第二王子に転生したら、当て馬キャラだった。

覚醒編

19話 試作検証第二弾

あまりの大きな爆発にアスラも、ジェイムスも驚
きを隠せなかった。

そろそろ薬が効いてくる頃だろうと思っていたの
に、二人は全くそんな素振りを見せない。

そんな矢先の大爆発。

これには驚かないわけには行かない。

ルイスという青年が作った自作だと言っていた。
これは金になる。

まだまだ手元にある試験管が気になって仕方がな
かった。
いっそ奪ってしまうか？

いや、奪っても、使い方が分からなければ意味が
ない。

じっと眺めていると、魔石を取り出そうと安全
地帯から出ようとした時、大きな音を聞きつけ
た仲間が飛んで来たのだった。

「魔石は諦めるか…」

「待って、これも試させて」

「今度はなんだ？また爆発するのか？」

「違うよ、今度は煙が出るだけだよ。だからね、
　兄さんお願いがあるの」

風を起こしてほしいと言うものだった。
仲間の死をみてこっちに威嚇してくるの見ながら
薬品を合わせる。

すると、一気に白い煙が出てくる。
そこを風魔法で方向をつける。

ワイバーンを包むと、ドズンッと、何かが倒れる
音がしたのだった。

煙が消えて後に残ったのは横たわったままの魔物
の姿だった。

「これは……どう言う事だ？」

「だから煙が出るだけって言ったじゃん。アレは
　ね、催眠効果があるんだ。そう食事に混ぜられ
　た薬の上位版だよ」

そう言って後ろにいる男の方を振り向いたのだっ
た。

「おい、それはどう言う意味だ？さっきの食事に
　何か混ぜたのか？」

「おいおい、ちょっと待てって。オタクらも俺も
　一緒に食べてただろ？何もなってねーじゃん」

「それは解毒したからだろ？やっぱり胡散臭いや
　つだと思ったぜ」

ジェイムスは剣を構えると、男に向けた。

「おいおい、待てって。君さ～ただの役立たずじゃ
　なかったってわけか……。俺の負けだ、降参だよ。
　命だけは助けてくれ。俺じゃあんたにゃ勝てねー
　からな」

「このままギルドに突き出してやるっ」

「まぁ、待てって。ここは金で解決しようぜ」

アスラは持っていた荷物から魔石の入った袋を取
り出すと投げてよこした。

「それで、今日は勘弁してくれって……こっちも
　生活がかかってるんだ」

「こんなもので許せるわけがないだろう？こうや
　って何人も手にかけてきたんじゃないのか？」

「それは……仕方ないだろ。俺だって……」

二人のやり取りをみて、ルイスが真ん中に入る。

「これは入りません。持ち帰って結構ですよ。た
　だし、二度と他人を騙さないでください。孤児
　院の子たちの食費になるんでしょ？僕らが受け
　取ったら今日の食費はどうするつもりですか？」

「おいっ、お前なんで知ってるんだっ！」

「そんな事どうでもいいでしょ？それよりもいいん
　ですか？このままだと兄さんが貴方を切ってしま
　いそうですよ？」

「わかった。約束するよ。もう、こんな事はしねー
　って！じゃ～またなっ！俺はアスラって言うんだ
　！覚えておけよ」

騒がしいのが去っていく。

「行かせていいのか？」

「うん、いいんだよ。ここで兄さんが傷ついたら
　僕は嫌だもん。早く魔石取って帰ろう」

ルイスも魔法を使って魔力量を増やさなければな
らない。
このままでは王都の地下迷宮にある聖剣を取りに
行く事すら危うくなってしまう。

ギルドに一旦戻ると、魔石を換金して部屋へと戻
ってきたのだった。

魔力を使ったせいで、ジェイムスは身体にのしか
かってくる倦怠感を感じていた。

湯浴みをすると、すぐにベッドに入った。

このまま王子の座をルイスに譲ったら……。

自分は冒険者としてやっていけるだろうか？
昼間に見たルイスの作った物をみて、驚きしか
なかった。

戦えないとばかり思っていたルイスだったが、
色々と考えていた事に、驚かされた。

もう守ってあげなければならない存在ではない
のだと思うと、少し寂しく感じたのだった。