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ルームシェア!?そして歓迎会!?
しおりを挟むまさかの理事長の言葉。
ルームシェア!?
これには全員が驚いた。
「ちょ理事長! 妙齢の男女が、大人もいない場所でルームシェアとは……さすがに!」
辰砂が驚きながら言う。
「いいじゃん最高!! 俺は大歓迎! 俺達の家へようこそ~桃花ちゃん☆」
喜ぶ珊瑚。
「俺も嬉しい~~!! お姉ちゃんと一緒だぁ~」
兄と同じく喜ぶ苺。
「地味子と一緒に暮らすだと!? おい! 総長どうすんだよ!!!!」
柘榴が叫ぶ。
「……どうするもこうするも……理事長の決定だ。これが1番だろう。お前ら、しっかり桃花を守れよ」
そうは言うが口元に手を当てて考えるような仕草をする紅緒。
「(紅緒くん……きっと混乱してるよね……)」
桃花自身も戸惑っているが、何故か紅緒がどう思うかが気になってしまう。
しかし次の瞬間、紅緒は二カッと笑って手を叩いた。
「よし! じゃあ桃花! お前の歓迎会をやろう!! 祖父さん、俺が権限をもっていいんだろ?」
「えっ!? わ、私の歓迎会!?」
「あぁ、もちろんだ。桃花さんに関する権限は全てお前に委ねる」
理事長がゆっくりと頷いた。
「俺達はもちろん歓迎するさ。だから桃花、何も心配するな」
「……紅緒くん」
紅緒に微笑まれ手を差し出されて、桃花はつい握ってしまう。
「(今の話はまだ信じられないけど、私達は出会っていたんだ)」
繋がれた手が、また何か思い出しそうにドキドキと心臓を揺さぶる。
紅緒の強いオーラに、寄り添ってしまいたくなる気持ち。
「行くぞ、桃花」
「うん」
ヘルメット前髪とメガネが揺れて、微笑んだ桃花の笑顔に紅緒も微笑む。
「お前ら! 歓迎会の準備だ!」
「「「「おう!!」」」」「はーい!!」
それぞれの反応はあるが、元気いっぱいの四天王と茜の声。
まずは理事長に挨拶をして、また車に乗り込む。
茜もいるので、なんだか桃花の気持ちも不安だけではなくなってきた。
ドキドキするような、ソワソワするような。不思議な気持ち。
「紅緒坊ちゃま、パーティーのメニューはどうします? ケータリングでシェフを部屋にお呼びしますか?」
夕子さんが歓迎会の食事について紅緒に聞いた。
「(ケータリングってなんだろう??)」
ケータリングとはシェフや調理人を家に呼んで出来立ての料理を味わえるサービスだが桃花はもちろんわからない。
「そうだなぁ……桃花は何が食べたい? なんでもいいぞ」
「えっ、わ、私はなんだろう……」
今日は給食ランチも豪華で、先程ケーキもご馳走になった。
紅緒も四天王も全てペロリと食べてしまったのに、みながそれぞれ夕飯に何を食べるか考えている。
「じゃあ、これからの生活も考えてスーパーに行くか。桃花が何が好きかもわかるしな」
「う、うん!」
スーパー!
桃花もよくお母さんと村に一軒あったスーパーに行っていた。
昔は週末に隣町まで通っていたが、桃花が小学校に入る前にできたスーパーで村の人達はすごく喜んでいたのを覚えている。
「(あの頃、急に村の生活が便利になった! と皆が喜ぶ出来事が沢山あったけど……まさか飛鳥財閥と関係はないよね……?)」
茜もその頃、村にやってきた。
もちろん偶然ではないのである。
不死鳥の巫女の桃花が村で不便になったり、村を出て遠くの町へ行く必要がないように飛鳥財閥が全て手配したのだ。
「え……ここ、スーパー?」
「そうです。桃花お嬢様、こちらで買い物をして皆さまの日々のお食事を作らせて頂いております」
「うっひゃーデパートじゃんね? 桃」
「うん、すごい」
そして桃花の思うスーパーとは予想を遥かに超えた大型スーパーに着いた。
茜の言うようにスーパーというよりはデパート。
高級デパ地下のように有名惣菜屋が並び、食品も多種多様なものが置かれ店内が輝いている。
「よっしゃーー!! 総長! 俺、パーティーグッズ探してくる!!」
「あ、いいなぁ~僕も行く~!!」
柘榴が飛び跳ねて、苺と一緒に行ってしまった。
「姫、パーティーでの食事は、何が食べたいですか?」
「ひ、ひめ!? 辰砂さん、やめてください!」
突然の姫呼びに戸惑う。
「貴女は俺達にとって姫なのだから、こう呼ぶのは礼儀だと思います」
メガネをクイッとかけ直す辰砂。
どうやら姫呼びは変えるつもりはないようだ。
「あー! マダムケイクがある! チョコケーキ買おう! 私行ってくるね~!!」
茜が言った先にあるケーキ屋さんは確かに、茜と二人でテレビを見ながら『食べてみたいねぇ』と言っていたケーキ屋さんだ。
「じゃあ女子が喜びそうなオードブルでも俺、見てくるわ☆」
「そうだな。俺も行こう。柘榴達からピザやチキンの希望のメールがきた。買ってくる」
珊瑚と辰砂が行ってしまって夕子も二人についていく。
気付けば荷物持ちとして運転手さんも着ていたが彼も夕子の後を着いていく。
スーツ姿でも筋肉隆々なのがわかる。
「(ボディーガードっぽい……ううん、ボディーガードなんだよね。みんな御曹司なんだもの)」
「桃花」
声をかけられ紅緒と二人きりになった事に気が付いた。
まわりは買い物を楽しむマダムでワイワイ賑やかだけど、二人っきりだ。
「何か心配か?」
「あ、うん……あの……お金って大丈夫なのかな?」
学費や寮などは一切心配しなくていいと、理事長に伝えられた。
でも今回のパーティーもなんだかすごくお金がかかるんじゃ? と桃花は気になってしまうのだ。
「もちろん。パーティーなんだし気にする必要はないよ」
「いいのかな……」
「いいに決まってるだろう。桃花もこれからチームの一員だし修行や儀式やら、みんなのために頑張ってれば、しっかり報酬はあると思うから気にするな」
「えっ!? 私も!?」
「ま、その辺はまた理事長の秘書からでも説明があるだろう」
報酬なんて考えもしなかった。
「(私の想像をはるかにこえる世界だ……)」
「好きな食べ物はないのか?」
「えーっと……好きな食べ物は……」
桃花の好きな食べ物は普段は誰も当てられない。
「お母さんの作った唐揚げと卵焼き?」
「え! な、なんでわかるの?」
「なんとなく」
小さな頃から大好きなお母さんの唐揚げと卵焼き。
最近はなんだか恥ずかしいから『お母さんの』とは言わないが、お母さんの味付けはどこの唐揚げよりも美味しいと桃花は思っている。
それをどうして、紅緒は知っているのか……。
さっきは覚えていないと言ったが、色々と思い出してきている?
「美味いんだろうな~母さんの唐揚げと卵焼き」
馬鹿にすることもなく、紅緒は優しく笑う。
その笑顔を見ると桃花も微笑んでしまった。
「私も、ちょっと料理を習ってて……卵焼きなら作れるかも」
「まじか、すごいな。今度作ってくれよ」
「うん、まだ巻くのヘタだけどね」
「いいじゃん。楽しみだ」
「(なんだか……不思議。怖いと思った気持ちなんかなくなって……紅緒くんと普通に話をしてる。男の子って苦手なのに……不思議)」
不思議な感覚に包まれながら、店内を歩いていると綺麗な色とりどりの花が揃った花屋の前を通り過ぎた。
「わぁ……! 綺麗!」
つい立ち止まって眺めてしまう。
「……花が好きか?」
「うん! えへ、私の名前にも桃と花って漢字が入ってるし小さな頃から好きなの」
「……あぁ、そうだな……」
紅緒の返答が、やっぱり知っているというような優しい微笑みだった。
花畑に二人……一瞬、そんな幻が見えた気がした。
「飾る花を買おう」
「えっ……」
「薔薇や百合、芍薬なんかも豪華で綺麗だが、桃花が好きなのはガーベラやカスミ草かな」
「ど、どうしてわかるの?」
「わかるさ。すみません、花をもらえますか?」
学ラン姿、それも長ラン姿の美少年に話しかけられた店員さんは驚いたようにして紅緒の注文を聞いている。
「プレゼントですか?」
「そう。俺の隣にいる女の子に」
「まぁ、素敵~~いいですね~~」
サラッと言うので、桃花だけではなく店員さんまで頬を染めている。
紅緒が選んだ花。
それが全部、桃花の好きな花で好きなアレンジで、とても可愛い花束が出来上がった。
「どうだ?」
「……すごく可愛い」
可愛い花束を渡された。
「あ、ありがとう……! とっても嬉しい……です」
「あぁ。……さってと、あいつらパーティーの準備できたかな」
男の子に花をもらう。
初めてなのに、懐かしい。
不思議な感覚がずーっと続いている。
そして総長飛鳥の周りには、四天王や茜が沢山のご馳走とパーティーグッズを持って集合したのだ。
盛りだくさんの転校初日はまだ続く……!!
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