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第十七話
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リハビリも頑張ったし、必死で普通の生活に戻れるように努力した。
それも、全て普通の生活を送る為で、また化け物の餌になる為じゃない!
確かに、アル兄ちゃんと田辺を比べたらいけないかも知れないけど…。
けど、同じ化け物で…、やってることは一緒なのだ。
人間から血を吸って生きる。
食事と言って問答無用に魅了をかけて自分を錯覚の『好き』にさせてSEX
を強要する。
苦しみも、痛みも、勝手に快楽に置き換えて。
嫌でも感じる身体にさせられる屈辱はきっと化け物には分からない。
「もう…いやだよ…」
ただ悲しくて、こんな惨めな人生にどうして未来に希望が持てるというのだろう。
部屋にただ一人残されるとまた眠るように横になった。
もう、なにもしたくなかった。
田辺は翼を広げると空へと舞い上がった。
食事と言っても浅田より美味しい血はなかなかない。
一度、美味しいと感じてしまうと他では我慢できなかった。
「どうすっかな~…」
実家へと向かうと地面へと降り立った。
玄関を通ると母親が顔を出してきた。
「あら?久しぶりね~お父さんはいないわよ~」
「ん~今度はどんな仕事に手を出したんだ?」
「交易関係だって~、せいがでるわよねーでも、そろそろ儀式があるから唯も
こっちに居なさいね~」
母は化粧をしておめかししたまま話しかけて来ていた。
「あのさ…俺、契約したい子ができた…」
「あらっ…それはいい知らせね!今度連れて来なさいよ。歓迎するわ♪」
「う、うん…」
「一生の伴侶を見つけるとわね~、まだまだ子供だと思ってたけど~」
母は嬉しそうにしてくれた。
「そういや、儀式って始祖様のだっけ?」
「そうそう。本当は数年前に始祖様が復活してたんだけど、ちょっと身体に
馴染む前に狩られちゃったのよね~。今度こそちゃんとした入れ物に定着
出来るといいわね~」
「ふ~ん、その入れ物って?」
「今、お父さんが作ってるわ。」
「安上がりなんだね~」
ごつんと小突かれる。
「そんな事言うんじゃないの!私達と違って始祖様は死んでも私達の様な混血
さえ生きていればいつでも復活できるんだから~私達みたいに死んだら終わ
りなのとは違うのよ!」
「はいはい…」
「今回は人間の中に特殊な子がいるみたいで、始祖様がマーキングしておいた
らしいのよ。なんでも先祖帰りで人間なのに血が濃くて美味しいらしいのよ」
「ふ~ん、血が濃くてね~…」
田辺は何の気なしにいいながら自分の部屋へと向かった。
しばらく来ていなかったけど、なにも変わっていなかった。
「あいつ一人で大丈夫かな…」
使い魔を付けて置いてはあるが心配なのは変わらなかった。
血の契約を結んでしまえばある程度心配は要らないがそれまでは気が抜けない。
父の書斎へと入ると土型で人形が造られていた。
そこには人間の臓物やその他の部位がホルマリン漬けにされて保存してあった。
「こんなもんで造られる紛い物の身体なんてな~…」
田辺は何の気なしに書類を眺めると最近見たばかりの契約陣を見つけた。
それは始祖様の復活に欠かせないものだった。
そしてそこにある紋様…それは浅田恵の身体に浮き出たものと酷似してい
たのだ。
「まさか…まさかだよな…」
窓を開けると飛び出した。
翼を広げ一気に空へと上昇する。
今すぐ確認しなくてはならない。
そう、手遅れになる前に…もし、本当なら取り返しがつかなくなら前に。
それも、全て普通の生活を送る為で、また化け物の餌になる為じゃない!
確かに、アル兄ちゃんと田辺を比べたらいけないかも知れないけど…。
けど、同じ化け物で…、やってることは一緒なのだ。
人間から血を吸って生きる。
食事と言って問答無用に魅了をかけて自分を錯覚の『好き』にさせてSEX
を強要する。
苦しみも、痛みも、勝手に快楽に置き換えて。
嫌でも感じる身体にさせられる屈辱はきっと化け物には分からない。
「もう…いやだよ…」
ただ悲しくて、こんな惨めな人生にどうして未来に希望が持てるというのだろう。
部屋にただ一人残されるとまた眠るように横になった。
もう、なにもしたくなかった。
田辺は翼を広げると空へと舞い上がった。
食事と言っても浅田より美味しい血はなかなかない。
一度、美味しいと感じてしまうと他では我慢できなかった。
「どうすっかな~…」
実家へと向かうと地面へと降り立った。
玄関を通ると母親が顔を出してきた。
「あら?久しぶりね~お父さんはいないわよ~」
「ん~今度はどんな仕事に手を出したんだ?」
「交易関係だって~、せいがでるわよねーでも、そろそろ儀式があるから唯も
こっちに居なさいね~」
母は化粧をしておめかししたまま話しかけて来ていた。
「あのさ…俺、契約したい子ができた…」
「あらっ…それはいい知らせね!今度連れて来なさいよ。歓迎するわ♪」
「う、うん…」
「一生の伴侶を見つけるとわね~、まだまだ子供だと思ってたけど~」
母は嬉しそうにしてくれた。
「そういや、儀式って始祖様のだっけ?」
「そうそう。本当は数年前に始祖様が復活してたんだけど、ちょっと身体に
馴染む前に狩られちゃったのよね~。今度こそちゃんとした入れ物に定着
出来るといいわね~」
「ふ~ん、その入れ物って?」
「今、お父さんが作ってるわ。」
「安上がりなんだね~」
ごつんと小突かれる。
「そんな事言うんじゃないの!私達と違って始祖様は死んでも私達の様な混血
さえ生きていればいつでも復活できるんだから~私達みたいに死んだら終わ
りなのとは違うのよ!」
「はいはい…」
「今回は人間の中に特殊な子がいるみたいで、始祖様がマーキングしておいた
らしいのよ。なんでも先祖帰りで人間なのに血が濃くて美味しいらしいのよ」
「ふ~ん、血が濃くてね~…」
田辺は何の気なしにいいながら自分の部屋へと向かった。
しばらく来ていなかったけど、なにも変わっていなかった。
「あいつ一人で大丈夫かな…」
使い魔を付けて置いてはあるが心配なのは変わらなかった。
血の契約を結んでしまえばある程度心配は要らないがそれまでは気が抜けない。
父の書斎へと入ると土型で人形が造られていた。
そこには人間の臓物やその他の部位がホルマリン漬けにされて保存してあった。
「こんなもんで造られる紛い物の身体なんてな~…」
田辺は何の気なしに書類を眺めると最近見たばかりの契約陣を見つけた。
それは始祖様の復活に欠かせないものだった。
そしてそこにある紋様…それは浅田恵の身体に浮き出たものと酷似してい
たのだ。
「まさか…まさかだよな…」
窓を開けると飛び出した。
翼を広げ一気に空へと上昇する。
今すぐ確認しなくてはならない。
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