻那人と走る。

「ハァ! ハァ! ど、どうにかできないの!? 魔法で!!」

「今迷ってる! 僕はもう今日は二回しか魔法は使えない! 居場所を探すか移動に使うか……」

 ファルゴンも短い羽をバタつかせて追いかけてくるが、もう疲れている。

「居場所探して、移動したら!? ハァハァ」

 連続して走り続けていたら、光だってしんどい。

「それはダメだ。もしも追いかけ鬼が現れた時の事を考えたら、一回は残しておかないいと」

「そんなぁあぁん!」

 出会った時は麻那人は悪魔王子の姿だった。
 だから素のままで、追いかけ鬼を蹴りあげられた。

 人間の姿であれば、追いかけ鬼に対抗するには魔法が必要なのか。

 ラーと追いかけ鬼を見つけても、反撃できなかったら全員危ない!
 
 麻那人のいう事はもっともだ。
 
 それに今、魔法で居場所がわかっても、ジョギングをしているラーは更に移動するだろう。

「ハァハァッ!(苦しい、横っぱらが痛いよ……足も痛いよ……でも!!)」

 だからと言って、止まるわけにはいかない。
 大事な友達の命がかかってる!

「光、大丈夫?」

「大丈夫……っ! ハァハァ……! 間に合って……!!」

 光と麻那人は、夜の街を走る走る走る……!!
 
 
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