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闇からのささやき

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 みんなが学園へ向かうなか、一人の少女が公園のブランコに揺られている。
 
 赤いセーラー服。紅炎学園の生徒だ。
 下を向いて暗い雰囲気の女生徒。

 黒くて長い髪は結ぶこともなく、ダラッと幽霊のようにボサッと垂れていた。
 スマホの画面を見ている。

 ゲームをしているようだ。
 何やらドッド絵のキャラが動いている。

 不気味な『死神』というキャラを見つけたようだ。

「やった死神! これで全員処刑!」

 しかしもう、登校時間ギリギリだ。

「あ~あ……学校イヤ……ずっとゲームしていたいのに……ダルい最悪……」

 キィキィ……と小さくブランコを揺らす。
 たまに土を蹴る。
 小学生がキャッキャと登校していくのを見て、舌打ちした。
 
「どうしたの?」

「えっ」

 少女が顔をあげると、蒼いブレザーの美少年。
 まるで妖精か天使ような美しさ……。
 
「えっ……あ、あの……学校がイヤで……」

「学校がイヤなのかい?」

 突然現れた美少年。
 彼は少女に問う。

「う、うん……」

「学校がイヤっていうのは……建築物の話ではないよね……?」

「え?」

「だって、学校はただの建物じゃないか。結局その中にいる人間がイヤなんじゃないのかい……?」

 朝でも温かい風が吹いていたのに、凍るような悪寒を少女は感じた。
 でも、それは気付いた瞬間でもある。

 彼は……自分の理解者だと。

「……そう、そうだよ。あいつらがイヤなんだ……馬鹿なクラスメイト達!」

「じゃあ……そいつらがいなくなってしまえば、いいという事だね」

「そうだけど、そんなの無理でしょ。むしろ私が最近うざいって言われてるし……」

 少女の瞳が歪む。

「君はうざくなんかないよ……僕には君が必要だ」

「えっ」

 美少年から突然言われた愛の告白のような言葉に、少女は驚きで頬を染めた。

「君のその……深い……が、必要だ」

 少女には『深い憎しみと恨み』という部分が聞こえなかった。

「消えるのは、君を傷付ける醜い奴らだろう?」

「う、うん……そうだ」

「そうだよ……じゃあ消しちゃおう」

「消したい!」

「いいね」

「でも、どうやって?」

「僕と一緒においでよ……協力してあげる……」

 少女には、助けにきてくれた白馬の王子様に見えただろう。
 しかしそれは文字通りの『悪魔の誘い』
 
 飛竜蒼玉は少女の手を引いて……どこかへ消えた。
 暗い黒い、淀み穢れが公園に残り広がっていく……。
 
 
 
 
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