サバイバルゲーム

秋元智也

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囮は騒がしく

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しかし、リーダーが撃ったのは1発。
「・・・敵が近くにいる?」
「離れろ!すぐにだ!」
リーダーの男は女性を引っ張ると茂みへと、そして崖際の方へ行ったもう一人の連れにも注意をうながす。
上の方で何かが光ったと思った時には茂みにいたリーダーの脳天から血が吹き出していた。
ドサッ。と後ろに倒れるのをただ見ていた女性はもう一人の男の方へと駆け出してしまった。
しかも、上から丸見えの方へと。
現状に気づいた時には遅かった。動いているにも関わらず正確に急所を狙ってくる。
頭を撃たれてはどうしようもない。心臓なら防弾チョッキが守ってくれるがそれ以外はどうしようもない。
「戻れ、バカっ!こっちにっ・・・」
言葉をいい終えないうちに今度は男性が倒れる。たったの1発だ。
恐怖でパニックになっていた。
「きゃあああああああーー死にたくない。死にたくないよ。」
周りに自分の位置を知らせるように泣きながらその場に座り込んだ。
「いやっ。嫌だよう。皆死んじゃったー。死にたくない。助けてよー」
さっきからずっと騒いでいる。
それを上から見ていた紗耶香は舌で乾いた唇を舐めるとしばし見守っていた。
「ここ、渇くわね。リップでも欲しいわ」
香奈はその様子に呆れたように話しかける。
「彼女は囮かしら?」
「いい囮になるでしょう?動かないし、叫んで場所も教えてるしね?」
「いい趣味とは言えないわね?」
「それはどうも。これも戦略と言ってよ。これは実践よ。」
「わかってる。だから止めないわ!」
そう言うと香奈は誰にも聞かれないように溜め息を漏らす。
こんなことは優には見せられないわね。と。あいつは正義感だけは強いから。
こんな戦いは好まない。それが例え敵であったとしても。
しかし、現実は違う。どんなことをしても勝ち残らねばならない。
それを一番わかっているのは紗耶香と澪なのかも知れない。
私たちはまだまだ甘いのかも。それでもそこまで冷酷になれなかった。
見ていられなくて反対側を見張ると言ってそこを離れた。
後ろでは『お楽しみはこれからよ』と鼻歌混じりの紗耶香の声が聞こえていた。


「助けてえー。誰か、助けてよ。お願いよー」
一人で話続ける女に気づいた者が段々と距離を狭めて近づいていた。
女の周りでは銃撃で倒れたいくつかの死体が転がっていた。
全く気づかないのを良いことに真後ろまで来ていた。
『助けてやろうか?』
声に反応して振り替えるが何を言っているのかわからない。
「何?私も殺すの?殺るならさっさとしなさいよ!」
いきなり怒鳴り散らす女の口を塞ぐと地面に叩き付けた。
「ぐふっ・・・」
痛みでおとなしくなったのを確認すると一人の男が両手を拘束した。
何をしようとしているのかを悟った瞬間顔色が真っ青になっていく。
イヤらしい笑いを浮かべながら手が延びてくるのを止めることは出来なかった。
こんなことなら早く殺してくれと願った。
すると、服に手をかけようとした男性がいきなり血を撒き散らして倒れた。その流れ弾が女性の足にも貫通する。
「あああっーー」
『誰だ?そこにいるのか?この女はどうなってもいいのか?』
一気に捲し立てるように言葉を話すが周りは静かなままだった。
『どこに隠れていやがる?』
それを見ているのは真上であってそこにはいない。
紗耶香は舌打ちをしながら銃を構える。
「外道は外道らしく退場しなさいよね」
そういい放つと引き金を引いた。
パシュ。パシュ。
煩く騒いで囮にしていた女も一緒に留目を刺しておいた。
「悪かったわね。あんな外道にヤられるよりは死んだ方がマシよね?」
一人言を言うが聞いている人は居なかった。


香奈は次のエリアがどこになるかを確認するために一人マップを出して確認していた。
偶然か、今いるエリアが中心地になっていた。
「あらっ?どんぴしゃね。」
『皆、聞こえてる?次のエリアもここが入ってるわ。このまま行けばこの場所を守れば行けそうよ。くれぐれも油断はしないでね。以上』
「「了解」」
各々が返事をして指示に従う。
家にいる美弥からまたもや敵の接近がもたらされた。
香奈は家の裏手に回ってこちらに近づくやからがいないか確認をする。
澪と美弥の交戦の銃声はこちらまで聞こえてくる。
家の中では4人の侵入者に苦戦を強いられていた。
今回の侵入者はとにかく用心深く、一人、一人がとにかく距離を取る上に、前の人間が見えるギリギリのところにもう一人がいると言うように一人が殺られればすぐに次の人員が場所を把握して攻撃してくるのだ。
最初はすぐに一人を仕留めようと澪が撃ち始めたのだがすぐにもう一人が飛び込んできたので窓を割って外に飛び出た。その時に多少の被弾はしたが、すぐに裏手に回って回復キットで回復するとまた、家の中に入った。美弥はそれを影で見ていると二階にこっそりと上がった。
「澪、聞こえる?二階に上がった。あなたは一階で待機。上がっていったら一階の階段の下に目立たないようにスタンを設置しておいて」
「うっ・・・了解」
さっきの失敗で危うく死にそうになったので流石に自分も行くとは言えなかった。
さっきはそのまま、外まで追いかけられていたら危なかった。
しかし、侵入者は追いかけて来なかった。それに、最初に撃った奴も死んではいなかったらしく、4人健全だ。
「くそっ、次は外さない」
慌てて撃ったせいか正確に当てれず頭を掠め、脇腹と腕を撃ち抜くにとどめてしまった。
狙うは常に一発で仕留めれる頭を、と思っていたのに・・・悔しい気持ちを押さえながら4人が上に上がるのを待った。
二階も広いため、多分二階の階段の所に一人の見張りと各部屋に別れて一気に行くだろう。さっきの一階もそうであったようにだ。
しかし、美弥はどうやってこれを凌ぐのか?疑問ではあった。
一人は仕留められても、すぐにその部屋に3人も駆け込まれては人溜まりもないではないか?
澪は考えながら言われていたスタングレネードを静かに設置するとその場を離れた。
二階の美弥はベランダのある南向きの部屋に隠れていた。階段を上がってくるみしみしという微かな音に耳をそばだてながら、部屋に来るのを待つ。
廊下で何か指示が聞こえてから、一斉にドアが開いた。隠れているためすぐには見つからず、部屋を散策し始めた。そして丁度敵が後ろを向いたとき風が舞い踊りカーテンを揺らす。その後ろから美弥はカーテン越しに正確無比な弾丸が敵のこめかみにめり込んだ。
たったの一発だった。サプレッサーをつけていたので敵の倒れる音だけが辺りに響く。
ドサッ。という音を聞く前にベランダへ出ると隣の部屋のベランダにジャンプした。隣の部屋では物音に驚き入り口に向かおうとしている姿が見えた。
「背後ががら空きよ」
M249を構えるとまたもや脳天を狙い済ましたかのように当てる。
「これで2人目」
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