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第十一話 歴史は再び

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その頃城では、王の間に皇子が呼び出されていた。

「どうであった?順調か」
「はい。聖女と共に森を抜けダンジョンへと向かった様子です。
 ただ…問題なのは…」
「何かあったのか?」
「連れていた奴隷女も連れて行ったのが惜しまれます。置いていって
 くれれば俺の部屋で可愛がってやれたというのに…」
「今度招いた時にそう指示を出すとするか?」
「そうしていただけると…どうせ長くは生きられない女です。勇者の
 力の根源となり死にゆく身の上ならせめて楽しい事でもさせてあげ
 るのが皇子たる役目でしょう。時期国王に抱かれるなどこれほどの
 名誉はないでしょうから」
「わしもその時は付き合うとしようかの…」
「王妃が悲しみますよ?」
「たまには若いのも味見をせんとな。それに可愛い顔をしておったしな」

皇女はその下世話な会話を聞きながらその場を立ち去っていった。

「嘘で塗り固めた歴史なんて…勇者様…ごめんなさい」

事実を知っていても、立場上話すことはできない。
いっそ、全部打ち明けてしまえたらどんなにいいか。
勇者の伝承と、その真実を…。

これまでの勇者がたどった末路。
そしてこれから、何が起こるのか…を。

魔王はきっと倒せるだろう。
しかしその犠牲になる運命は変えられない。

今回も狂ってしまわなければいい。
ただ、そう願うだけだった。

手元に置かれた日記には最後のページに赤黒いシミが残っている。

異世界から召喚されて、気が狂ってしまった歴代の勇者の日記には色々
と書かれていた。

それを知っているのは王族のみ。
だが、これを打ち明けてしまえば、魔王討伐へは決して行かないだろう。
それ以上に勇者であることを辞めてしまうかもしれないほどの重要な事が
書かれていた。

歴代の勇者は誰もが姿を消したとあるが、そうではない。
魔王を倒したあとに、気が狂って人前に出せなくなってしまったのだ。

それでも、前回の勇者は逃げ出しどこかでの垂れ死んだと聞かされた。
一体この世界は、なんの為に作られているのだろう。
リアナ皇女はただ、願うだけである。

今度の勇者様こそ幸せになれる事を…。
狂って死を選ばない事を…。

城の中では陰謀が渦巻いているのだった。


「仕方ありませんわ。私の方で次の情報を探しておかなくてはなりませんね」

他の武器が安置されているダンジョンを昔の資料から探すと場所とそこの情報を
まとめて教会の方へと送る為にせっせと探しているのだった。
教会にある情報はここで皇女が調べてまとめられたものであった。

皇女の仕事はまだまだ大変である。
知られぬところで資料室に籠ると地道な作業に今日も明け暮れるのだった。
兄は遠征という名目でまた見知らぬ女性が部屋へと行き来する。

踊り子という派手な女性だ。
夕餉の宴で踊りを披露すると夜にはベッドに一緒に入っていく。

飽きればいつのまにか裏路地で奴隷商へと売り払われている事が多い。

気に入った女性を見ると手当たり次第ナンパして連れ込む。

皇子という立場上誰も拒む者などいなかった。
そのせいか、夜の事情は派手になっていく。

妹に手を出さないのは家族だからか、それとも国王の手前なのか?
それとも、好みではないのか…?

まぁ、女癖の悪い兄にはなんとか退場してほしいところであるが、弟を立てる
訳にもいかない。
なぜなら、見た事がないからだった。
兄を見て分かる通り、国王も下半身が非常に緩い。
そのせいか他所でも子供をこさえているのだ。

王妃以外にいる子供は認められていないので王座の権利すらない。

しかしそれも兄であるセイロスが死ねば話は別である。

急いで探し出すだろう。
今、市勢の中から探しているところでもあった。
それも、ちゃんとした人材を…だった。
兄のような女にしか興味がないような奴はまっぴらだった。

「そういえば勇者様も、聖女様以外に奴隷の女性を買ったとか…男性というのは
 なぜそのようなふしだらな者なのでしょう」

ため息をつくと、資料に目を通した。
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