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第三話
3−3 特別なお返し
しおりを挟む──待て待て!! 本当にここで合ってるのか!?
到着した場所は、なんとラブホテルだった。
今までの人生の中で、このような場所に来た経験はない友渕だが、ここがどういう目的で来る場所なのかという知識はある。
どうやら駐車場から誰とも顔を合わせずに、部屋に入れるタイプのホテルのようだ。先を歩く陽一郎についていく形で、友渕は意を決して中へ入る。
落ち着かずにキョロキョロと周りを見渡す友渕は、この建物の中では完全に浮いていることだろう。
駐車場には他にも車が何台か停まっており、いくつか部屋は埋まっているようだ。埋まっている部屋の中で、おそらくカップルがセックスをしているのだろう。
自分たちがそうなることを想像し、友渕は頭が沸騰しそうになる。
──もしかしなくても、ここってあの動画が撮影された場所じゃないか!?
部屋の中に入り、大きなベッドを見た瞬間。見覚えのありすぎる光景に、友渕は驚きのあまり言葉が出てこない。
そして何度も動画で見た陽一郎のあられもない姿が、友渕の頭の中で再生される。
『そういうこと』になると、確定したわけではない。だが場所が場所だけに、期待するなという方が難しいだろう。
「……さん、友渕さん」
「ひゃい!?」
「すみません、驚かせちゃいましたね」
肩を叩かれ、友渕は大げさにリアクションをしてしまう。陽一郎の呼ぶ声が耳に入らないくらい、思考が性的な妄想でいっぱいになっていたようだ。
「友渕さん、あの動画は見てもらえましたか?」
「……っ!! う、うん」
ついに触れられた、例の動画についての話題。
「あの動画も、そして今日ここに来てもらった理由も、いつも応援してくれている友渕さんに『特別なお返し』がしたかったからなんです」
「特別なお返し……?」
陽一郎を一番応援しているのは自分であると、友渕は思っている。
単なる『推し』というだけではなく、もはや生きる意味を陽一郎に与えてもらっているといっても過言ではない。そのため、自分の応援に対して『お返し』を貰うということに、友渕は違和感を覚えてしまう。
「俺、陽一郎くんのことを応援したくて……。陽一郎くんにお返しを貰うなんて、そんな……!」
「友渕さんなら、きっとそう言うだろうなって思ってました。でも、俺がそうしたいって思ったんです。だから今日は、俺のお願いを聞いてもらえませんか?」
「……っ!!」
推しにここまで言われて、断る人間はいないだろう。
「もちろん! 俺で良ければ……」
「……友渕さんじゃなきゃ、駄目なんです」
「へ?」
「いえ、何でもないです」
ボソリと呟かれた陽一郎の言葉を聞き取れず、友渕は聞き返そうとする。しかし車の中の時と同じように、はぐらかされてしまった。
『特別なお返し』とは一体何なのだろうか。
そのことで頭がいっぱいになってしまった友渕が、口を開こうとした瞬間。陽一郎がニコリと微笑みかけてきた。
「友渕さん。これからすることは、友渕さんと俺だけの秘密です」
「っ……、う、うん……!」
裏チャンネルのアドレスを知った時の手紙と同じような、何かが起こることを予感させる陽一郎の言葉に、友渕は首を何度も縦に振る。
その様子が面白かったのか、陽一郎は肩を震わせながら、着ているTシャツを脱ぎ捨てた。
「あ、ええ!!? よ、陽一郎くん!!?」
陽一郎の突然の行動に、友渕は顔を真っ赤にしながら叫んでしまう。
水着姿のブロマイドなどでは見たことがあった、陽一郎の逞しい肉体。その鍛え上げられた筋肉は、友渕の心を掴んで離さない。
目の前で見ることができた幸せと、欲望とがないまぜになり、友渕の視線は釘付けになってしまう。
──陽一郎くんの半裸を、生で見れる日が来るなんて……!! ああもう俺今日幸せすぎて、どうにかなるのでは!?
「友渕さん、俺の胸筋……触ってみますか?」
「……!! さ、触りたい!!」
見るだけでなく、触れることもできるとは。
友渕は両手でそっと陽一郎の胸筋に触れる。むっちりとした弾力があり、少し指の力を入れると沈むくらいに柔らかい。
「ふあぁぁ……これが陽一郎くんの雄っぱい……!」
「はは、勢いがすごい。……嬉しいな」
最初は恐る恐るといった様子で触れていた友渕だが、段々と手のひら全体で揉み込むような形で堪能してしまう。
このようなことをしていれば、友渕の欲は増すばかりだ。その証拠に、友渕の陰茎はガチガチに勃起して、穿いているチノパンに締め付けられて痛い。
──このムチムチ雄っぱいに、バキバキに勃った俺のちんこ挟んで、パイズリしてほしい!!
触るだけでは飽き足らず、そのようなことまで考えてしまう。
そんな時、ふと指が乳首を掠め、陽一郎がピクリと身体を震わせながら声を上げた。
「んっ♡」
「っ……!!」
思いがけず耳に入ってきた声に、友渕は思わず見上げる。視線の先には、頬を染めつつ口元を手で押さえ、視線を逸らす陽一郎がいた。
そんな表情を目の当たりにして、友渕の理性の糸はあっさりと切れてしまう。
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